24 / 53
其々の役目
しおりを挟む
大きな屋敷の主人であるクレオンは元暗部の者達を招集していた
「俺の玩具だったあれも役に立ったようで」
「ああ。あの娘があそこまで役に立つとはな」
「もう、あれも用済みですがどうなさいますか?」
「なんだ、飽きたと言っておきながら、またあの娘が欲しくなったか?」
「ははは、今あれは安心しきってます。その安心が崩れ、また元の生活に戻るとなった時どんな顔するのか楽しみでして」
「お前も良い趣味をしているな。役目を終えたんだ、煮るなり焼くなり好きにしろ」
「ではあれでまた遊ばせて頂くとしましょう」
獅子獣人の男は下唇を舐めた
「これからの事だが、恐らくこちらに誰かしら寄越すだろう。その者達を素知らぬ振りをして屋敷に招き入れ、こちらの手駒として動いて貰おう」
そうクレオンが話した時、獅子獣人は人差し指を口元に当て扉に手を掛けた
突然開かれた扉から勢い余ってバデスがなだれ込んできた
「何をしておる」
「ち、父上、その…、私も、私も何か…」
「バデスよ、そうだな…、アーテル様の信頼の厚いお前にしか出来ない事がある。宰相もアーテル様も彼奴に操られておる。二人の目を覚まさせる役目はお前にしか頼めぬ。お前の登城禁止を解かせ是非二人の為に動いて欲しい。重要な役目だ。出来るか?」
「父上!出来ます!アーテル様が王の座に就いて頂くことは叶いませんでしたが、次こそは必ず!」
「…では、お前の登城許可が降り次第動いて貰うとしよう」
「ありがとうございます!必ず、父上のお役に立ちます!」
喜びの笑みを浮かべ退室して行ったバデスを見て獅子獣人は口を開いた
「よろしいのですか?」
「なに、あの愚息のことは、はなから期待などしておらぬ。詳細を打ち明けるつもりも無いわ」
「ククククッ、クレオン様は御子息といえど、ご容赦ございませんな」
「あれが、私の血を引くとは情け無いことよ」
「それで、例のあの方とは繋ぎは取れましたでしょうか?」
「いや、あの方は私が願えば何をせずとも現れご助力下さる、正に私のためだけの神よ」
その会話を聞いていたかのように黒い霧が文机の上に小さな渦を巻き、すっと一枚の紙を置いていった
「今のが…」
「ははは、これだ。私の神の力だ。全てをご存知だ。どれどれ、今回はどのような助力をして下さることか」
現れた紙を手に取りほくそ笑んだ
「ふふふ、ははは、これは愉快。早速愚息に伝達して貰おうではないか」
元暗部の者達へその内容を伝え終えると紙はサラサラと砂が風に運ばれるように形を無くし消えたのだった
同じ頃、街の食堂でネラはカウンターにしなやかな腰つきで膝をつき、サイラスの愚痴を聞いてやっていた
「俺さぁ、あいつら二人がこんな風で終わるのが許せ無くてよぉ…。騎士も辞めてやる!って啖呵切ったものの、何かいまいちスッキリしないんだよな…」
「ふぅ~ん、何にもしないでアンタは尻尾丸めて逃げて来たんだ」
「バカ野郎、俺は王に直接辞めてやる!って言ってきたんだぞ!」
「王にねぇ…。で、二人が許せないとか言ってアンタは何かした訳?」
「いや、だから、辞めてやる!って…」
「……はぁっ、本当っ、アンタってバカだね」
「バカって何だよ!俺の何処がバカ何だよ」
「ああっ、もう、いちいち説明するのも面倒くさいわ。取り敢えず、アンタは城に戻んなさいよ。エグル隊長からの伝言よ。護衛の任はそのままだって」
「そのままって…チィはあの変な黒いののとこに行っちまったんだぞ…」
「んっとに、だから、チィの護衛は誰だったのよ?」
「…俺だよ」
「そのチィをみすみすその変な黒い奴んとこに行かせたのは?」
「………」
