【完結】呪いの館と名無しの霊たち(仮)

秋空花林

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第3部 呪いの館 それぞれの未来へ

怜の場合 1

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 怜は幼少期、よく女の子に間違われていた。

「おおきくなったらけっこんして」

 一緒に遊んでたリーダー格の大きな男の子にいきなり告白された。今まで一緒に遊んでたのに、女の子と思われた!
 
「ぼくおとこだよ」

 相手の子はものすごいショックを受けた顔をして、その後に真っ赤になった。

「なんだよおまえ、おんなみてー。おんなおとこ!おれをだましたな!」

 ガキ大将のその子が発したあだ名は瞬く間に、子供達の間で広まった。

 からかわれて、しょっちゅう泣いていた。

 別に騙したつもりはないし、勝手に勘違いしたのはその子なのに!

 恥ずかしくて悔しくて、園庭の後ろで隠れて泣いていたら、女の子に声をかけられた。

「どうしたの?いたい?」

 怜と同じ様にサラサラの髪を肩まで伸ばした女の子だった。

 怜の側にしゃがんで、ハンカチで涙を拭いてくれた。

「ままみたい」
「うん、ままがぬれたらふきなさいって」

 ニコッと女の子が笑う。

 多分ぬれたらの意味が違う、と思ったが、あまりにも女の子が可愛いく笑うので。怜はありがとうとお礼を述べた。

 そして自分もハンカチやタオルを持ち歩こうと心に決めた。

「なんでないてたの?」
「みんながおんなおとこていうんだ。ぼくおとこなのに」

 しくしく、また泣けてきた。怜だって戦隊ヒーローに憧れるくらいに男の子だった。

「んー?んー?おんなおとこてなに?」
「おんなみたいおとこってこと」
「なんだ!おんなみたいなおとこだったら、おとこだよ!よかったね。だからなかないで」
「…そうだね」

 何か違うと思ったが、女男でも、ようは男。そう言われたら確かにそうだ。なら男みたいな男になればいい。

 そう思ったら、悲しかった気持ちがスッと落ち着いた。

 それが怜と華の出会い。

 ちょっと抜けてて、優しい女の子を怜はすぐ好きになった。この子を守れるくらい、男みたいな男になろう!そう決めた。

 でも現実はなかなかうまくいかず。

「おんなおとこー。お前はピンクだー」

 戦隊ヒーローごっこに無理やり参加させられ女役をさせられる。

 おとこなのにいやだ!と泣きながら抵抗したら、華がすっ飛んできた。

「れーちゃん、いじめたら、めっ!」
「なんだよ!ゆうがあだなつけたんだぞ、おれたちいじめてないし!」

 いきなり相手の男の子が、華を突き飛ばした。軽く膝を擦りむく。

「おまえたちやめろ!」

 その時、怜と華を守る様にガキ大将の男の子が立ちはだかった。いじめて来た男の子達を怒って次々と謝らせた。

 自分に変なあだなをつけた張本人だが、その姿は戦隊ヒーローみたいにカッコよかった。

 その日から玲にとって勇輝は憧れの存在になった。

 守られてばかりなのは、カッコ悪い。いつか華の事守れるくらい強くなるから。

 華とそう約束して、怜はその日から泣かなくなった。



◇◇◇



 その後も、怜の男らしい男になる計画は頑張っては頓挫する。

 大きくなれると聞いて飲んだ牛乳は、ある日傷んだ物を飲んで寝込み、トラウマレベルで苦手になった。

 それでもいちごミルクやカフェオレで頑張って飲み続ける事にした。

 勉強やスポーツを頑張ってみた。勇輝みたいに明るく振る舞ってみた。

 一見順調そうに見えた彼の人生は、中学に上がってすぐにまた転機を迎える。

 病気が見つかったのだ。

 幸い生命に関わる病気では無かったから、もっと身体が成長したら手術をすれば大丈夫だと言われた。

 ただリハビリも含めると治るのに数年はかかるだろうとも言われた。

 それでもまだ、この頃の怜はあきらめてなかった。

 想いを寄せる華にいつか気持ちを伝えたいと思っていたのだ。

 中学3年になった頃、両親の仕事で海外へ引っ越す事が決まった。玲はそれまで我儘を言った事はなかったが、絶対に日本で進学したいと無理を言った。

 幸い近所に叔父夫婦がいたから、すぐ近くに住む条件で日本に残る事を許してもらった。

 体調が悪化したら強制的に連れて行く。卒業後は海外に来るよう約束させられた。

 そして怜は気づく。

 そうか。華ともし両思いになれても、一緒にはいれないんだ。

 それはいつか華に告白しようと思っていた彼の心を、とうとう折ってしまった。

 その頃から、怜は徐々に感情や願いを表に出さなくなった。
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