【完結】オタク女子はクラス転移で愛を知り哀を察る(しる)

秋空花林

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15話

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 そこから先は、若ちんも意識が無かった時の話なので、若ちんが後で生徒から聞いた話だそうだ。

 王女のはかりごとで生徒2人(わたしと鈴木くんね!)が死んだかもしれない。そう思った若ちんは、プッツンした(様に見えたそうだ)。
 
 いきなりムクムクと若ちんの身体が筋肉隆々になり、天に向けて奇声を発っした。やだ、まじ怖い。

「俺の生徒をよぉくぅもぉ!敵ハァ全滅サセル、ころす殺すコロスころす殺すコロス…」

 そう言って王女様や護衛に飛びかかったらしい。勿論、護衛もすぐやられる筈もなく一旦刀身で攻撃を受け止めたが、その剣は若ちんの手によって折られたそうだ。なんて馬鹿力!

狂戦士バーサーカーが覚醒したぞ!このままでは国が滅びる!応援を呼べ!」
狂戦士バーサーカー!?そんなの聞いてないわ!ワタクシ殺されるの!?」

 大混乱の中、王様は部下へ指示出しし。王女様は恐怖に泣きながら大河へ訴えたそうだ。勇者様、助けて!と。

「何で俺が?自業自得だろ」

 そう言い捨てて、他のクラスメイトと作戦会議を始め、わたし達を救出する組と、若ちんを見守る組に分かれた。

 見守る組!若ちんを止めないんだ!

 王様が、勇者よ!狂戦士バーサーカーを止められるのは其方しかおらん!助けてくれ!と訴えたが、大河はそれはそれはいい笑顔で返事したらしい。

「王様。若ちん殺したら許さないよ。あと山に置き去りにした俺の仲間がもし死んでたら、俺が魔王の代わりにこの世界ぶっ壊すから覚悟しとけ」

 そう言って戦闘組の3分の2を連れて謁見の間から出て行ったそうだ。

 いやー。大河のそれ想像できるわ。意外に冷たいからな。

 残った3分の1の戦闘組は、若ちんが狂った様に謁見の間をぶっ壊して、防御一択の騎士達(大河に言われて攻撃できないんだね!)を嬲り倒すのを離れた所から見守っていたらしい。

 すごい絵面!

 時々回復班が、若ちんと相手の騎士を癒やしたそうだ。

 という事は。若ちんが暴れる→騎士達がひたすら防御→回復班が癒す。

 これを、わたし達が救出されて戻ってくるまで、延々と繰り返したんだって!

 最後は大河が、わたし達を無事保護したからもう大丈夫!と見守り組に報告して、若ちんを止める為に気絶させたらしい。

 大河やるな!

 幸い騎士達の防御のお陰でこの国の人達に死者は出なかったけど。若ちんが敵認定した王様、王妃様、王女様は何度か命スレスレの思いをしたらしく。最初から発狂した様に怯えて、最後は気絶したんだって!

 わあ。自業自得だけど、すごいトラウマ!

 ちなみに若ちんの身体中の傷は、短期に身体中の細胞が大活性化した反動らしく。最後身体中から血を噴き出して、若ちんは倒れたらしい。

 わたし、寝てて良かった!

「まぁ、こんなとこだな」
「若ちん。大変だったんだね!もう身体大丈夫?」
「まぁ、俺は血の気が多いからよ!暫く休めば大丈夫だ!昨日の件で、王妃も王女もだいぶ懲りたらしいからな。もうお前達にも手出しはしない筈だ」

 若ちんが、ポンポンと優しく頭を撫でてくれた。じーん。本当に素敵な先生だな。

「良かった。でも王女様は何でこんな事したんだろ」
「それは、勇者の大河を自分の婚約者とか恋人にして、この世界に留めたかったんだろうよ。この前の一件で、お前を大河の恋人と思ったそうだ」
「大河が好きなら、大河に好かれる努力をしたらいいのに。何でみんな、いつもわたしに悪意向けるのかな…」

 落ち込むわたしに鈴木くんが恐る恐る聞いてきた。

「いつもって。こういうの前にもあったの?」
「うん。昔から大河を好きな女の子達によく集団でイジメられてたから」

 細かい事は覚えてないけど、当時の事を思い出すと胸がモヤモヤ、ザワザワする。

 特に中学時代はヒドかったと思う。それが原因でわたしは引きこもりになった。

「だから、何て言うか。他人の悪意に敏感ていうか。そういうの感じると怖くて具合が悪くなるの」

 鈴木くんが思い当たった様に、もしかしてあの時の、と呟いた。

「田中。もう大丈夫だと思うけどよ、もしまた何かする奴がいたら俺に言え。しめてやるから」

 若ちんのセリフに思わず吹き出す。少なくとも高校の先生が言う様な言葉じゃない。

 でも、とても嬉しかった。きっと今クラスの雰囲気が良いのは、この先生のお陰だろうと思う。

「今のクラスメイト達は、みんな優しいですよ!お陰でやっと楽しく学校へ通える様になってます。若ちんのお陰かな。ありがとうございます!」

 クシャ、とまた乱暴に頭を撫でられた。
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