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29話
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今日は強い魔物との戦いもあった。だから明日からの訓練の為に、早めに休む様に。
そう若ちんに言われて、ほとんどのクラスメイトが早目に休んでいた真夜中。
『みんな起きろ!食堂に集まれ!』
若ちんの怒鳴り声が建物中に響き渡った。
慌ただしく真夜中の異世界14日目。
わたしは寝ぼけ眼を擦って、菜穂ちゃんやくるみちゃんと共に、部屋着のまま食堂に顔を出した。
非戦闘組は、わたし達同様にほとんど寝起き状態だった。
そんな中、戦闘組はほぼ戦闘に参加できる身なりで集まっていた。
「さっき、城から伝令があった!魔王軍が今から総攻撃をかけてくるらしい」
「総攻撃!?」
若ちんの言葉にクラス全体が騒ぎ出す。
この前の話では半年後が目安と言ってた筈だ。なのにまだ14日しか経ってない!
「偵察隊が山の手前に魔王軍が集結してるのを確認したらしい。城側でも戦いの準備をしてるが、こっちでも準備出来次第、城側と合流するぞ」
「若ちん!急すぎるよ!今日侵入して襲って来たかと思ったら、今度は総攻撃なんて!」
クラスメイトからもっともな意見があがる。
それに対して若ちんは、だからだろ!と言い放った。
「味方が負傷して動揺してる今だからこそ、向こうはこっちがもっと力と経験を積む前に戦力を削るつもりなんだろ」
聞いていたクラスのみんなの顔つきがどんどん険しくなった。
戦力を削ぐ。それは即ち。クラスメイトの何人かが死ぬ事を指す。
「訓練してるといっても、所詮俺達は素人だ。実践に慣れてない。だからその弱点を突かれたって事だな」
「そんな…」
「だが、そう悲観的になるな。こっちには切り札がある」
「切り札?」
「何?若ちん」
クラスメイトが期待を込めて若ちんに注目した。もちろんわたしも。
「魔王側は鈴木と田中が死んだと思ってる。アイツらにとって、厄介者と思ってた2人がいなくなった事がこの総攻撃のキッカケなら…」
ゴクリ、唾を飲み込む。
な、なんか嫌な予感がするよ!
「コイツら2人はうちらの切り札だ」
クラスメイト達が、一斉にわたしを見た!
嘘!そんな大役無理!
「そう思わねぇか?お前も」
若ちんが部屋の出入口を見る。
そこには、部屋着にカーディガンを羽織った忍くんがドアに寄りかかっていた。側に菜穂ちゃんとくるみちゃんが付き添ってるのが見えた。
「忍くん!」
私は慌てて忍くんの元に駆け寄り、彼を支えた。大丈夫だよ、と忍くんが微笑むと瓶底メガネもキラリと光った。
良かった。体調、大丈夫みたい。
「忍くん。わたしを助けてくれて、ありがとう」
「あかりちゃん…」
忍くんの元気な姿を見てホッとしたら、我慢していた涙腺が緩んできた。思わず、ソッと忍くんの胸に顔を埋める。
「でも…もう無理しないで、お願い。また忍くんに…何かあったら…わたし」
「…心配かけてごめんね」
あの…あかりちゃん、と遠慮がちに呼ばれて顔を上げると。顔が真っ赤になってる忍くんの顔があって。
こういうのって、良い雰囲気っていうのかな?と思ってたら。忍くんの後ろで、顔を赤くして居た堪れそうな菜穂ちゃんとくるみちゃんが見えた。
ん?
ハッとして、振り返るとクラスメイト全員が漏れなくわたし達に注目していた!めっちゃ楽しそうに目をキラキラさせている!
そうだ!みんなの前だったー!
