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17話
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「わ、わ、若ちん!い、いつから!?」
「アホか。お前の声がデカすぎて部屋まで聞こえてたわ。俺も一緒に出ようと思ったのに、先に出た上に、何か始めやがって。出るに出れるかよ」
「わー!恥ずかしい!」
思わず鈴木くんの胸に顔を埋めた!
鈴木くんの鼓動が早くなったのがわかった。不思議に思って見上げると、茹でタコ状態の鈴木くんがそこにいた。
「鈴木くん!大丈夫!?」
「あ、うん。ごめん、女の子にあまり免疫なくて、そろそろ離れてもいい?」
「ごめん!」
ピョン!と結構距離をあける。その間に若ちんが部屋から出て来た。
ちょうどわたしと鈴木くんの間にいる状態だ。
「まあ、俺も恋愛ごとは反対しないけどよ。ほどほどにな。じゃあ先に行ってるぞ」
少しフラフラしながら、若ちんは外に向かって歩いて行った。
残ったわたしと鈴木くんは、お互い顔を見合わせて。
「僕達も行こうか」
「うん」
どちらから言うでもなく。何となく自然に手を繋いで、歩き出した。
◇◇◇
非戦闘組の作業場に行くと。
速攻、鈴木くんと付き合った事がバレた。
そりゃ手を繋いでたらバレるよね!
でも、若ちんに聞かれてたのが恥ずかしくて手を繋いだの無意識だったよ!
元々昨日の若ちんの起こした事件で訓練は休みだったらしく。みんな自主的に集まって作業をしていたらしい。
でもわたしと鈴木くんが現れてからは、訓練そっちのけで、恋バナで盛り上がった。勇者一行といっても高校生なので恋愛事情は大好物だ。
「いつからお互い好きだったんだよ!」
「僕は前から…」
「きゃー!田中さんは!?」
「昨日、森で守ってもらった時かな」
「いやーん青春!私も恋したーい!」
「じゃあ、俺なんかどう?」
その内、わたしと鈴木くんそっちのけで告白大会が始まり。めでたく新たな2組のカップルが誕生したのだった。
青春!
◇◇◇
夕飯事には戦闘組にもこの事が伝わり。今までにない位にみんながハシャいでた。
もちろんいつもみんな明るいけど。ココに来てからはやっぱりしっかりしなきゃ!て雰囲気だったから。
ココに来る前みたいな、良い意味で本当に緩んだ空気は久しぶりだった。
わたし達、非戦闘組だけで3組のカップル誕生にみんな大はしゃぎだ!
その後、実は俺もー、私もー、と続き。更に3組のカップルが誕生したのだった!
夕飯事の賑やかな雰囲気が落ち着いた頃、若ちんが注目!と大声を出した。
「みんな浮かれるのもいいが、ちょっと現実に戻すぞ!昨日の一件からの続報だ!」
若ちんは、あの後フラフラしながら王様の所へ行って昨日の一件で話をつけてきたらしい。
本当に良く出来た先生だ!
若ちん曰く。王様は、王女様がやらかした事件を深く詫び、王女様やその護衛を離れの宮殿に軟禁したらしい。私達が帰るまでは、絶対そこから出さないと誓ってくれたそうだ。
元々勇者を王女の婚約者にと考えたのは、王妃様と王女様だったが、昨日の若ちんの壊れスキルと、勇者の性格の冷たさで、キッパリ諦めたそうだ。
今ではむしろ早く元の世界に帰って欲しいと言ってるらしい。
そっちが呼び寄せたくせに勝手!
