32 / 87
第2部 呪いの館 救出編
2話
しおりを挟む
4日目。
奇跡は起きない。
勇輝と怜が助けに来るかもしれない。そんな甘い考えも消えた。
こんな所にまた来るわけがない。そもそも、また来れるかもわからない。
涙も枯れ果てた。
今日も、華は食堂でココアを飲む。
今日はココアのお供に、学校で大人気の卵サンドを加えた。争奪戦で普段なかなか味わえないレア物だ。
「ラーメンの次はサンドイッチにしたって言ったら…桃ちゃん何て言うかな?」
卵サンドを食べながら、前に桃の前でラーメンを食べた時のやりとりを思い出す。
扉が閉まる前に見えた桃の倒れる姿。彼女は大丈夫だっただろうか?
怜に入っていた霊に諭され、自分の桃への態度を省みてから、結局、謝る機会を作れなかった。
「桃ちゃん、ごめんね。無事でいて」
倒れた友人を思い謝罪を口にする。彼女はもう…自分を友と思ってないかもしれないけれど。
「帰らなきゃ」
桃にも顔を合わせて謝りたい。
「勇ちゃんにも返事しなきゃいけないし」
正直、まだ心は決まってない。でもちゃんと向き合うと決めたから。
「怜ちゃんもきっとすごく心配してるはず」
本人の口から告白はされていない。でも怜の気持ちにも、ちゃんと向き合うと決めた。
だから、もう泣かない。
次に泣くのは、みんなに会えた時の嬉し涙だ。
華は覚悟を決めた。
◇◇◇
卓上BOXから、どんぐりを1つ取り出してテーブルの端に置いた。
テーブルに4個のどんぐりが並ぶ。
昨日、現実を受け止めた後。華はどんぐりを3個並べた。そして今日また1つ並べた。
ココに来て4日目という印。
あと何日この場所で過ごすかわからないが、1日1つ加えていくつもりだ。
更に食卓BOXからヘアゴムを取り出して、華は髪を上部分でお団子ヘアにした。
さて、気持ちは決まった。
後はやる事をやろう。
華は食堂から、祭壇へ向かった。
◇◇◇
祭壇の前に着くと目に入る物があった。
台の上。腕輪の横に並ぶ、腕時計とビーズの指輪、ゲームコインだった。
「これ…」
泣かないと決めたのに、込み上げてくるものがある。
必死で溢れそうになる涙を落ち着かせてから、華はそれらを手に取った。
怜の時計は手首に。自分の指輪は元あった指に。そして勇輝のゲームコインはポケットに。
空間が元に戻った時に、一緒に消えてしまった思っていた。
怜と勇輝が応援してくれている。そんな気がした。
「よしっ!」
パンッと頬を軽く叩いてから、華は腕輪に視線を向けた。
途端、脳裏に言葉が響いてきた。
『闘う者よ、護りし者よ、求める者を守り答えを示せ。闘う者よ、護りし者よ、求める者を守り答えを示せー』
「っ…そんな何度も言わなくても…聞こえてる…!」
延々と頭の中で繰り返される言葉に、華はたまらず腕輪を3つまとめて掴んだ。
本来なら3人の人間が必要なのだろう。だが今ここには華しかいない。
「絶対…帰るんだから…!」
掴んだ腕輪を、腕時計をつけた側と反対側に一気にまとめてつけた。
腕輪から眩しいが放たれた。
思わず目を閉じる。
ここまで、前回と同じだ。
徐々に光が収まり、ゆっくりと目を開けた時、やはりあの光景が広がっていた。
小さな男の子2人と女の子が1人。部屋の中をかけっこをして遊んでいた。恐らく、あの3人の幽霊の子供時代の想い出。
音は聞こえないのに、キャッ、キャッと楽しそうな声が聞こえてきそうだ。
幸せな家族のワンシーン。
優しい想い出。
あの時は、ただ恐怖で怯えただけだったが、今の華には気になる事があった。
ーこれは誰から見た想い出だったのだろうか。
華は、後ろの祭壇。その上の女神像を見上げた。
「これは…あなたの想い出なの?」
答えはない。
そのうち、1人1人がバラバラに行動しだす。
前回と同じように祭壇を背にして、男の子の1人は右側の壁へ。残りの男の子と女の子は左側の壁へ向かって同じように消えた。
