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第2部 呪いの館 救出編
4話※
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※惨虐なシーンがあります。
ーーー
その後は、無意識だった。
持っていた愛剣で、黒の悪魔の首を刎ねた。
大量の血が噴き出して、悪魔が倒れる。側で頭がボールのように刎ねて転がった。
部屋の入口に人の気配を感じて見ると、愛しい婚約者とその弟が立っていた。
彼女が両手で頬を抑え何かを叫んだ。黒の悪魔に駆け寄り縋って泣いている。
声が聞こえなくて良かった。彼女の裏切りを、黒の悪魔への愛を聞かずにすんで良かった。
弟が慟哭する姉を立たせた。
何か必死に姉に語りかけ、部屋の外へ連れて行った。
しばらくして、弟だけ部屋に戻って来た。
そのまま彼に何か訴えかけてきた。何も聞こえないので無表情で、彼は婚約者の弟をただ見つめていた。
様子がおかしいと気づいたのか、弟は彼の顔をマジマジと見て驚愕で手で口を覆った。
そんな弟の姿が二重三重にブレて見えて来た。
自分が揺れているのか、相手が揺れているのかさえ、わからない。
目の前の少年は、泣きながら何か言っている。聞こえない。聞こえない。
そのまま身体を支えられて、壁とタンスの間に押し込まれた。
もう…オレは…助からない…だろう。だから言っておかなきゃ…。
うまく動かない口で呟く。
婚約者の弟であり、兄弟同然で一緒に育って来た彼に向けて…。
「…やっと……」
◇◇◇
意識が浮上した。
華は床の上で疼くまったまま意識を取り戻した。
震える手で両耳を抑える。
ちゃんと耳はあった。
「ある…」
自分の震える声が聞こえて、華は安堵した。大丈夫聞こえる。
『あれは過去だ。お前の身体に影響は無い』
自分の中から彼の声がした。
過去の追体験を終え、今彼は華と同化していた。
勇輝達が言っていた記憶等を共有してるのはこういう状態だったのかもしれない。
『次はアイツの部屋だ』
「わかってるけど、少し休ませて」
華は青年の部屋を出ると、食堂へ向かった。
心して挑んだが、やはり強烈な過去だった。心が疲弊している。今も彼の体験した辛い過去に涙が溢れそうなのを必死にとどめているのだ。
卓上BOXから何か甘い物が食べたいと取り出す。
出て来たのは、華の大好物のバナナクレープだった。甘いココアと相性抜群だ。しばし心を空にして、華はスイーツを堪能した。
その後、卓上BOXからノートとペンを出した。どうやらこのBOXは食事以外も準備できる万能君だったようだ。
華は今回情報収集した内容を書き記していく。
彼が見た婚約者の裏切り、嫉妬からの殺人、黒髪の彼や婚約者の弟が何を訴えていたのか?そもそも何故村人に囲まれていたのか?
