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番外編 学祭編

3 僕の学祭1

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 オレが唖然とした話をしよう。

 多分人生で、こんなに唖然とする事はあまり無いと思う。

 その日は、コウちゃんの通う大学の学祭だった。

 コウちゃんとこは、オレのとこと違って、圧倒的に女が多い。だからさすがに1人で来るのは憚れて、オレは結局奴らを誘った。



「スーの彼女はどこかなぁ~?」

 カクが楽しそうに周囲を見回してる。あれはオレの彼女を探してるフリをして、周囲の女を物色してるな。

「珍しいな。お前が他校の女と付き合って、こんなに続いてるなんて」
「…まあな」

 スケがオレの行動パターンを完全に把握してる感想を言って来た。

 そう。オレは高校の時に、他校の女と付き合った事もある。

 でも、同じ学校でも3ヶ月も持たないのに、他校の奴なんてもっとだ。

 まぁ、毎回オレが全然連絡しなくて、相手にフラれてたんだけど。

「……」

 イッキは静かだ。

 この前オレの学祭で、3人をほっぽってプラカード持ってちょっと抜け出してから、イッキはずっとこんな調子だ。

 他の2人とは普通に話すのに、オレにはあからさまに距離を置いている。

 戻ってから改めて休憩時間を貰って4人でキャンパスを回ったけど、悪い事したな。

「イッキ、まだ怒ってるか?」
「…別に」

 ぷい、とソッポをむかれた。

 やばい。相当怒ってる。

 あの日、プラカードを持ってコウちゃんとキャンパスを一周して、別れて屋台に帰ったら。スケとカクに相手は誰だ?って凄い勢いで問い詰められた。

 オレがコウちゃんを追いかけて捕まえたのを見られてたみたいだ。そんでもって、いきなり2人で居なくなったから、恋人だって速攻バレた。

 遠目だから、相手が男だとはバレてなかったけど。

 で。案の定、カクが紹介しろーっ!て騒いで。

 じゃあ、せっかくだし、恋人の大学で学祭があるからって誘って。

 今に至る。

 そう。オレは、もう仲の良い3人には告白するつもりだったんだ。相手は男だって。

 だけど。イッキがこの調子だと、会わせづらいかも。

 そんな風に考えながら、構内をブラブラ歩く。

 コウちゃんは多分オレが来るとは思って無い筈だ。

 大学が女子ばかりだから、オレが来たら皆にどういう関係か聞かれて困るし。企画内容も微妙だから、見せるのが恥ずかしいって言い訳してたけど。

 コウちゃんの事なら大抵分かる。あれは嘘だ。

 何か言いづらい事があるんだと思う。だから、オレは気づかれない様に、こっそり離れた所からコウちゃんを見ようと思ったんだ。

 だけど。

 カクの言葉で、そんな謙虚な思いはガラガラに崩れ去った。

「わ!あの子達、超可愛い!あそこ入ろうぜ!」

 カクが興奮して指差したのはメイド喫茶だった。可愛いフリフリのメイド服を来た女の子達が接待してくれるカフェ。

 そのカフェの中。数人のメイドさんの中に。

 予想もしていなかった人物を見つけて。

 オレは唖然としたー。



◆◆◆



 僕が呆然とした話をしよう。

 それは僕の通う大学の学祭での話。



 先週、たっくんの大学の学祭でイベントのステージを見かけた僕は、チャンスだと思ってたっくんに聞いたんだ。

 メイドさんに女装してる男子学生を見て、「たっくん、あの、ああいうの好き?」って。

 たっくんは、「…………………いや、別に」って、ドン引きしてた。

 だから僕の参加する学祭の企画は言えなかった。

 だって。

『メイド喫茶』

 だったんだもん。

 僕は男だから裏方の料理担当をするつもりだったけど。同じ学科の女子より小柄で色も白いからって。強制的にホール担当にさせられたんだ。

 しかもバッチリ、メイドさんの女装で。

 たっくんが少しでも興味を示してくれたら、報告するつもりだったけど。あんな反応を見せられたら、怖くて言えなかった。

 だから、たっくんには、それとなく来ないでってお願いしたんだ。

 …本当はちょっと寂しいけど。



 当日の女子の気合いは凄かった。これを機に他校の彼氏をゲットするぞーって!メイクに気合いも入る。そのまま僕までメイクされて、長い髪のカツラを被せられた。

 …自分でもビックリする位、すごい似合ってた。

 これなら、女の子に見えるだろうし、きっと僕を知ってる人でも気づかないだろうな。

 そうして、僕は大盛況のメイド喫茶で、あっちこっち走り回って頑張って働いた。

 そんな中。ソレは、突然やって来た。

 お客さんに捕まって、プラス料金でメイドさんのスペシャルサービスをしている時だった。

「ご主人様のお食事が美味しくなる様に魔法をかけて上げますね!美味しくなぁれ~」

 って、阿保みたいな事を、嫌々やってる時に。

 急に僕に影が差した。

 何で急に?って驚いて、顔を上げたら。

 物凄い険しい表情を浮かべた、たっくんが立っていたんだ。

 何でここに?
 メイクもしてカツラも被ってるのに、もしかして僕って分かったの?

 色んな事が頭を駆け巡る。

 だけど、同時に思った事がある。

 あ、何かマズイかも。

 そう思った。

 学祭だけど、こんな女みたいな格好して、別の男に媚びを売ってるとこを見られて。

 まるで浮気現場を見つかったみたいに。僕は呆然としたー。
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