【完結】呪いの館と名無しの霊たち(仮)

秋空花林

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第1部 呪いの館 復讐編

11話 ※

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※惨虐な表現があります。


ーーー


 祭壇の前に来た怜は、2人と同じように同じ様に腕輪のついた手を台に載せた。反対側は華と手を繋いだままだ。

 途端、華の脳裏に声が響いてくる。館に来たばかりの時に聞いた声だ。

『闘う者と求める者はわかった。護る者はどこだ』

「ここに」

 怜の言葉に腕輪が光る。

『闘う者は2人を守れ。護る者は求める者を守れ。求める者はあの日何が起きたか真実を突き止めよ』

「真実がわからなければ?」

『村人を全て殺せ。そうすれば迷い込んだ者は帰り、死んだ魂は再び戻る』

「最初から村人を皆殺しにしてもいいか」

『ー何故?』

「憎くて堪らないからだ」

 勇輝が碧い目をギラつかせて女神像を睨む。

『決めるのは求める者だ』

「望みます。私の中の彼女が、絶対許さないって泣いてる」

『フッ…ハッハッハッ!ここはお前たちの為に用意した世界。お前たちの望むように世界も歪む。思い切り恨みを晴らすがいい!』
 
 祭壇が眩しく光る。光が止むと、祭壇のあった場所には大きな扉が現れた。

「行くぞ。」

 勇輝がドアに進む。

「2人はボクから離れないで」

 怜が華から手を離し勇輝の次に続く。桃、華の順で続いた。

 勇輝はみんなが続いたのを確認して両手で扉を開けた。



◇◇◇



 扉から出ると美しい庭園が広がっていた。

 だが庭園の柵の向こうは枯れた田園が広がり、日本の昔話に出てきそうな木造の家がポツポツ建っている。

 空には厚い黒雲が広がり、時折稲光が走っている。全体的に陰鬱な世界が広がっているように見えた。

「さっそく来たか。あの時の恨み晴らしてくれる」

 勇輝の腕輪が淡く光り、形を変える。その手に真っ黒な剣が握られていた。

 勇輝の視線の先、門扉の向こうにはワラワラと集まっている人影があった。まだ距離があるからか、よく姿が見えない。

 その時、稲光が走り、影になっていた人達を浮かび上がらせた。

「…ひっ」

 華が恐怖に両手で口を押さえる。

 死人だった。

 時代劇にでも出てきそうな農民のような格好をしたそれらは、土色の肌が干からびていて、全体的に痩せ細っていた。目が飛びていたり、中には骨が見えている者もいる。

 怜の腕輪が光り盾へと変化する。

「2人共ボクの後ろに」

 頷いて華と桃は、怜の背後に移動する。桃が怯えるようにピタリと怜にくっついた。その目は黒眼なので、普段の桃である事がわかる。

「あれが村人だよ。キミが恨みを晴らすこと選択したから、ボクらの恨みや憎しみが彼らを歪めたんだ」
「わ、わたしが!?」
「そう。アレも言ってただろう。ココはボク達の思うよう変化する世界だ。良くも悪くもね」

 チラと桃を見やる。

「…キミの事はボクが守るから」
「怜くん…」

 桃がポッと頬を赤らめて、潤んだ瞳で怜を見上げた。

 正確には今は別人格の彼だが、桃には関係ない。普段、華ばかり構っているイケメンの怜が、桃に優しく話しかけてくれる。それが桃の心を浮き立たせた。

「守るまでもない。オレが殱滅させる」

 勇輝がそう言って剣を一振り横に薙ぎ払った。

 その瞬間、ビュン!と音がしたかと思うと、門扉の前にいた死人達が一斉に吹き飛んだ。門も何がぶつかったようにガタガタと揺れる。

 門前に死人がいなくなったのを確認して、勇輝が門から出る。手を触れる事なく自然と門扉は消えていた。

 一斉に飛ばされていた死人が起き上がり、勇輝の元へ集まってくる。「あぁ…」とか「うぅ…」など、うめいているが言葉になっていない。

 無表情で勇輝は剣を振るう。

 ザシュッ
 ザシュッ

 一振り、二振りする度。死人の首が舞った。躊躇する様子は全くない。血か何かわからない液体が舞い、勇輝の顔や服を汚す。

「足りない」

 いくつもの首が飛び、いつのまにか勇輝の周りに、多くの首のない死体が倒れていた。

 敵わないと悟ったのか、何人か後退りし逃げ出す者もいた。

 一匹も逃すまいと、勇輝が追いかけ即座に首をはねる。

「足りない、足りない、足りない」

 殺しても殺しても足りない。心の欲するままに、彼は夢中で剣を振り続けた。
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