その悲惨な体験は思い出すと涙が出そうだった。でも今彼は、自分と同化している。同情するのを嫌う、とわかっているので、あえて何も気にしていない風を装った。
ノートを書き上げ、テーブルに置いた。よし次の情報収集に向かおう。
前回1番お世話になった彼に会う為、華は食堂から彼の部屋へ向かった。
◇◇◇
コンコン
先程と違い、華はノックして部屋に入った。前回1番一緒にいる時間が長かった為、勝手に親しみを感じているせいだ。
中に入る。背もたれをこちらに向けたソファが見える。彼はあの背もたれの向こうにいる筈だ。前回は姿を見ていない。
「私、帰れなかったよ。だから今度こそちゃんと何が起こったのか調べたい。だから協力して欲しい」
言いながらソファへ近づいて、背もたれの後ろから覗いた。
彼はいた。横たわっていた。
ただ。
首から上が無かった。
「ーーーひっ」
思わず悲鳴があげる。
首のない身体が素早く手を伸ばし、華の腕を掴む。そのまま華は、すごい力でソファの内側に引き込まれたー。
ーーー
その後は、無意識だった。
持っていた愛剣で、黒の悪魔の首を刎ねた。
大量の血が噴き出して、悪魔が倒れる。側で頭がボールのように刎ねて転がった。
部屋の入口に人の気配を感じて見ると、愛しい婚約者とその弟が立っていた。
彼女が両手で頬を抑え何かを叫んだ。黒の悪魔に駆け寄り縋って泣いている。
声が聞こえなくて良かった。彼女の裏切りを、黒の悪魔への愛を聞かずにすんで良かった。
弟が慟哭する姉を立たせた。
何か必死に姉に語りかけ、部屋の外へ連れて行った。
しばらくして、弟だけ部屋に戻って来た。
そのまま彼に何か訴えかけてきた。何も聞こえないので無表情で、彼は婚約者の弟をただ見つめていた。
様子がおかしいと気づいたのか、弟は彼の顔をマジマジと見て驚愕で手で口を覆った。
そんな弟の姿が二重三重にブレて見えて来た。
自分が揺れているのか、相手が揺れているのかさえ、わからない。
目の前の少年は、泣きながら何か言っている。聞こえない。聞こえない。
そのまま身体を支えられて、壁とタンスの間に押し込まれた。
もう…オレは…助からない…だろう。だから言っておかなきゃ…。
うまく動かない口で呟く。
婚約者の弟であり、兄弟同然で一緒に育って来た彼に向けて…。
「…やっと……」
◇◇◇
意識が浮上した。
華は床の上で疼くまったまま意識を取り戻した。
震える手で両耳を抑える。
ちゃんと耳はあった。
「ある…」
自分の震える声が聞こえて、華は安堵した。大丈夫聞こえる。
『あれは過去だ。お前の身体に影響は無い』
自分の中から彼の声がした。
過去の追体験を終え、今彼は華と同化していた。
勇輝達が言っていた記憶等を共有してるのはこういう状態だったのかもしれない。
『次はアイツの部屋だ』
「わかってるけど、少し休ませて」
華は青年の部屋を出ると、食堂へ向かった。
心して挑んだが、やはり強烈な過去だった。心が疲弊している。今も彼の体験した辛い過去に涙が溢れそうなのを必死にとどめているのだ。
卓上BOXから何か甘い物が食べたいと取り出す。
出て来たのは、華の大好物のバナナクレープだった。甘いココアと相性抜群だ。しばし心を空にして、華はスイーツを堪能した。
その後、卓上BOXからノートとペンを出した。どうやらこのBOXは食事以外も準備できる万能君だったようだ。
華は今回情報収集した内容を書き記していく。
彼が見た婚約者の裏切り、嫉妬からの殺人、黒髪の彼や婚約者の弟が何を訴えていたのか?そもそも何故村人に囲まれていたのか?
その悲惨な体験は思い出すと涙が出そうだった。でも今彼は、自分と同化している。同情するのを嫌う、とわかっているので、あえて何も気にしていない風を装った。
ノートを書き上げ、テーブルに置いた。よし次の情報収集に向かおう。
前回1番お世話になった彼に会う為、華は食堂から彼の部屋へ向かった。
◇◇◇
コンコン
先程と違い、華はノックして部屋に入った。前回1番一緒にいる時間が長かった為、勝手に親しみを感じているせいだ。
中に入る。背もたれをこちらに向けたソファが見える。彼はあの背もたれの向こうにいる筈だ。前回は姿を見ていない。
「私、帰れなかったよ。だから今度こそちゃんと何が起こったのか調べたい。だから協力して欲しい」
言いながらソファへ近づいて、背もたれの後ろから覗いた。
彼はいた。横たわっていた。
ただ。
首から上が無かった。
「ーーーひっ」
思わず悲鳴があげる。
首のない身体が素早く手を伸ばし、華の腕を掴む。そのまま華は、すごい力でソファの内側に引き込まれたー。
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