で、明日からは更なるスキルアップの為、戦闘組は基本外で実践を積む方向でレベルアップを狙うそうだ。
非戦闘組は引き続き、城内で自分のスキルアップを図る事になった。
わたしは未だに自分のスキルを使いこなせてないから、戦闘組では足手まといになる。だから非戦闘組に混じるよう言われた。
夕飯後、部屋に戻ろうとした時に大河がやって来た。
「ちょっといいか?」
わたしじゃなく、鈴木くんに声をかけた。先に部屋に帰ってていいよ、と言い残して、2人は食堂から連れだって出て行った。
◇◇◇
「あれ?田中さんどうしたの?」
暫くすると、両手いっぱいに素材を抱えた鈴木くんが帰って来た。
どうしても気になって、鈴木くんの部屋の前で待っていたのだ。
「大河と何話したのか気になって」
だって、これまで大河と鈴木くんが話してるとこなんて、見たことないし!なんかわたしの事で言われてないかって気になってしまったのだ。
「あぁ、たいした事じゃないよ」
鈴木くんは笑って、大河との事を簡単に話してくれた。
「田中さんの事をよろしくって言って、沢山素材を貰ったんだよ」
「え?」
確かに、鈴木くんの両腕にはいくつもの鉱物類がゴロゴロしていた。
「これで田中さんの身を守る物を作ってあげて欲しいって」
「大河…」
「素敵な幼馴染だね」
「…うん!」
その後は、何か作って欲しいのある?とか、こういうのが欲しいな、とか。鈴木くんの部屋の前で、とりとめない話をして過ごした。
帰りは、一旦素材を部屋に置いた鈴木くんが今度はわたしを部屋まで送ってくれた。
こういうのって、なんか付き合ってるって感じがする!ドキドキ。
わたしの部屋の前に着いて帰り際。
鈴木くんがちょっと照れながら言ってきた。
「あ、あのさ。田中さんの事を名前で呼んでいい?」
「いいよ!じゃあ私も鈴木くんを名前で呼んでいい?」
そこでハタと気づく。
あれ?鈴木くんの下の名前って何だっけ?
「忍だよ。鈴木忍」
「~~~っ。ごめんなさい!」
大丈夫、何となく気づいてたから、と鈴木くんが笑った。
私本当にクラスのみんなの事を知らなかったんだな。ちょっと反省。
笑って許してくれる鈴木くん…忍くんの懐の広さに、好感度爆上がりだ。
「じゃあ、あかりちゃん。おやすみ。また明日ね」
フッと頭に何かが触れたと思ったら、忍くんは踵を返して足早に帰って行った。
後ろ姿でもその耳が真っ赤になっていて。
そして気づく。
頭にキスされた事に。
「ふわぁぁぁ~」
生まれた年=彼氏いない歴のわたしには、そんな軽いスキンシップも破壊力抜群で。
ちょっと腰砕けになりながら、部屋に戻った。
その後、真っ赤な顔したわたしは、菜穂ちゃんとくるみちゃんに色々突っ込まれたのだった。
「アホか。お前の声がデカすぎて部屋まで聞こえてたわ。俺も一緒に出ようと思ったのに、先に出た上に、何か始めやがって。出るに出れるかよ」
「わー!恥ずかしい!」
思わず鈴木くんの胸に顔を埋めた!
鈴木くんの鼓動が早くなったのがわかった。不思議に思って見上げると、茹でタコ状態の鈴木くんがそこにいた。
「鈴木くん!大丈夫!?」
「あ、うん。ごめん、女の子にあまり免疫なくて、そろそろ離れてもいい?」
「ごめん!」
ピョン!と結構距離をあける。その間に若ちんが部屋から出て来た。
ちょうどわたしと鈴木くんの間にいる状態だ。
「まあ、俺も恋愛ごとは反対しないけどよ。ほどほどにな。じゃあ先に行ってるぞ」
少しフラフラしながら、若ちんは外に向かって歩いて行った。
残ったわたしと鈴木くんは、お互い顔を見合わせて。
「僕達も行こうか」
「うん」
どちらから言うでもなく。何となく自然に手を繋いで、歩き出した。
◇◇◇
非戦闘組の作業場に行くと。
速攻、鈴木くんと付き合った事がバレた。
そりゃ手を繋いでたらバレるよね!
でも、若ちんに聞かれてたのが恥ずかしくて手を繋いだの無意識だったよ!
元々昨日の若ちんの起こした事件で訓練は休みだったらしく。みんな自主的に集まって作業をしていたらしい。
でもわたしと鈴木くんが現れてからは、訓練そっちのけで、恋バナで盛り上がった。勇者一行といっても高校生なので恋愛事情は大好物だ。
「いつからお互い好きだったんだよ!」
「僕は前から…」
「きゃー!田中さんは!?」
「昨日、森で守ってもらった時かな」
「いやーん青春!私も恋したーい!」
「じゃあ、俺なんかどう?」
その内、わたしと鈴木くんそっちのけで告白大会が始まり。めでたく新たな2組のカップルが誕生したのだった。
青春!
◇◇◇
夕飯事には戦闘組にもこの事が伝わり。今までにない位にみんながハシャいでた。
もちろんいつもみんな明るいけど。ココに来てからはやっぱりしっかりしなきゃ!て雰囲気だったから。
ココに来る前みたいな、良い意味で本当に緩んだ空気は久しぶりだった。
わたし達、非戦闘組だけで3組のカップル誕生にみんな大はしゃぎだ!
その後、実は俺もー、私もー、と続き。更に3組のカップルが誕生したのだった!
夕飯事の賑やかな雰囲気が落ち着いた頃、若ちんが注目!と大声を出した。
「みんな浮かれるのもいいが、ちょっと現実に戻すぞ!昨日の一件からの続報だ!」
若ちんは、あの後フラフラしながら王様の所へ行って昨日の一件で話をつけてきたらしい。
本当に良く出来た先生だ!
若ちん曰く。王様は、王女様がやらかした事件を深く詫び、王女様やその護衛を離れの宮殿に軟禁したらしい。私達が帰るまでは、絶対そこから出さないと誓ってくれたそうだ。
元々勇者を王女の婚約者にと考えたのは、王妃様と王女様だったが、昨日の若ちんの壊れスキルと、勇者の性格の冷たさで、キッパリ諦めたそうだ。
今ではむしろ早く元の世界に帰って欲しいと言ってるらしい。
そっちが呼び寄せたくせに勝手!
で、明日からは更なるスキルアップの為、戦闘組は基本外で実践を積む方向でレベルアップを狙うそうだ。
非戦闘組は引き続き、城内で自分のスキルアップを図る事になった。
わたしは未だに自分のスキルを使いこなせてないから、戦闘組では足手まといになる。だから非戦闘組に混じるよう言われた。
夕飯後、部屋に戻ろうとした時に大河がやって来た。
「ちょっといいか?」
わたしじゃなく、鈴木くんに声をかけた。先に部屋に帰ってていいよ、と言い残して、2人は食堂から連れだって出て行った。
◇◇◇
「あれ?田中さんどうしたの?」
暫くすると、両手いっぱいに素材を抱えた鈴木くんが帰って来た。
どうしても気になって、鈴木くんの部屋の前で待っていたのだ。
「大河と何話したのか気になって」
だって、これまで大河と鈴木くんが話してるとこなんて、見たことないし!なんかわたしの事で言われてないかって気になってしまったのだ。
「あぁ、たいした事じゃないよ」
鈴木くんは笑って、大河との事を簡単に話してくれた。
「田中さんの事をよろしくって言って、沢山素材を貰ったんだよ」
「え?」
確かに、鈴木くんの両腕にはいくつもの鉱物類がゴロゴロしていた。
「これで田中さんの身を守る物を作ってあげて欲しいって」
「大河…」
「素敵な幼馴染だね」
「…うん!」
その後は、何か作って欲しいのある?とか、こういうのが欲しいな、とか。鈴木くんの部屋の前で、とりとめない話をして過ごした。
帰りは、一旦素材を部屋に置いた鈴木くんが今度はわたしを部屋まで送ってくれた。
こういうのって、なんか付き合ってるって感じがする!ドキドキ。
わたしの部屋の前に着いて帰り際。
鈴木くんがちょっと照れながら言ってきた。
「あ、あのさ。田中さんの事を名前で呼んでいい?」
「いいよ!じゃあ私も鈴木くんを名前で呼んでいい?」
そこでハタと気づく。
あれ?鈴木くんの下の名前って何だっけ?
「忍だよ。鈴木忍」
「~~~っ。ごめんなさい!」
大丈夫、何となく気づいてたから、と鈴木くんが笑った。
私本当にクラスのみんなの事を知らなかったんだな。ちょっと反省。
笑って許してくれる鈴木くん…忍くんの懐の広さに、好感度爆上がりだ。
「じゃあ、あかりちゃん。おやすみ。また明日ね」
フッと頭に何かが触れたと思ったら、忍くんは踵を返して足早に帰って行った。
後ろ姿でもその耳が真っ赤になっていて。
そして気づく。
頭にキスされた事に。
「ふわぁぁぁ~」
生まれた年=彼氏いない歴のわたしには、そんな軽いスキンシップも破壊力抜群で。
ちょっと腰砕けになりながら、部屋に戻った。
その後、真っ赤な顔したわたしは、菜穂ちゃんとくるみちゃんに色々突っ込まれたのだった。
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