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第1部 呪いの館 復讐編
13話
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館に戻ると、出入り口の扉が祭壇に戻った。
どうやら出入りする度に祭壇を通さないといけないらしい。
その後はあっさり解散となった。
勇輝と怜は、身体の負担が大きいらしく明日に備えて早めに休むらしい。
桃がお腹が空いたと騒ぐと、勇輝の部屋の隣に、ドアのない出入り口が現れた。
広めの食堂だった。食卓と椅子が並んでおり、食べたい物が勝手に出てくるらしい。
桃が一緒にどうかと誘うが、勇輝と怜は疲労を理由に断っていた。華もそんな気分になれない。
そんなんじゃ身体もたないよ!とプンプン怒って、桃は食堂ではなく、部屋に帰って行った。
勇輝も特に言葉をかわす事もなく部屋に戻って行く。
華がどこで過ごそうか、と周りに視線を彷徨わせていると、視線を感じた。怜だ。
「もしかして、この辺で休もうと思ってる?」
「え…うん、あの辺で…」
祭壇と真向かいの、桃と勇輝が体当たりしていた大きい扉辺りを指差す。
「勇ちゃんが体当たりしても壊れなかったから、外から誰かが入ってくる事もないだろうし…」
「…はぁ。これはほっとけない訳だ」
怜がため息をつくと、華を軽く睨む。
「確かに外からは入って来れないだろうけど…。ボク言ったよね。アイツに気をつけろって。あと、あの子に憑いた姉さんにも殺さそうになったよね。自分を狙う敵が内側にいるのに逃げ道のない場所で寝るつもり?」
「そ、そうでした」
勇輝と桃に取り憑いた霊に殺されそうになったが、それ以上に外での出来事が衝撃過ぎて忘れていた。
でも他の場所といえば、
「じゃあ食堂?食卓の下なら隠れられるかな?」
「…丸見えだから。それにみんなが出入りできる場所なんだから結局危ないのは同じでしょ?」
的確な怜のツッコミに、ぐうの音も出ないとはこの事だと悟る。
「だからボクの部屋においで」
「…いいの?」
「いいよ。ボクはソファを使うからベッドを使ったらいいよ。」
「そんな、悪いよ。私がソファで…」
「ボクが死んだ場所だけどいいの?」
「…ベッドでお願いします」
そのまま怜について部屋へ向かう。部屋の中は様々な青色で統一されていて、ところどころにキャンドルが灯っていた。
適当に休んでて、と言い残して怜は部屋の奥に行った。しばらくしてシャワー音が聞こえてくる。
…シャワー室なんかあったけ?
勇輝と同じ部屋の作りなら、奥にそんなの無かったけど…。とそこまで考えて、華は思考を放棄した。
桃がお腹空いたと言ったら、一瞬で食堂が出来たのだ。恐らく、常識で考えても無駄だろう。
改めて華は部屋を見渡す。
綺麗や数種類の青で統一された部屋は、若い男性の部屋という印象だった。
もしかしたら、この部屋の持ち主は自分達と年齢的に変わらないかもしれない。
ソファとテーブルの向こうに大きめの窓が1つ。カーテンは開いていた。
窓に近づいて外を見ると、薄暗い中に美しい庭園と柵の向こうに村が見えた。
田畑も山も緑が枯れて土が剥き出しだった。
なのに、この家を囲っている柵の内側だけが花と緑に溢れている。
その対象的な景色も不気味に思えた。
もしかしたら明日、全部が終わって元の世界に帰れるかもしれない。
でも村人を全て殺して、私達が帰った後。ここはどうなるんだろう。
確かあの不気味な声は、魂は元に戻ると言っていた。どういう意味だろうか。今さらだが、もし3人が死んだ原因を探していれば。また結果は違ったのだろうかー。
窓ガラスに碧い瞳の人影が映った。
驚きで振り返ると、シャワーを終えた怜が白いバスローブをつけて立っていた。しっとりと髪は濡れている。
「何してたの?外真っ暗で何もないでしょ?」
「あ、うん。明日の事、考えてた」
いつの間にか、外は夜の帳に包まれていた。