「アンタは護衛の仕事を何も果たしてもいないのに、辞めるって短絡的に言ったみたいだけど、思い通りにいかない子供が癇癪起こしたのと同じってこと!責任ある大人なら、騎士として役割を果たしてから辞めなさいよね!口だけの男になりたいの?」
ネラは長い尻尾でサイラスの腰辺りをパシパシと叩いた
サイラスは言葉に詰まり指を組んだ手の上に額を乗せた
「アンタがちゃんと騎士らしく仕事をしたら、この間の返事をしてあげるわ」
「本当か!」
ガバっと顔を上げ、ネラの両手を掴んだ
「良い返事になるかどうかはアンタ次第!私は仕事の出来る男が好きなのよ」
すっとサイラスから手を抜き、パチリとウインクをしてネラは給仕の仕事に戻って行った
「お、俺…頑張る!ネラ、俺行ってくるわ!」
カウンターにコインを置き颯爽とサイラスは食堂を後にした
調理場の奥から熊獣人の女主人が呆れ顔で言った
「ネラは本当にサイラスを転がすのが上手いねぇ」
「あら、何のこと?私は自分の好みの男の話をしただけよ」
「あんたは正に女豹だよ」
「ふふ、ティファーさん、私、伊達に豹獣人じゃありませんよ」
ネラは緩やかに長い尻尾を揺らし笑んだ
食堂を出たサイラスは腕を組みながら歩いていた
俺が先ずやらなきゃいけないこと…
チィを先ずは探す
どうやって…
チィの匂いは何処にも無い…
頭の中をぐるぐるとさせていると、ふとサイラスの鼻にある匂いが届いた
サイラスはその匂いにハッとなり、急いでそちらに向かって走って行った
「俺の玩具だったあれも役に立ったようで」
「ああ。あの娘があそこまで役に立つとはな」
「もう、あれも用済みですがどうなさいますか?」
「なんだ、飽きたと言っておきながら、またあの娘が欲しくなったか?」
「ははは、今あれは安心しきってます。その安心が崩れ、また元の生活に戻るとなった時どんな顔するのか楽しみでして」
「お前も良い趣味をしているな。役目を終えたんだ、煮るなり焼くなり好きにしろ」
「ではあれでまた遊ばせて頂くとしましょう」
獅子獣人の男は下唇を舐めた
「これからの事だが、恐らくこちらに誰かしら寄越すだろう。その者達を素知らぬ振りをして屋敷に招き入れ、こちらの手駒として動いて貰おう」
そうクレオンが話した時、獅子獣人は人差し指を口元に当て扉に手を掛けた
突然開かれた扉から勢い余ってバデスがなだれ込んできた
「何をしておる」
「ち、父上、その…、私も、私も何か…」
「バデスよ、そうだな…、アーテル様の信頼の厚いお前にしか出来ない事がある。宰相もアーテル様も彼奴に操られておる。二人の目を覚まさせる役目はお前にしか頼めぬ。お前の登城禁止を解かせ是非二人の為に動いて欲しい。重要な役目だ。出来るか?」
「父上!出来ます!アーテル様が王の座に就いて頂くことは叶いませんでしたが、次こそは必ず!」
「…では、お前の登城許可が降り次第動いて貰うとしよう」
「ありがとうございます!必ず、父上のお役に立ちます!」
喜びの笑みを浮かべ退室して行ったバデスを見て獅子獣人は口を開いた
「よろしいのですか?」
「なに、あの愚息のことは、はなから期待などしておらぬ。詳細を打ち明けるつもりも無いわ」
「ククククッ、クレオン様は御子息といえど、ご容赦ございませんな」
「あれが、私の血を引くとは情け無いことよ」
「それで、例のあの方とは繋ぎは取れましたでしょうか?」
「いや、あの方は私が願えば何をせずとも現れご助力下さる、正に私のためだけの神よ」
その会話を聞いていたかのように黒い霧が文机の上に小さな渦を巻き、すっと一枚の紙を置いていった
「今のが…」
「ははは、これだ。私の神の力だ。全てをご存知だ。どれどれ、今回はどのような助力をして下さることか」
現れた紙を手に取りほくそ笑んだ
「ふふふ、ははは、これは愉快。早速愚息に伝達して貰おうではないか」
元暗部の者達へその内容を伝え終えると紙はサラサラと砂が風に運ばれるように形を無くし消えたのだった
同じ頃、街の食堂でネラはカウンターにしなやかな腰つきで膝をつき、サイラスの愚痴を聞いてやっていた
「俺さぁ、あいつら二人がこんな風で終わるのが許せ無くてよぉ…。騎士も辞めてやる!って啖呵切ったものの、何かいまいちスッキリしないんだよな…」
「ふぅ~ん、何にもしないでアンタは尻尾丸めて逃げて来たんだ」
「バカ野郎、俺は王に直接辞めてやる!って言ってきたんだぞ!」
「王にねぇ…。で、二人が許せないとか言ってアンタは何かした訳?」
「いや、だから、辞めてやる!って…」
「……はぁっ、本当っ、アンタってバカだね」
「バカって何だよ!俺の何処がバカ何だよ」
「ああっ、もう、いちいち説明するのも面倒くさいわ。取り敢えず、アンタは城に戻んなさいよ。エグル隊長からの伝言よ。護衛の任はそのままだって」
「そのままって…チィはあの変な黒いののとこに行っちまったんだぞ…」
「んっとに、だから、チィの護衛は誰だったのよ?」
「…俺だよ」
「そのチィをみすみすその変な黒い奴んとこに行かせたのは?」
「………」
「アンタは護衛の仕事を何も果たしてもいないのに、辞めるって短絡的に言ったみたいだけど、思い通りにいかない子供が癇癪起こしたのと同じってこと!責任ある大人なら、騎士として役割を果たしてから辞めなさいよね!口だけの男になりたいの?」
ネラは長い尻尾でサイラスの腰辺りをパシパシと叩いた
サイラスは言葉に詰まり指を組んだ手の上に額を乗せた
「アンタがちゃんと騎士らしく仕事をしたら、この間の返事をしてあげるわ」
「本当か!」
ガバっと顔を上げ、ネラの両手を掴んだ
「良い返事になるかどうかはアンタ次第!私は仕事の出来る男が好きなのよ」
すっとサイラスから手を抜き、パチリとウインクをしてネラは給仕の仕事に戻って行った
「お、俺…頑張る!ネラ、俺行ってくるわ!」
カウンターにコインを置き颯爽とサイラスは食堂を後にした
調理場の奥から熊獣人の女主人が呆れ顔で言った
「ネラは本当にサイラスを転がすのが上手いねぇ」
「あら、何のこと?私は自分の好みの男の話をしただけよ」
「あんたは正に女豹だよ」
「ふふ、ティファーさん、私、伊達に豹獣人じゃありませんよ」
ネラは緩やかに長い尻尾を揺らし笑んだ
食堂を出たサイラスは腕を組みながら歩いていた
俺が先ずやらなきゃいけないこと…
チィを先ずは探す
どうやって…
チィの匂いは何処にも無い…
頭の中をぐるぐるとさせていると、ふとサイラスの鼻にある匂いが届いた
サイラスはその匂いにハッとなり、急いでそちらに向かって走って行った
0
お気に入りに追加
394
あなたにおすすめの小説
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
絶倫獣人は溺愛幼なじみを懐柔したい
なかな悠桃
恋愛
前作、“静かな獣は柔い幼なじみに熱情を注ぐ”のヒーロー視点になってます。そちらも読んで頂けるとわかりやすいかもしれません。
※誤字脱字等確認しておりますが見落としなどあると思います。ご了承ください。
気付いたら異世界の娼館に売られていたけど、なんだかんだ美男子に救われる話。
sorato
恋愛
20歳女、東京出身。親も彼氏もおらずブラック企業で働く日和は、ある日突然異世界へと転移していた。それも、気を失っている内に。
気付いたときには既に娼館に売られた後。娼館の店主にお薦め客候補の姿絵を見せられるが、どの客も生理的に受け付けない男ばかり。そんな中、日和が目をつけたのは絶世の美男子であるヨルクという男で――……。
