25 / 53
器との融合
しおりを挟む
石造りの城では、今日もチィの望みによりカシミヤ山羊を模したドドナをチィはせっせとブラッシングしていた
「ドドナの毛は油断すると直ぐに絡まってしまうから、毎日ちゃんとブラッシングしないとね」
〈…リテルよ、我は獣人では無いので毎日そのような事をせずとも…〉
ブラシの手を止めチィは含み笑いを浮かべながら言った
「あら?お願いもして無いのにカシミヤ山羊さんになってブラシをわざわざテーブルの目立つ所に置いているのは誰だったかしら?ここには私と貴方しか居ないわよねぇ」
〈そ、それは其方が…〉
「いいのよぉ~、別に。気持ち良さそうにブラッシングされてる誰かさんじゃ無くても、他のもふもふさんにお願いすればいいものぉ。そろそろ私、外へ出たくなってきたもの。ちょうど良かったわ」
〈リテル!其方がこのような事をして良いのは我だけだ!〉
「ふふ、やきもち焼きの山羊さんね」
ドドナはチィに言い負かされながらも、気持ち良さ気に目を閉じ、また大人しくブラッシングの続きをされながら、話し出した
〈リテルよ、我は器となる男の元へ行かねばならぬ。その器に我を受け入れさせる事で、其方と交わる事も可能だ〉
「…器?」
〈そうだ。其方の好む獣人の器だ〉
「良く分からないんだけど、その獣人の人とドドナが契約するということなの?」
〈契約では無い。その器が我となる。今のように実体が無い身では無くなる。常に其方に今のような事もさせてやれる〉
「ん~、やっぱり良く分からないけど、ドドナが本当の獣人になってもふもふさせてくれたり、ブラッシングさせてくれたりするってことね!」
チィは目をキラリとさせた
それから三日後の夜遅く、ドドナはチィを伴い、ある男の元へ向かった
「お待ちしておりました。リア様もご一緒で」
黒い霧と共に現れたチィとドドナにクレオンは礼をした
「リア?」
チィはリテルという名なのにも関わらず、何故このジャガー獣人がリアと呼んだのか不思議に思った
だが、頭の奥で別な誰かの優しい声がリアと呼んでいた
リアと呼ぶ者の顔には霞が掛かり、はっきりとは思い出せない
チィはギュッと目を閉じ頭の痛みを我慢した
チィの様子に気が付いたドドナは事を急いだ
〈其方には事前に伝えた通り我の器となって貰う。我を受け入れる事で其方の願いも容易に叶うであろう〉
「貴方様の器にお選び頂き光栄でございます」
二人が挨拶を終えると、ドドナは手にしていた黒地に金の文字が描かれた皿をクレオンに持たせ、すっとその皿の上で黒い液体となった
クレオンは戸惑う事なく、盃の様な皿にある液体をゴクリゴクリと飲み始めた
全て飲み干し、数秒の後、クレオンは喉元を両手で押さえ苦しみだした
「ググッ、ガハッ…!我に、我に…」
よろよろと机に向かい半獣化し始め、剥き出しになった爪で苦しさを紛らすように掻きむしった
「ドドナ!」
チィが苦しむジャガー獣人を心配し駆け寄り、手を添えようとした時、ガシリと手首を掴まれた
息を整えながら振り返ったジャガー獣人は、瞳を黒く輝かせ薄ら笑いを浮かべながらチィに言った
「我はドドナでは無いわ。神を取り込み、制した。ああ、あれは神では無いな。あれの記憶も思考も我の一部となった。嫌、クレオンもあれの一部になったのか。まぁ、良い。お前は緑の精霊王の娘として我と交わり、その力を我に与えよ」
片手で手首を掴み、もう片方の手でチィの腰を掴み引き寄せ、首筋に二本の牙を立てた
「痛っ!や、辞めて…!」
「交わりは優しくしてやる」
首筋から流れた血をねっとりと舐め、耳元で囁いた
引き摺るようにして、嫌がるチィを連れ寝台の方へ向かった
「い、嫌、辞めて、ドドナ!辞めて!いやー!!!」
それから数時間後人払いをさせていたその部屋の前に獅子獣人の男が様子を伺いに訪れていた
「どうだ…、くっ、…気持ち良いか?」
「…ええ、とっても…」
「まだ、足りぬと、ぅっ、いう顔をしておるぞ…」
聞き耳を立てていた獅子獣人はドアをノックすることを辞め、卑下た笑いを浮かべその場を後にした
明け方この館の主人に呼ばれた侍女は湯浴みの用意をするように命ぜられた
侍女は用意が整ったことを伝えに行くと、寝台にはぐったりとした美しい娘が眠っていた
いつの間に運び込まれたのか、娘の物と思われるドレスが所狭しとソファに並べられていた
「これから、ここの女主人となる。丁重にな。湯浴みみが済んだ後、これを嵌めておくように」
ガチャリと鎖の付いた手枷を寝台脇の机に置いた
実の息子と変わらない歳の娘を寝台に残し、主人はガウンを羽織って部屋を出て行った
扉の閉まる音に目を覚ました娘を見て侍女は驚いた
「あ、貴女様は…」
新たな女主人と告げられた娘は新王の番い様として城で披露目をしていた娘だった
街中で行方不明になったと噂が立ち、王が半狂乱のようになり探し回っていると耳にしていた侍女は、知ってはいけないこの事情に身震いした
一言も言葉を発すること無く、まだ眠気覚めやらぬ娘の湯浴みを手伝い、主人の命令通りに手枷を嵌めその部屋から出て行った
その夜侍女は眠ることが出来ないでいた
恐ろしい事態に巻き込まれるのはごめんだと、侍女は音を立てないように荷物を纏め、皆が寝静まった頃を見計らい、屋敷を出ようとした
だが、トランクを抱え廊下を静かに歩き、家来達の寝泊まりしている部屋を通り過ぎた所で、声を掛けられた
「こんな時間に何をしている?」
侍女は驚きと恐ろしさで顔面を蒼白にしたのだった
「ドドナの毛は油断すると直ぐに絡まってしまうから、毎日ちゃんとブラッシングしないとね」
〈…リテルよ、我は獣人では無いので毎日そのような事をせずとも…〉
ブラシの手を止めチィは含み笑いを浮かべながら言った
「あら?お願いもして無いのにカシミヤ山羊さんになってブラシをわざわざテーブルの目立つ所に置いているのは誰だったかしら?ここには私と貴方しか居ないわよねぇ」
〈そ、それは其方が…〉
「いいのよぉ~、別に。気持ち良さそうにブラッシングされてる誰かさんじゃ無くても、他のもふもふさんにお願いすればいいものぉ。そろそろ私、外へ出たくなってきたもの。ちょうど良かったわ」
〈リテル!其方がこのような事をして良いのは我だけだ!〉
「ふふ、やきもち焼きの山羊さんね」
ドドナはチィに言い負かされながらも、気持ち良さ気に目を閉じ、また大人しくブラッシングの続きをされながら、話し出した
〈リテルよ、我は器となる男の元へ行かねばならぬ。その器に我を受け入れさせる事で、其方と交わる事も可能だ〉
「…器?」
〈そうだ。其方の好む獣人の器だ〉
「良く分からないんだけど、その獣人の人とドドナが契約するということなの?」
〈契約では無い。その器が我となる。今のように実体が無い身では無くなる。常に其方に今のような事もさせてやれる〉
「ん~、やっぱり良く分からないけど、ドドナが本当の獣人になってもふもふさせてくれたり、ブラッシングさせてくれたりするってことね!」
チィは目をキラリとさせた
それから三日後の夜遅く、ドドナはチィを伴い、ある男の元へ向かった
「お待ちしておりました。リア様もご一緒で」
黒い霧と共に現れたチィとドドナにクレオンは礼をした
「リア?」
チィはリテルという名なのにも関わらず、何故このジャガー獣人がリアと呼んだのか不思議に思った
だが、頭の奥で別な誰かの優しい声がリアと呼んでいた
リアと呼ぶ者の顔には霞が掛かり、はっきりとは思い出せない
チィはギュッと目を閉じ頭の痛みを我慢した
チィの様子に気が付いたドドナは事を急いだ
〈其方には事前に伝えた通り我の器となって貰う。我を受け入れる事で其方の願いも容易に叶うであろう〉
「貴方様の器にお選び頂き光栄でございます」
二人が挨拶を終えると、ドドナは手にしていた黒地に金の文字が描かれた皿をクレオンに持たせ、すっとその皿の上で黒い液体となった
クレオンは戸惑う事なく、盃の様な皿にある液体をゴクリゴクリと飲み始めた
全て飲み干し、数秒の後、クレオンは喉元を両手で押さえ苦しみだした
「ググッ、ガハッ…!我に、我に…」
よろよろと机に向かい半獣化し始め、剥き出しになった爪で苦しさを紛らすように掻きむしった
「ドドナ!」
チィが苦しむジャガー獣人を心配し駆け寄り、手を添えようとした時、ガシリと手首を掴まれた
息を整えながら振り返ったジャガー獣人は、瞳を黒く輝かせ薄ら笑いを浮かべながらチィに言った
「我はドドナでは無いわ。神を取り込み、制した。ああ、あれは神では無いな。あれの記憶も思考も我の一部となった。嫌、クレオンもあれの一部になったのか。まぁ、良い。お前は緑の精霊王の娘として我と交わり、その力を我に与えよ」
片手で手首を掴み、もう片方の手でチィの腰を掴み引き寄せ、首筋に二本の牙を立てた
「痛っ!や、辞めて…!」
「交わりは優しくしてやる」
首筋から流れた血をねっとりと舐め、耳元で囁いた
引き摺るようにして、嫌がるチィを連れ寝台の方へ向かった
「い、嫌、辞めて、ドドナ!辞めて!いやー!!!」
それから数時間後人払いをさせていたその部屋の前に獅子獣人の男が様子を伺いに訪れていた
「どうだ…、くっ、…気持ち良いか?」
「…ええ、とっても…」
「まだ、足りぬと、ぅっ、いう顔をしておるぞ…」
聞き耳を立てていた獅子獣人はドアをノックすることを辞め、卑下た笑いを浮かべその場を後にした
明け方この館の主人に呼ばれた侍女は湯浴みの用意をするように命ぜられた
侍女は用意が整ったことを伝えに行くと、寝台にはぐったりとした美しい娘が眠っていた
いつの間に運び込まれたのか、娘の物と思われるドレスが所狭しとソファに並べられていた
「これから、ここの女主人となる。丁重にな。湯浴みみが済んだ後、これを嵌めておくように」
ガチャリと鎖の付いた手枷を寝台脇の机に置いた
実の息子と変わらない歳の娘を寝台に残し、主人はガウンを羽織って部屋を出て行った
扉の閉まる音に目を覚ました娘を見て侍女は驚いた
「あ、貴女様は…」
新たな女主人と告げられた娘は新王の番い様として城で披露目をしていた娘だった
街中で行方不明になったと噂が立ち、王が半狂乱のようになり探し回っていると耳にしていた侍女は、知ってはいけないこの事情に身震いした
一言も言葉を発すること無く、まだ眠気覚めやらぬ娘の湯浴みを手伝い、主人の命令通りに手枷を嵌めその部屋から出て行った
その夜侍女は眠ることが出来ないでいた
恐ろしい事態に巻き込まれるのはごめんだと、侍女は音を立てないように荷物を纏め、皆が寝静まった頃を見計らい、屋敷を出ようとした
だが、トランクを抱え廊下を静かに歩き、家来達の寝泊まりしている部屋を通り過ぎた所で、声を掛けられた
「こんな時間に何をしている?」
侍女は驚きと恐ろしさで顔面を蒼白にしたのだった
0
お気に入りに追加
394
あなたにおすすめの小説
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
絶倫獣人は溺愛幼なじみを懐柔したい
なかな悠桃
恋愛
前作、“静かな獣は柔い幼なじみに熱情を注ぐ”のヒーロー視点になってます。そちらも読んで頂けるとわかりやすいかもしれません。
※誤字脱字等確認しておりますが見落としなどあると思います。ご了承ください。
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
【R18】××××で魔力供給をする世界に聖女として転移して、イケメン魔法使いに甘やかされ抱かれる話
もなか
恋愛
目を覚ますと、金髪碧眼のイケメン──アースに抱かれていた。
詳しく話を聞くに、どうやら、私は魔法がある異世界に聖女として転移をしてきたようだ。
え? この世界、魔法を使うためには、魔力供給をしなきゃいけないんですか?
え? 魔力供給って、××××しなきゃいけないんですか?
え? 私、アースさん専用の聖女なんですか?
魔力供給(性行為)をしなきゃいけない聖女が、イケメン魔法使いに甘やかされ、快楽の日々に溺れる物語──。
※n番煎じの魔力供給もの。18禁シーンばかりの変態度高めな物語です。
※ムーンライトノベルズにも載せております。ムーンライトノベルズさんの方は、題名が少し変わっております。
※ヒーローが変態です。ヒロインはちょろいです。
R18作品です。18歳未満の方(高校生も含む)の閲覧は、御遠慮ください。
気付いたら異世界の娼館に売られていたけど、なんだかんだ美男子に救われる話。
sorato
恋愛
20歳女、東京出身。親も彼氏もおらずブラック企業で働く日和は、ある日突然異世界へと転移していた。それも、気を失っている内に。
気付いたときには既に娼館に売られた後。娼館の店主にお薦め客候補の姿絵を見せられるが、どの客も生理的に受け付けない男ばかり。そんな中、日和が目をつけたのは絶世の美男子であるヨルクという男で――……。
※男は太っていて脂ぎっている方がより素晴らしいとされ、女は細く印象の薄い方がより美しいとされる美醜逆転的な概念の異世界でのお話です。
!直接的な行為の描写はありませんが、そういうことを匂わす言葉はたくさん出てきますのでR15指定しています。苦手な方はバックしてください。
※小説家になろうさんでも投稿しています。
異世界転移したら、推しのガチムチ騎士団長様の性癖が止まりません
冬見 六花
恋愛
旧題:ロングヘア=美人の世界にショートカットの私が転移したら推しのガチムチ騎士団長様の性癖が開花した件
異世界転移したアユミが行き着いた世界は、ロングヘアが美人とされている世界だった。
ショートカットのために醜女&珍獣扱いされたアユミを助けてくれたのはガチムチの騎士団長のウィルフレッド。
「…え、ちょっと待って。騎士団長めちゃくちゃドタイプなんですけど!」
でもこの世界ではとんでもないほどのブスの私を好きになってくれるわけない…。
それならイケメン騎士団長様の推し活に専念しますか!
―――――【筋肉フェチの推し活充女アユミ × アユミが現れて突如として自分の性癖が目覚めてしまったガチムチ騎士団長様】
そんな2人の山なし谷なしイチャイチャエッチラブコメ。
●ムーンライトノベルズで掲載していたものをより糖度高めに改稿してます。
●11/6本編完結しました。番外編はゆっくり投稿します。
●11/12番外編もすべて完結しました!
●ノーチェブックス様より書籍化します!
【R18】助けてもらった虎獣人にマーキングされちゃう話
象の居る
恋愛
異世界転移したとたん、魔獣に狙われたユキを助けてくれたムキムキ虎獣人のアラン。襲われた恐怖でアランに縋り、家においてもらったあともズルズル関係している。このまま一緒にいたいけどアランはどう思ってる? セフレなのか悩みつつも関係が壊れるのが怖くて聞けない。飽きられたときのために一人暮らしの住宅事情を調べてたらアランの様子がおかしくなって……。
ベッドの上ではちょっと意地悪なのに肝心なとこはヘタレな虎獣人と、普段はハッキリ言うのに怖がりな人間がお互いの気持ちを確かめ合って結ばれる話です。
ムーンライトノベルズさんにも掲載しています。
【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!
チャららA12・山もり
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。
お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる