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第2部 呪いの館 救出編
11話 ※
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※不快なシーンがあります。
ーーー
とりあえず、まずはこのサツマイモだ。館に置いて来よう。華が踵を返して門から入ろうとした瞬間ー。
「ー!!」
背後から何者かに口を押さえられた。
◇◇◇
「んー!んー!」
ゴツい男の手が華の口を押さえる。
背後から太い腕に抱きすくめられたまま引き摺られていく。
サツマイモを持った体勢のまま拘束された為、身をよじる事も出来ない。
それでも必死に抵抗したが、腕からサツマイモが1~2本落ちた程度だった。
どんどん館の門から遠ざかり、田園と反対の山側。茂みに連れ込まれた。
少し広くなった草地に乱暴に投げ出された。身体を地面に打ちつけ、持っていたサツマイモも辺りに散らばった。
そこでやっと華は自分を連れ込んだ相手を見た。知らない若い男だった。ギラギラした目で華を見ている。
無言でそのまま華を押し倒す。
この男が自分に何をしようとしているのが分かり恐怖で身体が強張った。
必死に叫びたいのに、やっとの思いで出した声はか細かった。
「や…やめて…」
「そんな格好して、何言ってるんだ、男を誘ってるんだろ?」
気持ち悪い顔で男は笑った。
そのまま華の剥き出しの片脚を持ち上げて、見せつけるように、ベロリと舐めた。
気持ち悪い…気持ち悪い…気持ち悪い!気持ち悪い!気持ち悪い!!
華の全身が男を嫌悪する。
震えながら後退るが、それに合わせるように男がのしかかってきた。
片手で華のズボンをずり下げようとする。ボタンで止まっているので簡単には下がらない。
男は苛々した様子で、もう片手でTシャツをたくし上げた。
「やめて!やめてよ!」
華も必死に抵抗するが力の差は明らかだった。
側に落ちてたイモで男を殴ろうとするが、すぐにその手を押さえられる。
そのまま男が華の自由を奪う為、上半身を倒してきた。思わず目を閉じて叫んだ。
「いやっ!助けて!勇ちゃん!怜ちゃん!」
『右手で男の顎を殴れ!』
青年の声が聞こえた。
『早くっ!』
無我夢中だった。
恐怖を追い払うように、華は右手の拳を男の顎めがけて繰り出す。
ガッ!と鈍い音と共に、メリケンサックがクリーンヒットし男はそのまま後ろに倒れた。ピクリとも動かない。
『早く次!何か持ってたでしょ?トドメ刺して!』
今度は少年の声がした。
ハッとして、手を震わせながらも腰に巻いたポーチから催涙スプレーとスタンガンを取り出した。
急いで男の身体にスタンガンを当て、顔側にスプレーをかけた。
白目を剥いた状態でダラダラと涙がこぼれ始めた。口元もだらしなく開いて舌と涎が出ている。
『これでひとまず大丈夫だろう』
『もう少し奥に蔦があるから、それで縛ろう』
「…わかった!」
2人に励まされながら、言われた通り草地の奥に行こうとした時。
ガサガサッ
華の背後で茂みが揺れた。こちらに急いで向かって来る者がいるようだ。
華は催涙スプレー、スタンガンを構えた。
怖いなんて、泣いていられない。
自分の力でみんなの元へ帰ると決めたのだ。それは、華自身が無事に帰らなければ意味がない。
華は息を潜めて、来るべき時を待つ。
やがて、姿を表したのはー。
◇◇◇
「……怜ちゃん?」
いる筈のない人の姿に華は呆然とする。
現れたのは、息を弾ませ肩を上下させた汗だくの怜だった。
彼は元の世界に帰ったはず。
これも、この世界が見せた幻だろうか?
「…華!無事!?」
姿を現すなり、彼は息を荒げながら華に尋ねた。
その足元に倒れている男を見つけ顔を強張らせた。
だが、華が手に構えた物でとりあえず撃退したらしい、というのは推測できたようだ
「…何で…ここに?」
「…館中探してもいなかったから。外に出たら華の声が聞こえて…大丈夫だった?怪我はない?」
ゆっくり怯えさせないように、怜が華に近づく。
普段クールな彼が額に汗をかくほど走り回って探してくれたらしい。
だが、華はまだ本物なのか信じられず後ずさった。
「…本当に、本物?」
「…うん」
「でも…帰ったんじゃ…」
「帰った。でもやっとココに戻る方法がわかったから戻ってきた」
言われてみれば、怜の服装が前回と違う。
以前はTシャツとショートパンツだったのに、上下ダボダボの黒のジャージに変わっていた。
「やっと帰れたのに何で…」
「華を1人置いておける訳ないだろう!」
苦しそうな表情で怜が言った。
華は呆然と怜を見つめた。
1人残されたと気づいて絶望した日。
何度助けが来るのを願っただろう。
そしてもう助けは来ないとあきらめた日。
せっかく脱出したのにこんな所に戻ってくる筈がない。助けに来るわけがないと勝手に彼らの行動を決めつけた。
でないと自分が前に進めなかったから。
でも彼は諦めず方法を探してくれていたのだ。この世界に1人取り残された華を助ける為に。
「…怜ちゃん」
戻るまで、寂しさに泣かないと決めていたのに。もう…限界だった。
先程までの恐怖と、会いたかった人に会えた事と、あきらめずに自分を助けに来てくれた事。
恐怖感と、安堵感と、嬉しさ。全部が入り混じって、もう涙が止まらなかった。
涙腺が決壊した華の肩に手を置いて、怜は躊躇いがちに、そっと引き寄せた。
足元に転がる男性から、何があったのか察して。でも寄り添いたくて。だけど怖がらせないように。労わるように。
引き寄せる行動ひとつで、彼の優しさが伝わってきた。それが本物の彼なんだと教えてくれる。
「…怖かった」
「うん」
「私…自分ではまだまだ子供だと思ってて…男の人に襲われるなんて思ってなくて…」
「……」
「…1人で置いて行かれたのも…つらくて…。何で誰も助けに来てくれないのって…勝手に思ってて」
「…遅くなって…ごめん」
怜の胸に引き寄せられた華には、怜の顔は見えない。でもその震えた声で、怜も泣いてる気配がした。
「そんなこと…ない。私をあきらめないでいてくれて、ありがとう」
泣きながらも華は笑顔でお礼を述べた。
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とりあえず、まずはこのサツマイモだ。館に置いて来よう。華が踵を返して門から入ろうとした瞬間ー。
「ー!!」
背後から何者かに口を押さえられた。
◇◇◇
「んー!んー!」
ゴツい男の手が華の口を押さえる。
背後から太い腕に抱きすくめられたまま引き摺られていく。
サツマイモを持った体勢のまま拘束された為、身をよじる事も出来ない。
それでも必死に抵抗したが、腕からサツマイモが1~2本落ちた程度だった。
どんどん館の門から遠ざかり、田園と反対の山側。茂みに連れ込まれた。
少し広くなった草地に乱暴に投げ出された。身体を地面に打ちつけ、持っていたサツマイモも辺りに散らばった。
そこでやっと華は自分を連れ込んだ相手を見た。知らない若い男だった。ギラギラした目で華を見ている。
無言でそのまま華を押し倒す。
この男が自分に何をしようとしているのが分かり恐怖で身体が強張った。
必死に叫びたいのに、やっとの思いで出した声はか細かった。
「や…やめて…」
「そんな格好して、何言ってるんだ、男を誘ってるんだろ?」
気持ち悪い顔で男は笑った。
そのまま華の剥き出しの片脚を持ち上げて、見せつけるように、ベロリと舐めた。
気持ち悪い…気持ち悪い…気持ち悪い!気持ち悪い!気持ち悪い!!