※男は太っていて脂ぎっている方がより素晴らしいとされ、女は細く印象の薄い方がより美しいとされる美醜逆転的な概念の異世界でのお話です。
!直接的な行為の描写はありませんが、そういうことを匂わす言葉はたくさん出てきますのでR15指定しています。苦手な方はバックしてください。
※小説家になろうさんでも投稿しています。
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
【R18】××××で魔力供給をする世界に聖女として転移して、イケメン魔法使いに甘やかされ抱かれる話
もなか
恋愛
目を覚ますと、金髪碧眼のイケメン──アースに抱かれていた。
詳しく話を聞くに、どうやら、私は魔法がある異世界に聖女として転移をしてきたようだ。
え? この世界、魔法を使うためには、魔力供給をしなきゃいけないんですか?
え? 魔力供給って、××××しなきゃいけないんですか?
え? 私、アースさん専用の聖女なんですか?
魔力供給(性行為)をしなきゃいけない聖女が、イケメン魔法使いに甘やかされ、快楽の日々に溺れる物語──。
※n番煎じの魔力供給もの。18禁シーンばかりの変態度高めな物語です。
※ムーンライトノベルズにも載せております。ムーンライトノベルズさんの方は、題名が少し変わっております。
※ヒーローが変態です。ヒロインはちょろいです。
R18作品です。18歳未満の方(高校生も含む)の閲覧は、御遠慮ください。
異世界転移したら、推しのガチムチ騎士団長様の性癖が止まりません
冬見 六花
恋愛
旧題:ロングヘア=美人の世界にショートカットの私が転移したら推しのガチムチ騎士団長様の性癖が開花した件
異世界転移したアユミが行き着いた世界は、ロングヘアが美人とされている世界だった。
ショートカットのために醜女&珍獣扱いされたアユミを助けてくれたのはガチムチの騎士団長のウィルフレッド。
「…え、ちょっと待って。騎士団長めちゃくちゃドタイプなんですけど!」
でもこの世界ではとんでもないほどのブスの私を好きになってくれるわけない…。
それならイケメン騎士団長様の推し活に専念しますか!
―――――【筋肉フェチの推し活充女アユミ × アユミが現れて突如として自分の性癖が目覚めてしまったガチムチ騎士団長様】
そんな2人の山なし谷なしイチャイチャエッチラブコメ。
●ムーンライトノベルズで掲載していたものをより糖度高めに改稿してます。
●11/6本編完結しました。番外編はゆっくり投稿します。
●11/12番外編もすべて完結しました!
●ノーチェブックス様より書籍化します!
【R18】助けてもらった虎獣人にマーキングされちゃう話
象の居る
恋愛
異世界転移したとたん、魔獣に狙われたユキを助けてくれたムキムキ虎獣人のアラン。襲われた恐怖でアランに縋り、家においてもらったあともズルズル関係している。このまま一緒にいたいけどアランはどう思ってる? セフレなのか悩みつつも関係が壊れるのが怖くて聞けない。飽きられたときのために一人暮らしの住宅事情を調べてたらアランの様子がおかしくなって……。
ベッドの上ではちょっと意地悪なのに肝心なとこはヘタレな虎獣人と、普段はハッキリ言うのに怖がりな人間がお互いの気持ちを確かめ合って結ばれる話です。
ムーンライトノベルズさんにも掲載しています。
【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!
チャららA12・山もり
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。
お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる