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第1部 呪いの館 復讐編

19話

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「つまり同じ国の人間に殺させるんだ」

 ゾクリとした。
 この国の人間への深い恨みを感じた。

 呪いをかけた者の目的は、恐らく1番は原因を調べさせる事。
 もしわからないなら、同じ国の人間に村人を殺させる。
 村人は繰り返す度に殺され、殺した者は途中で化け物が人間だと気づき絶望する。勇輝のように。

「もう、今から調べる事は出来ないの…?」
「無理だな。ほとんどの村人が死んでる今、話を聞くことが出来ない」
「なぁ、じゃあ何でそもそも闘う者とか求める者とか役割があるんだ?」

 勇輝の何気ない言葉に2人はハッとする。
 そういえば昼間は勇輝が無双すぎて、他の2人の役目を忘れていた。

「確かに…」
「闘う者は、あれだろ?とりあえず婚約者に害を及ぼそとするヤツをやっつける」
「護る者は、害を及ぼそうとする者から守る…」
「え?じゃあ求める者は?桃ちゃんは、引きこもってるから、よく分からないって言ってたよ」
「…しまった。そう言う事か」

 怜が顔を青白くさせて口を手で覆った。

「なんだ、おい、どうした」

 怜の様子に勇輝もビビる。

「多分…いや、恐らく当たっていると思う…。原因を探すキーマンは彼女だったんだ」
「あの…桃ちゃんの中の?」
「彼女、すごく怯えていただろう。そして1番最後に殺された。だから何かを知っている可能性が高い」
「…確かに」
「あと…呪いをかけたのが親なら自分の大事な娘が無惨に殺されたんだ。恨みを晴らすか原因を調べるか、その選択を彼女に委ねたのかもしれない…」

 怜の言葉にシーンとなった。

 ではこの呪いを根本から解くには。

 あの怯え、恨みを吐く彼女から事情を聞いて、さらに恨みを晴らすより原因を探る事を選択させないといけない。

「いや、何その無理ゲー」

 はぁと勇輝が額を抑える。

 そもそも、目覚めてすぐ華を別人と勘違いして殺そとうとしたのだ。そんなヤツが、まともに話をするとは思えない。

「ましてや桃の中だからな。素直に情報を渡してくれるとは思えない。だから僕等は恨みを晴らして帰るしかないと思う」

 元々、怜は桃のあざとさを見抜いていた。

 それでも悪いヤツじゃないとわかっていたから、ここまで友人でいられた。だが…ココに来て、怜の桃への評価はダダ下がりだった。

 勇輝や怜と違って身体を乗っ取られていないくせに、事態を改善する努力をするどころか、進んで悪化させている。

 しかも華への態度が最悪だ。勇輝への嫉妬なのか、言動が普通じゃない。

「…桃ちゃん、ココに来てから変わったよね…」

 悲しそうに俯く華に2人は即座に否定した。

「あれは元からの性格だろ」
「そうだ。元から俺にしつこかったぞ。遠慮しなくなっただけだろ」

 容赦ない。

「…まさか桃ちゃんが勇ちゃんを好きだなんて…気づかなかったけど。それでも私は4人で過ごすの…楽しかったよ」

 勇輝と桃が盛り上がって、華は側で話を聞いて笑う。最後に怜がツッコミを入れる。

 それがいつものパターンだ。
 それが華やみんなの日常だった。思い出してポロリと涙が零れた。

「…華」

 勇輝と怜も辛そうに顔を歪める。

 確かに桃は恋愛ごとが絡まなければ、一緒にいて楽しい奴だった。
 普通に気遣いもできるし、華ともすごく仲が良かった。

 だが…いつからか急に空気を読まくなり、勇輝の元に押しかけて来るようになった。それでも、少なくとも今回みたいに華を傷つける事はなかったのに。

 勇輝と怜も、もしかしたら…とは思っている。ココに来て、あの女が取り憑いてからおかしくなったのかもしれない。ただそれでもー。

「華、悪い。俺はもうアイツ…ダメだ。今回の事も、アイツだけが悪いなんて本当は思ってない…。でも顔を見たり、声を聞いたりすると、吐き気がするんだ…」

 勇輝が上半身を丸めながら、顔を片手で覆う。必死で湧き上がる何かを、抑えているようだった。

「とりあえず、この話は終わりだ」

 怜が場の雰囲気を変えるように、話を打ち切って立ち上がる。

 勇輝も、ふぅ、と肩の力を抜いた。張り詰めていた緊張がほぐれた様だ。

「そうだな。俺も明日に備えて少し休むよ」
「そうしろ。じゃあ部屋に帰るか華」
「うん」
「うおーい!ちょっと待て!何で華が当たり前のように怜の部屋に行くんだよ!」

 勇輝が盛大にツッコんだ。至近距離で叫ばれて怜は耳を押さえる。

「うるさい、華を野獣の巣に置いておけるか」
「お前も年頃の男だろっ」
「お前と一緒にするな。それに、朝になってアイツが目を覚ましてみろ。近くにいたら華は無事じゃすまないぞ」
「うっ」

 怜の指摘は最もだ。アイツは平気で華を殺すだろう。わかってはいるけど…。

「じゃあ俺も怜の部屋に行く!」
「は?何。僕そんなに信用ない?」
「ちがう!じゃなくて!その…」

 勇輝が恥ずかしそうにモジモジする。顔を赤らめて上目遣いで怜を見上げる。

「…1人で寝るの怖いから、俺も一緒に寝ていい?」

 ぞわぞわ…。ガタイのでかい勇輝の可愛こぶりっ子ぶりに、怜は全身鳥肌がたった。
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