華の全身が男を嫌悪する。
震えながら後退るが、それに合わせるように男がのしかかってきた。
片手で華のズボンをずり下げようとする。ボタンで止まっているので簡単には下がらない。
男は苛々した様子で、もう片手でTシャツをたくし上げた。
「やめて!やめてよ!」
華も必死に抵抗するが力の差は明らかだった。
側に落ちてたイモで男を殴ろうとするが、すぐにその手を押さえられる。
そのまま男が華の自由を奪う為、上半身を倒してきた。思わず目を閉じて叫んだ。
「いやっ!助けて!勇ちゃん!怜ちゃん!」
『右手で男の顎を殴れ!』
青年の声が聞こえた。
『早くっ!』
無我夢中だった。
恐怖を追い払うように、華は右手の拳を男の顎めがけて繰り出す。
ガッ!と鈍い音と共に、メリケンサックがクリーンヒットし男はそのまま後ろに倒れた。ピクリとも動かない。
『早く次!何か持ってたでしょ?トドメ刺して!』
今度は少年の声がした。
ハッとして、手を震わせながらも腰に巻いたポーチから催涙スプレーとスタンガンを取り出した。
急いで男の身体にスタンガンを当て、顔側にスプレーをかけた。
白目を剥いた状態でダラダラと涙がこぼれ始めた。口元もだらしなく開いて舌と涎が出ている。
『これでひとまず大丈夫だろう』
『もう少し奥に蔦があるから、それで縛ろう』
「…わかった!」
2人に励まされながら、言われた通り草地の奥に行こうとした時。
ガサガサッ
華の背後で茂みが揺れた。こちらに急いで向かって来る者がいるようだ。
華は催涙スプレー、スタンガンを構えた。
怖いなんて、泣いていられない。
自分の力でみんなの元へ帰ると決めたのだ。それは、華自身が無事に帰らなければ意味がない。
華は息を潜めて、来るべき時を待つ。
やがて、姿を表したのはー。
◇◇◇
「……怜ちゃん?」
いる筈のない人の姿に華は呆然とする。
現れたのは、息を弾ませ肩を上下させた汗だくの怜だった。
彼は元の世界に帰ったはず。
これも、この世界が見せた幻だろうか?
「…華!無事!?」
姿を現すなり、彼は息を荒げながら華に尋ねた。
その足元に倒れている男を見つけ顔を強張らせた。
だが、華が手に構えた物でとりあえず撃退したらしい、というのは推測できたようだ
「…何で…ここに?」
「…館中探してもいなかったから。外に出たら華の声が聞こえて…大丈夫だった?怪我はない?」
ゆっくり怯えさせないように、怜が華に近づく。
普段クールな彼が額に汗をかくほど走り回って探してくれたらしい。
だが、華はまだ本物なのか信じられず後ずさった。
「…本当に、本物?」
「…うん」
「でも…帰ったんじゃ…」
「帰った。でもやっとココに戻る方法がわかったから戻ってきた」
言われてみれば、怜の服装が前回と違う。
以前はTシャツとショートパンツだったのに、上下ダボダボの黒のジャージに変わっていた。
「やっと帰れたのに何で…」
「華を1人置いておける訳ないだろう!」
苦しそうな表情で怜が言った。
華は呆然と怜を見つめた。
1人残されたと気づいて絶望した日。
何度助けが来るのを願っただろう。
そしてもう助けは来ないとあきらめた日。
せっかく脱出したのにこんな所に戻ってくる筈がない。助けに来るわけがないと勝手に彼らの行動を決めつけた。
でないと自分が前に進めなかったから。
でも彼は諦めず方法を探してくれていたのだ。この世界に1人取り残された華を助ける為に。
「…怜ちゃん」
戻るまで、寂しさに泣かないと決めていたのに。もう…限界だった。
先程までの恐怖と、会いたかった人に会えた事と、あきらめずに自分を助けに来てくれた事。
恐怖感と、安堵感と、嬉しさ。全部が入り混じって、もう涙が止まらなかった。
涙腺が決壊した華の肩に手を置いて、怜は躊躇いがちに、そっと引き寄せた。
足元に転がる男性から、何があったのか察して。でも寄り添いたくて。だけど怖がらせないように。労わるように。
引き寄せる行動ひとつで、彼の優しさが伝わってきた。それが本物の彼なんだと教えてくれる。
「…怖かった」
「うん」
「私…自分ではまだまだ子供だと思ってて…男の人に襲われるなんて思ってなくて…」
「……」
「…1人で置いて行かれたのも…つらくて…。何で誰も助けに来てくれないのって…勝手に思ってて」
「…遅くなって…ごめん」
怜の胸に引き寄せられた華には、怜の顔は見えない。でもその震えた声で、怜も泣いてる気配がした。
「そんなこと…ない。私をあきらめないでいてくれて、ありがとう」
泣きながらも華は笑顔でお礼を述べた。
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