「おーい。もういいか?ラブロマンスは生き残ってからやってくれ」
呆れた若ちんが、甘い雰囲気をぶった斬って。クラスメイトがつられて笑った。
そんな中、真っ赤になりながらも忍くんが声をあげた。
「若ちん。僕に考えがあります」
そう若ちんに言われて、ほとんどのクラスメイトが早目に休んでいた真夜中。
『みんな起きろ!食堂に集まれ!』
若ちんの怒鳴り声が建物中に響き渡った。
慌ただしく真夜中の異世界14日目。
わたしは寝ぼけ眼を擦って、菜穂ちゃんやくるみちゃんと共に、部屋着のまま食堂に顔を出した。
非戦闘組は、わたし達同様にほとんど寝起き状態だった。
そんな中、戦闘組はほぼ戦闘に参加できる身なりで集まっていた。
「さっき、城から伝令があった!魔王軍が今から総攻撃をかけてくるらしい」
「総攻撃!?」
若ちんの言葉にクラス全体が騒ぎ出す。
この前の話では半年後が目安と言ってた筈だ。なのにまだ14日しか経ってない!
「偵察隊が山の手前に魔王軍が集結してるのを確認したらしい。城側でも戦いの準備をしてるが、こっちでも準備出来次第、城側と合流するぞ」
「若ちん!急すぎるよ!今日侵入して襲って来たかと思ったら、今度は総攻撃なんて!」
クラスメイトからもっともな意見があがる。
それに対して若ちんは、だからだろ!と言い放った。
「味方が負傷して動揺してる今だからこそ、向こうはこっちがもっと力と経験を積む前に戦力を削るつもりなんだろ」
聞いていたクラスのみんなの顔つきがどんどん険しくなった。
戦力を削ぐ。それは即ち。クラスメイトの何人かが死ぬ事を指す。
「訓練してるといっても、所詮俺達は素人だ。実践に慣れてない。だからその弱点を突かれたって事だな」
「そんな…」
「だが、そう悲観的になるな。こっちには切り札がある」
「切り札?」
「何?若ちん」
クラスメイトが期待を込めて若ちんに注目した。もちろんわたしも。
「魔王側は鈴木と田中が死んだと思ってる。アイツらにとって、厄介者と思ってた2人がいなくなった事がこの総攻撃のキッカケなら…」
ゴクリ、唾を飲み込む。
な、なんか嫌な予感がするよ!
「コイツら2人はうちらの切り札だ」
クラスメイト達が、一斉にわたしを見た!
嘘!そんな大役無理!
「そう思わねぇか?お前も」
若ちんが部屋の出入口を見る。
そこには、部屋着にカーディガンを羽織った忍くんがドアに寄りかかっていた。側に菜穂ちゃんとくるみちゃんが付き添ってるのが見えた。
「忍くん!」
私は慌てて忍くんの元に駆け寄り、彼を支えた。大丈夫だよ、と忍くんが微笑むと瓶底メガネもキラリと光った。
良かった。体調、大丈夫みたい。
「忍くん。わたしを助けてくれて、ありがとう」
「あかりちゃん…」
忍くんの元気な姿を見てホッとしたら、我慢していた涙腺が緩んできた。思わず、ソッと忍くんの胸に顔を埋める。
「でも…もう無理しないで、お願い。また忍くんに…何かあったら…わたし」
「…心配かけてごめんね」
あの…あかりちゃん、と遠慮がちに呼ばれて顔を上げると。顔が真っ赤になってる忍くんの顔があって。
こういうのって、良い雰囲気っていうのかな?と思ってたら。忍くんの後ろで、顔を赤くして居た堪れそうな菜穂ちゃんとくるみちゃんが見えた。
ん?
ハッとして、振り返るとクラスメイト全員が漏れなくわたし達に注目していた!めっちゃ楽しそうに目をキラキラさせている!
そうだ!みんなの前だったー!
「おーい。もういいか?ラブロマンスは生き残ってからやってくれ」
呆れた若ちんが、甘い雰囲気をぶった斬って。クラスメイトがつられて笑った。
そんな中、真っ赤になりながらも忍くんが声をあげた。
「若ちん。僕に考えがあります」
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