【完結】呪いの館と名無しの霊たち(仮)

秋空花林

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第1部 呪いの館 復讐編

2話

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 華と勇輝と怜はいわゆる幼馴染だ。

 おっとりした華を、素直で単純な勇輝がリードし、大人しく冷静な怜がフォローする。

 保育園から高校まで続いてきた関係が変わったのは、高校に入ってからだ。

 身内みたいな雰囲気のこの3人に物おじしない性格で近づいてきた女の子がいた。桃だ。

 元々、華と同じクラスで隣同士になった事がきっかけだった。

 華は清楚な美人で大人しい性格の為、いわゆる「とっつきにくいタイプ」に見られやすかった。それまで、なかなか仲良い女友達が出来ない事が華にとっての悩みだった。

 そこに勇輝と似た明るい性格で、どんどん話しかけてくれる桃に華が心を開くのはそう時間はかからなかった。

 華と一緒にいる内に、自然と勇輝や怜とも交流するようになり、今では4人で行動する事も多い。

 実際は…。
 
 桃は勇輝に片思い中でアピールもすごいし。

 勇輝は華に長年片思いを拗らせているから、桃のアピールに困っているし。

 怜は、やっとできた女友達に華が喜んでいるから、とりあえず自分と華に害がない間は様子見をしている状態だ。

 言葉にするとなかなかのカオスだが、4人でワイワイ騒ぐのはそう悪くない。きっと恋愛とかそういうのを取っ払えば、結構気が合う仲間なのだろう。

 その4人も、高校卒業後の進路はバラバラだった。華と勇輝は進学組だが学校は違うし、桃は就職組。怜に至っては親が海外にいる為、海外への進学が決まっている。

 だから「卒業前の想い出作りしよう!」と、屋上で桃が提案した旅行計画に反対する者はいなかった。

 勇輝がノリノリで賛同し、怜が計画を立て、こうやって旅行に来れた。

 よし、私も計画するぞー!と意気込んでる内に話がまとまってしまったので、悲しい事に華の出番はなかった…。それだけが心残りだ。

 予算的にも日数的にも無理のない範囲で、なおかつ親達の了承がとれる場所という事で。桃が昔住んでいた田舎の祖父母の家に数日お世話になる事になった。

 山と川と海。夏休みに遊び行くにはピッタリの場所だった。

 山のハイキングも、川遊びも、海水浴も最高だった。毎日クタクタになるまで遊んだ。こんなに夏休みを満喫したのは小学生以来かもしれない。

 なのに。
 なぜ楽しい想い出だけで終わらないのか。

「それは私が任せっきりにしていたから…。夜出れない位にパンパンに予定を詰めるべきでした…」

 半泣き状態で華は夜道を歩いていた。夏の夜も蒸し暑い。4人ともそれぞれショートパンツやTシャツといったラフや格好で夜道を歩いている。

 懐中電灯を持ってはいるが、雲ひとつない明るい月夜なので、そう暗くはない。

「何を言ってるかわからないけど。華は家で待っててもいいのに」

 側を歩く怜が呆れたように華を見てた。
 
 アイスを食べている時に桃が発した肝試しスポットの話に。勇輝が案の定、興味を持ち。2人だけでは心配という理由で怜が一緒に行く事に決めた。

 実際には勇輝は行きたいなんて言ってないし、行く流れに持っていったのは桃だった。だが華は、横で何故か爆笑している怜と、溶けかけたアイスに気をとられ、2人のやりとりは見ていない。なので言い出しっぺが勇輝だと思っていた。

 もちろん華は家でお留守番…いつもなら。ただ、連日一緒に楽しんだ仲間に置いていかれるのも淋しい。

「みんながいないのに1人で家にいるのも淋しいし…」

 チラッと前を歩く2人に視線を向ける。勇輝と桃だ。先を歩きながら身振り手振り、盛り上がって先を歩いている。肝試しというより、これから運動会やスポーツ大会でも始めそうなノリで楽しそうだ。

「はぁー。わかった。どうしても怖くて無理だったら言うんだよ?」
「怜ちゃん!ありがとう」

 ため息を吐きながらも華の気持ちを汲んでくれる怜に、華は気持ちがあったかくなった。

「ついたよ~」

 桃の声がして、目線を前に上げると。真っ暗な闇の中に、不気味な洋館らしき建物が浮かび上がっていた。

 この時。
 不気味に見える洋館に嫌な予感がした。

 その予感を信じて、すぐに帰ろうと言わなかった事を、この後に華は激しく後悔する事になる…。
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