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第1部 呪いの館 復讐編
24話
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神社から館へ帰る途中、空を覆っていた雲から小降りの雨が降り出した。
雲がどんどん黒く厚くなってくる。自然と帰りの足も早くなった。
帰り道、みんな無言だった。
桃は勇輝と怜に怯えているようだし、勇輝は無表情で何を考えているかわからない。怜は少し疲労しているようだった。
館の中に戻る。
途中で少し雨に降られたせいか、身体が冷えていた。桃が寒いと言ったので、華は桃と2人で食堂に寄る事した。
勇輝と怜は、帰る時に呼べと言って、そのまま部屋に戻って行った。
食堂で卓上のBOXから、マグカップ入りのホットココアを出す。それを桃に手渡した。
あったかい…桃は呟いて一口飲む。ホッとしたのか目に涙が滲んでいた。
外から雷音と雨の音が聞こえてくる。今夜、ここは嵐になるかもしれない。そう考えながら華もホットココアに口をつけた。
「…華ちゃんはわたしの事、憎くないの?」
疲労と悲壮感を滲ませ桃が呟いた。
あの神社での出来事から、桃はとても参っていた。これまで彼女を覆ってた見栄やプライドがごっそり剥げ落ちたようだ。
「…なんで?」
「だって…ひどい事を沢山言ったし、わざと勇くんにベッタリしてたのに…。全然怒らないでしょ?」
今の桃なら、昔のように仲良くできそうだ。だが…今回の出来事を無かった事にして、また一緒に過ごす…というのは難しいだろう。
本当はわだかまりをどうにかしたいと思っているが、華にはそのキッカケをどうすれば良いかわからなかった。
「辛かったけど…勇ちゃんと怜ちゃんが居てくれたから」
「…そう」
ぼんやりした桃の瞳から一筋涙が零れた。小声で何か桃が呟いていたが、華には聞こえなかった。
その後は特に会話する事もなく、ココアを飲み終える。
飲食した物は片付けなくても勝手に消えるらしい。便利な物だ。
華と桃は連れ立って、他の2人の部屋に向かった。ココアを飲んだ後から、お互い何も話さない。
まず勇輝の部屋に向かった。
コンコン
ノックしてすぐ勇輝が出て来た。
目は碧いままだ。華を無視して、桃の側に行くと、大丈夫か?と声をかけた。
ぼんやりしていた桃が、目線を上げて、泣きそうな表情で頷いた。
そのまま桃の肩を抱いて歩き出した。先程より落ち着いたせいか、桃は拒否する事なく、されるがままだ。
華は2人の邪魔をしない程度に離れてついていく。
怜の部屋に行くかと思いきや、2人は祭壇へ向かった。祭壇の前に辿り着くと、勇輝が華を睨む。
「…何でオマエがついてくる」
「あ、怜ちゃんの部屋に行くんじゃ…」
「オマエが呼んでこい。婚約者との最後の時間を邪魔するな!」
「す、すみませんでした!」
怒鳴られて、慌てて華は2人から離れて怜の部屋に向かった。
少し離れた所で2人を振り返ると、桃が泣きながら何かを話していた。内容までは聞こえない。
勇輝が何か話すと、桃が頷いて、その瞳が碧く変化した。
恨みを晴らすと、魂は元に戻る。
それは次の犠牲者が来るまで、彼らも眠りにつくという事。殺した村人も、村も、全てー。
あの婚約者同士の2人も。
暫くはソッとしておこう。
そう決めて今度こそ華は怜の部屋へ足を向けた。
雲がどんどん黒く厚くなってくる。自然と帰りの足も早くなった。
帰り道、みんな無言だった。
桃は勇輝と怜に怯えているようだし、勇輝は無表情で何を考えているかわからない。怜は少し疲労しているようだった。
館の中に戻る。
途中で少し雨に降られたせいか、身体が冷えていた。桃が寒いと言ったので、華は桃と2人で食堂に寄る事した。
勇輝と怜は、帰る時に呼べと言って、そのまま部屋に戻って行った。
食堂で卓上のBOXから、マグカップ入りのホットココアを出す。それを桃に手渡した。
あったかい…桃は呟いて一口飲む。ホッとしたのか目に涙が滲んでいた。
外から雷音と雨の音が聞こえてくる。今夜、ここは嵐になるかもしれない。そう考えながら華もホットココアに口をつけた。
「…華ちゃんはわたしの事、憎くないの?」
疲労と悲壮感を滲ませ桃が呟いた。
あの神社での出来事から、桃はとても参っていた。これまで彼女を覆ってた見栄やプライドがごっそり剥げ落ちたようだ。
「…なんで?」
「だって…ひどい事を沢山言ったし、わざと勇くんにベッタリしてたのに…。全然怒らないでしょ?」
今の桃なら、昔のように仲良くできそうだ。だが…今回の出来事を無かった事にして、また一緒に過ごす…というのは難しいだろう。
本当はわだかまりをどうにかしたいと思っているが、華にはそのキッカケをどうすれば良いかわからなかった。
「辛かったけど…勇ちゃんと怜ちゃんが居てくれたから」
「…そう」
ぼんやりした桃の瞳から一筋涙が零れた。小声で何か桃が呟いていたが、華には聞こえなかった。
その後は特に会話する事もなく、ココアを飲み終える。
飲食した物は片付けなくても勝手に消えるらしい。便利な物だ。
華と桃は連れ立って、他の2人の部屋に向かった。ココアを飲んだ後から、お互い何も話さない。
まず勇輝の部屋に向かった。
コンコン
ノックしてすぐ勇輝が出て来た。
目は碧いままだ。華を無視して、桃の側に行くと、大丈夫か?と声をかけた。
ぼんやりしていた桃が、目線を上げて、泣きそうな表情で頷いた。
そのまま桃の肩を抱いて歩き出した。先程より落ち着いたせいか、桃は拒否する事なく、されるがままだ。
華は2人の邪魔をしない程度に離れてついていく。
怜の部屋に行くかと思いきや、2人は祭壇へ向かった。祭壇の前に辿り着くと、勇輝が華を睨む。
「…何でオマエがついてくる」
「あ、怜ちゃんの部屋に行くんじゃ…」
「オマエが呼んでこい。婚約者との最後の時間を邪魔するな!」
「す、すみませんでした!」
怒鳴られて、慌てて華は2人から離れて怜の部屋に向かった。
少し離れた所で2人を振り返ると、桃が泣きながら何かを話していた。内容までは聞こえない。
勇輝が何か話すと、桃が頷いて、その瞳が碧く変化した。
恨みを晴らすと、魂は元に戻る。
それは次の犠牲者が来るまで、彼らも眠りにつくという事。殺した村人も、村も、全てー。
あの婚約者同士の2人も。
暫くはソッとしておこう。
そう決めて今度こそ華は怜の部屋へ足を向けた。
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