子供たちが消えた壁に前回同様ドアが現れた。
◇◇◇
前回は恨みを晴らす為、村人を皆殺しにした。恐らくそれが此処を出るのに1番早い。でも代償があった。
ー恨みには恨みを。
最後にあの女神像が言ったセリフ。
正確な事はわからないが、恐らく華は恨みを買ったのだ。だから呪いを受けて此処に閉じ込められた。
恨みを買った相手。思いつくのは1人しかいない。
でも今の華には彼女を恨む気持ちは不思議な程、無かった。
多分最初にそうなるキッカケを作ったのは自分だ。自分の何がそんなに彼女を追い込んだのか。それを純粋に知りたいと思った。
今度は誰も不幸にならないように解決したい。それには、もう一つの選択肢である『彼らが殺された日に何があったのか』を調べるしかない。
恐らくこの大規模な呪いをかけた人物も本当に望んでいるのはそれだ。
ポケットに手を突っ込んでメダルを触る。勇ちゃんどうか私を守って。ギュッと握り願掛けをして、華は最初の扉に向かった。
奇跡は起きない。
勇輝と怜が助けに来るかもしれない。そんな甘い考えも消えた。
こんな所にまた来るわけがない。そもそも、また来れるかもわからない。
涙も枯れ果てた。
今日も、華は食堂でココアを飲む。
今日はココアのお供に、学校で大人気の卵サンドを加えた。争奪戦で普段なかなか味わえないレア物だ。
「ラーメンの次はサンドイッチにしたって言ったら…桃ちゃん何て言うかな?」
卵サンドを食べながら、前に桃の前でラーメンを食べた時のやりとりを思い出す。
扉が閉まる前に見えた桃の倒れる姿。彼女は大丈夫だっただろうか?
怜に入っていた霊に諭され、自分の桃への態度を省みてから、結局、謝る機会を作れなかった。
「桃ちゃん、ごめんね。無事でいて」
倒れた友人を思い謝罪を口にする。彼女はもう…自分を友と思ってないかもしれないけれど。
「帰らなきゃ」
桃にも顔を合わせて謝りたい。
「勇ちゃんにも返事しなきゃいけないし」
正直、まだ心は決まってない。でもちゃんと向き合うと決めたから。
「怜ちゃんもきっとすごく心配してるはず」
本人の口から告白はされていない。でも怜の気持ちにも、ちゃんと向き合うと決めた。
だから、もう泣かない。
次に泣くのは、みんなに会えた時の嬉し涙だ。
華は覚悟を決めた。
◇◇◇
卓上BOXから、どんぐりを1つ取り出してテーブルの端に置いた。
テーブルに4個のどんぐりが並ぶ。
昨日、現実を受け止めた後。華はどんぐりを3個並べた。そして今日また1つ並べた。
ココに来て4日目という印。
あと何日この場所で過ごすかわからないが、1日1つ加えていくつもりだ。
更に食卓BOXからヘアゴムを取り出して、華は髪を上部分でお団子ヘアにした。
さて、気持ちは決まった。
後はやる事をやろう。
華は食堂から、祭壇へ向かった。
◇◇◇
祭壇の前に着くと目に入る物があった。
台の上。腕輪の横に並ぶ、腕時計とビーズの指輪、ゲームコインだった。
「これ…」
泣かないと決めたのに、込み上げてくるものがある。
必死で溢れそうになる涙を落ち着かせてから、華はそれらを手に取った。
怜の時計は手首に。自分の指輪は元あった指に。そして勇輝のゲームコインはポケットに。
空間が元に戻った時に、一緒に消えてしまった思っていた。
怜と勇輝が応援してくれている。そんな気がした。
「よしっ!」
パンッと頬を軽く叩いてから、華は腕輪に視線を向けた。
途端、脳裏に言葉が響いてきた。
『闘う者よ、護りし者よ、求める者を守り答えを示せ。闘う者よ、護りし者よ、求める者を守り答えを示せー』
「っ…そんな何度も言わなくても…聞こえてる…!」
延々と頭の中で繰り返される言葉に、華はたまらず腕輪を3つまとめて掴んだ。
本来なら3人の人間が必要なのだろう。だが今ここには華しかいない。
「絶対…帰るんだから…!」
掴んだ腕輪を、腕時計をつけた側と反対側に一気にまとめてつけた。
腕輪から眩しいが放たれた。
思わず目を閉じる。
ここまで、前回と同じだ。
徐々に光が収まり、ゆっくりと目を開けた時、やはりあの光景が広がっていた。
小さな男の子2人と女の子が1人。部屋の中をかけっこをして遊んでいた。恐らく、あの3人の幽霊の子供時代の想い出。
音は聞こえないのに、キャッ、キャッと楽しそうな声が聞こえてきそうだ。
幸せな家族のワンシーン。
優しい想い出。
あの時は、ただ恐怖で怯えただけだったが、今の華には気になる事があった。
ーこれは誰から見た想い出だったのだろうか。
華は、後ろの祭壇。その上の女神像を見上げた。
「これは…あなたの想い出なの?」
答えはない。
そのうち、1人1人がバラバラに行動しだす。
前回と同じように祭壇を背にして、男の子の1人は右側の壁へ。残りの男の子と女の子は左側の壁へ向かって同じように消えた。
子供たちが消えた壁に前回同様ドアが現れた。
◇◇◇
前回は恨みを晴らす為、村人を皆殺しにした。恐らくそれが此処を出るのに1番早い。でも代償があった。
ー恨みには恨みを。
最後にあの女神像が言ったセリフ。
正確な事はわからないが、恐らく華は恨みを買ったのだ。だから呪いを受けて此処に閉じ込められた。
恨みを買った相手。思いつくのは1人しかいない。
でも今の華には彼女を恨む気持ちは不思議な程、無かった。
多分最初にそうなるキッカケを作ったのは自分だ。自分の何がそんなに彼女を追い込んだのか。それを純粋に知りたいと思った。
今度は誰も不幸にならないように解決したい。それには、もう一つの選択肢である『彼らが殺された日に何があったのか』を調べるしかない。
恐らくこの大規模な呪いをかけた人物も本当に望んでいるのはそれだ。
ポケットに手を突っ込んでメダルを触る。勇ちゃんどうか私を守って。ギュッと握り願掛けをして、華は最初の扉に向かった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
心霊捜査官の事件簿 依頼者と怪異たちの狂騒曲
幽刻ネオン
ホラー
心理心霊課、通称【サイキック・ファンタズマ】。
様々な心霊絡みの事件や出来事を解決してくれる特殊公務員。
主人公、黄昏リリカは、今日も依頼者の【怪談・怪異譚】を代償に捜査に明け暮れていた。
サポートしてくれる、ヴァンパイアロードの男、リベリオン・ファントム。
彼女のライバルでビジネス仲間である【影の心霊捜査官】と呼ばれる青年、白夜亨(ビャクヤ・リョウ)。
現在は、三人で仕事を引き受けている。
果たして依頼者たちの問題を無事に解決することができるのか?
「聞かせてほしいの、あなたの【怪談】を」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
トゴウ様
真霜ナオ
ホラー
MyTube(マイチューブ)配信者として伸び悩んでいたユージは、配信仲間と共に都市伝説を試すこととなる。
「トゴウ様」と呼ばれるそれは、とある条件をクリアすれば、どんな願いも叶えてくれるというのだ。
「動画をバズらせたい」という願いを叶えるため、配信仲間と共に廃校を訪れた。
霊的なものは信じないユージだが、そこで仲間の一人が不審死を遂げてしまう。
トゴウ様の呪いを恐れて儀式を中断しようとするも、ルールを破れば全員が呪い殺されてしまうと知る。
誰も予想していなかった、逃れられない恐怖の始まりだった。
「第5回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!
他サイト様にも投稿しています。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる