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第1部 呪いの館 復讐編
16話
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泣いている勇輝の背中にそっと手を置いた。
「…勇ちゃん」
その声に勇輝がビクッと震えた。
「……華?……俺…」
「……何も言わないでいいよ」
ゆっくりその背を撫でる。ただ安心させるように。
「……ひどい事いっぱい言ってごめん」
「…うん」
「…傷つけるつもりはなかった」
「…うん」
「華やみんなの事、守りたかったのに…」
「…うん」
「こんな…こんな事したかったわけじゃないんだ…」
勇輝が懺悔するように床に泣き伏す。華はただ静かに、その背を撫で続けた。
どの位時間が経ったのか。
勇輝の様子が落ち着いてきたのを見て、華は勇輝の背中から手を離した。
「…少し落ち着いた?」
「…あぁ、ありがとう」
勇輝が手で額を抑える。
切れて血が流れ出ていたようだ。すでに血は乾いている。
「ケガしてるよ…」
手を伸ばそうとしたが、昼の勇輝の態度が頭に浮かび華は動きを止めた。
そんな華の手に勇輝が手を重ねる。
「…大丈夫。今は…俺だ、勇輝だ。アイツは昼間に力を使い過ぎて俺の中で寝ている」
泣き腫らした焦茶の瞳で、優しく華を見ていた。
その様子に華はホッとして、思わず抱きついた。
「え?ちょ、華…!?」
「良かった…勇ちゃんが戻ってくれて。もう、会えないかと…」
嬉しさに涙ぐむ。
「あの、俺汚いから、離れて…」
「汚くない、汚くないよ」
勇輝は先程自分が嘔吐した事を言ったつもりだった。
なのに華は昼間に勇輝が行った惨虐な行動まで、全てを受け止めてくれているようだった。
相変わらずの勘違いからくる優しさ。でもそのいつもやりとりに、ホッとさせられる。
「はは、お前って本当に……。ありがとな」
1人じゃない。
こうして受け止めてくれる人がいる。
その安堵感に再び勇輝は涙が溢れる。感謝と愛情をもって、勇輝は華を抱きしめ返した。
◇◇◇
遠くでシャワー音が聞こえる。手持ち無沙汰でする事もなく、華はベッドの端に腰掛けていた。
勇輝も落ち着いたし、シャワーを浴びるというので、華は帰ろうとした…が。
すぐ上がるから、ここで待ってて欲しい!と勇輝にお願いされたのだ。
この館にはTVもないしスマホも使えないので、どう時間を潰せばいいか。ふと、床に目線を向けると先程の吐物が…。
どうせする事もないからと、華は掃除する事にした。
タンスを漁ってタオルを見つけ、掃除する。
そのまま食堂で後処理してから、勇輝の部屋に戻った。
「華!どこに行ってたんだよ」
風呂から上がり、黒いバスローブ着の勇輝が華に抱きついて来た。
怜といい勇輝といい、何でバスローブなんだろう…と内心思いながら、コレと手にある物を見せた。
「…スポーツドリンク?」
「うん、さっき吐いたでしょ?念のため水分補給できる物とってきたの」
「そうなのか、ありがとう」
ドリンクを受け取って、勇輝は華を近くのソファに座らせた。
「俺、掃除するからちょっと待ってて」
「あ、私が掃除しといたよ」
「え!?」
勇輝が床を見ると、確かに先程の色々やらかした箇所は綺麗になっていた。
「マジかよ~」
勇輝が頭を抱えて座り込んだ。その顔は真っ赤だ。
「なんで?どうしたの?」
羞恥で涙目になりながら華を軽く睨む。
「好きな子にあんな情けない姿見られて、その上、ゲロまで片付けさせるなんて、俺サイテーじゃん」
「好きって…。あ、あの、だからさっき言ったでしょ?汚くないよ、その、勇ちゃんだし」
何だか気恥ずかしくて、華もつられて赤くなった。
「……」
これが漫画かアニメならドーンと背後に落雷があったかもしれない。
勇輝は無言で立ち上がると、華を抱き上げ奥のベッドに向かった。突然の行動に、華は目を白黒させる。
そのままベッドにそっと華を乗せて、ゆっくり押し倒した。
「…勇ちゃん」
その声に勇輝がビクッと震えた。
「……華?……俺…」
「……何も言わないでいいよ」
ゆっくりその背を撫でる。ただ安心させるように。
「……ひどい事いっぱい言ってごめん」
「…うん」
「…傷つけるつもりはなかった」
「…うん」
「華やみんなの事、守りたかったのに…」
「…うん」
「こんな…こんな事したかったわけじゃないんだ…」
勇輝が懺悔するように床に泣き伏す。華はただ静かに、その背を撫で続けた。
どの位時間が経ったのか。
勇輝の様子が落ち着いてきたのを見て、華は勇輝の背中から手を離した。
「…少し落ち着いた?」
「…あぁ、ありがとう」
勇輝が手で額を抑える。
切れて血が流れ出ていたようだ。すでに血は乾いている。
「ケガしてるよ…」
手を伸ばそうとしたが、昼の勇輝の態度が頭に浮かび華は動きを止めた。
そんな華の手に勇輝が手を重ねる。
「…大丈夫。今は…俺だ、勇輝だ。アイツは昼間に力を使い過ぎて俺の中で寝ている」
泣き腫らした焦茶の瞳で、優しく華を見ていた。
その様子に華はホッとして、思わず抱きついた。
「え?ちょ、華…!?」
「良かった…勇ちゃんが戻ってくれて。もう、会えないかと…」
嬉しさに涙ぐむ。
「あの、俺汚いから、離れて…」
「汚くない、汚くないよ」
勇輝は先程自分が嘔吐した事を言ったつもりだった。
なのに華は昼間に勇輝が行った惨虐な行動まで、全てを受け止めてくれているようだった。
相変わらずの勘違いからくる優しさ。でもそのいつもやりとりに、ホッとさせられる。
「はは、お前って本当に……。ありがとな」
1人じゃない。
こうして受け止めてくれる人がいる。
その安堵感に再び勇輝は涙が溢れる。感謝と愛情をもって、勇輝は華を抱きしめ返した。
◇◇◇
遠くでシャワー音が聞こえる。手持ち無沙汰でする事もなく、華はベッドの端に腰掛けていた。
勇輝も落ち着いたし、シャワーを浴びるというので、華は帰ろうとした…が。
すぐ上がるから、ここで待ってて欲しい!と勇輝にお願いされたのだ。
この館にはTVもないしスマホも使えないので、どう時間を潰せばいいか。ふと、床に目線を向けると先程の吐物が…。
どうせする事もないからと、華は掃除する事にした。
タンスを漁ってタオルを見つけ、掃除する。
そのまま食堂で後処理してから、勇輝の部屋に戻った。
「華!どこに行ってたんだよ」
風呂から上がり、黒いバスローブ着の勇輝が華に抱きついて来た。
怜といい勇輝といい、何でバスローブなんだろう…と内心思いながら、コレと手にある物を見せた。
「…スポーツドリンク?」
「うん、さっき吐いたでしょ?念のため水分補給できる物とってきたの」
「そうなのか、ありがとう」
ドリンクを受け取って、勇輝は華を近くのソファに座らせた。
「俺、掃除するからちょっと待ってて」
「あ、私が掃除しといたよ」
「え!?」
勇輝が床を見ると、確かに先程の色々やらかした箇所は綺麗になっていた。
「マジかよ~」
勇輝が頭を抱えて座り込んだ。その顔は真っ赤だ。
「なんで?どうしたの?」
羞恥で涙目になりながら華を軽く睨む。
「好きな子にあんな情けない姿見られて、その上、ゲロまで片付けさせるなんて、俺サイテーじゃん」
「好きって…。あ、あの、だからさっき言ったでしょ?汚くないよ、その、勇ちゃんだし」
何だか気恥ずかしくて、華もつられて赤くなった。
「……」
これが漫画かアニメならドーンと背後に落雷があったかもしれない。
勇輝は無言で立ち上がると、華を抱き上げ奥のベッドに向かった。突然の行動に、華は目を白黒させる。
そのままベッドにそっと華を乗せて、ゆっくり押し倒した。
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