もし原因を調べていたらどうなっていたか。その疑問を怜に聞いてみようかー。華が悩んでるうちに、怜はソファに座った。
「え?もう寝るの?髪まだ濡れてるよ?」
「思ったより、この身体は体力がないみたいだ。シャワー使っていいから」
だるそうにソファの背もたれに身体を預ける。タオルを持っているが頭を拭く様子はない。
ソファに座ってボーっとしながら、怜は自分の手首につけた腕時計を見てた。
「腕時計がどうしたの?」
「腕時計ていうのか、これ。面白いね」
オシャレなデザインだが、一般的なデジタル時計だ。勇輝と華が怜の誕生日にプレゼントした物だった。
「この台の文字が勝手に動いてる。魔法みたいだ…」
その言葉に華はハッとした。
もしかしたら、彼の生きていた時代には腕時計どころか、電磁的な物がなかったのかもしれない。
自分達は一体、どんな時代、どんな世界に来てしまったのだろう…。
華は不安に視線を彷徨わせ、怜の髪から落ちた水滴が、ソファに染み作っているのを見つけた。
貸して、と華は怜からタオルを取ると背後に回って頭を吹き始めた。
ごしごしごしごし。
気を紛らわせる為にした行動だったが、怜は抵抗する事もなく、されるがままだ。それが濡れた犬か猫を世話してるようで、だんだん楽しくなってくる。
「ふふっ」
「…なに?」
「普段、私が面倒見られてるから、なんか新鮮で」
そろそろ乾いたかな?と怜のサラサラの髪を触る。まだ半乾きだが、先程よりはだいぶマシだろう。
「…ねえ」
「何?」
怜の声がよく聞き取れなくて、華は怜に顔を近づけた。
怜の方は顔だけを華のいる側へ振り向ける。
あ、と思った時には相手の顔が近くにあった。怜の黒い前髪の間から、綺麗な碧い目が覗いている。まつ毛長い…と思った瞬間。
怜が華の黒髪を一房手に取り。
ジッと華を見つめながら髪に口づけた。
どうやら出入りする度に祭壇を通さないといけないらしい。
その後はあっさり解散となった。
勇輝と怜は、身体の負担が大きいらしく明日に備えて早めに休むらしい。
桃がお腹が空いたと騒ぐと、勇輝の部屋の隣に、ドアのない出入り口が現れた。
広めの食堂だった。食卓と椅子が並んでおり、食べたい物が勝手に出てくるらしい。
桃が一緒にどうかと誘うが、勇輝と怜は疲労を理由に断っていた。華もそんな気分になれない。
そんなんじゃ身体もたないよ!とプンプン怒って、桃は食堂ではなく、部屋に帰って行った。
勇輝も特に言葉をかわす事もなく部屋に戻って行く。
華がどこで過ごそうか、と周りに視線を彷徨わせていると、視線を感じた。怜だ。
「もしかして、この辺で休もうと思ってる?」
「え…うん、あの辺で…」
祭壇と真向かいの、桃と勇輝が体当たりしていた大きい扉辺りを指差す。
「勇ちゃんが体当たりしても壊れなかったから、外から誰かが入ってくる事もないだろうし…」
「…はぁ。これはほっとけない訳だ」
怜がため息をつくと、華を軽く睨む。
「確かに外からは入って来れないだろうけど…。ボク言ったよね。アイツに気をつけろって。あと、あの子に憑いた姉さんにも殺さそうになったよね。自分を狙う敵が内側にいるのに逃げ道のない場所で寝るつもり?」
「そ、そうでした」
勇輝と桃に取り憑いた霊に殺されそうになったが、それ以上に外での出来事が衝撃過ぎて忘れていた。
でも他の場所といえば、
「じゃあ食堂?食卓の下なら隠れられるかな?」
「…丸見えだから。それにみんなが出入りできる場所なんだから結局危ないのは同じでしょ?」
的確な怜のツッコミに、ぐうの音も出ないとはこの事だと悟る。
「だからボクの部屋においで」
「…いいの?」
「いいよ。ボクはソファを使うからベッドを使ったらいいよ。」
「そんな、悪いよ。私がソファで…」
「ボクが死んだ場所だけどいいの?」
「…ベッドでお願いします」
そのまま怜について部屋へ向かう。部屋の中は様々な青色で統一されていて、ところどころにキャンドルが灯っていた。
適当に休んでて、と言い残して怜は部屋の奥に行った。しばらくしてシャワー音が聞こえてくる。
…シャワー室なんかあったけ?
勇輝と同じ部屋の作りなら、奥にそんなの無かったけど…。とそこまで考えて、華は思考を放棄した。
桃がお腹空いたと言ったら、一瞬で食堂が出来たのだ。恐らく、常識で考えても無駄だろう。
改めて華は部屋を見渡す。
綺麗や数種類の青で統一された部屋は、若い男性の部屋という印象だった。
もしかしたら、この部屋の持ち主は自分達と年齢的に変わらないかもしれない。
ソファとテーブルの向こうに大きめの窓が1つ。カーテンは開いていた。
窓に近づいて外を見ると、薄暗い中に美しい庭園と柵の向こうに村が見えた。
田畑も山も緑が枯れて土が剥き出しだった。
なのに、この家を囲っている柵の内側だけが花と緑に溢れている。
その対象的な景色も不気味に思えた。
もしかしたら明日、全部が終わって元の世界に帰れるかもしれない。
でも村人を全て殺して、私達が帰った後。ここはどうなるんだろう。
確かあの不気味な声は、魂は元に戻ると言っていた。どういう意味だろうか。今さらだが、もし3人が死んだ原因を探していれば。また結果は違ったのだろうかー。
窓ガラスに碧い瞳の人影が映った。
驚きで振り返ると、シャワーを終えた怜が白いバスローブをつけて立っていた。しっとりと髪は濡れている。
「何してたの?外真っ暗で何もないでしょ?」
「あ、うん。明日の事、考えてた」
いつの間にか、外は夜の帳に包まれていた。
もし原因を調べていたらどうなっていたか。その疑問を怜に聞いてみようかー。華が悩んでるうちに、怜はソファに座った。
「え?もう寝るの?髪まだ濡れてるよ?」
「思ったより、この身体は体力がないみたいだ。シャワー使っていいから」
だるそうにソファの背もたれに身体を預ける。タオルを持っているが頭を拭く様子はない。
ソファに座ってボーっとしながら、怜は自分の手首につけた腕時計を見てた。
「腕時計がどうしたの?」
「腕時計ていうのか、これ。面白いね」
オシャレなデザインだが、一般的なデジタル時計だ。勇輝と華が怜の誕生日にプレゼントした物だった。
「この台の文字が勝手に動いてる。魔法みたいだ…」
その言葉に華はハッとした。
もしかしたら、彼の生きていた時代には腕時計どころか、電磁的な物がなかったのかもしれない。
自分達は一体、どんな時代、どんな世界に来てしまったのだろう…。
華は不安に視線を彷徨わせ、怜の髪から落ちた水滴が、ソファに染み作っているのを見つけた。
貸して、と華は怜からタオルを取ると背後に回って頭を吹き始めた。
ごしごしごしごし。
気を紛らわせる為にした行動だったが、怜は抵抗する事もなく、されるがままだ。それが濡れた犬か猫を世話してるようで、だんだん楽しくなってくる。
「ふふっ」
「…なに?」
「普段、私が面倒見られてるから、なんか新鮮で」
そろそろ乾いたかな?と怜のサラサラの髪を触る。まだ半乾きだが、先程よりはだいぶマシだろう。
「…ねえ」
「何?」
怜の声がよく聞き取れなくて、華は怜に顔を近づけた。
怜の方は顔だけを華のいる側へ振り向ける。
あ、と思った時には相手の顔が近くにあった。怜の黒い前髪の間から、綺麗な碧い目が覗いている。まつ毛長い…と思った瞬間。
怜が華の黒髪を一房手に取り。
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