もふもふすんすん

まめ

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隣国へ向けて

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「チィ、トトと行って欲しい所があるんだ」
フェンリル化しお腹にぐりぐりとされながらラルフは言った
「ん?どこに?」
「今までで一番遠い所。隣国でカシャバルトって言うんだけど、トトのお母さんが産まれた国なんだ。今、そこの国で多くの人が病いに苦しんでる。だからトトは原因を突き止めたい。それと、チィの力を借りたい。向こうでその病いに効きそうな薬草が何か調べて欲しい」
「いいよ。どんな病気なの?」
「詳しくは向こうに行ってみないと分からない」
「分かった。……トトさん、今日宰相さんが結婚のこと言ってた。トトさんとチィは番いだからもう結婚の儀をしなくても良いの?」
「ん~、そうじゃ無いんだ。もちろん唯一無二の番いだから結婚してるのと一緒なんだけど、チィの身体はまだ眠っている所が有ってそこが目覚めるのを待ってる」
「…まだチィは小さいってこと?」
「なんて言うのかな…今日言った事覚えてる?先に身体を元に戻したって。だから、チィの心がまだ追いついて無いんだ。だから、それが追いつくのを待ってる」
「どうしたら、追いつくの?」
「チィ、焦らなくても良いよ。ゆっくりで。チィとトトはもう真名の契約で結ばれてる。ずっと一緒だからチィの早さで良いんだ」
「…また、分からない事が有ったら聞いても良い?」
「ああ、もちろん」
「ありがとう、トトさん…」
「チィ…、何で泣いてるの?」
「分かんっ、無いっ…」
「大丈夫。何も心配することは無いよ。トトがいつも側に居て守ってあげるから」
「うっ、うぅ…」
急に泣き出してしまったチィの顔をフェンリルの舌でペロペロ舐めて慰めた

余りに悲し気だったので獣化を解きギュッと抱きしめた
「どうした?さっきの成長の話?不安にさせちゃった?」
「違う、違う…チィ、分からないことだらけで…うっ、うっ、ごめんなさい、トトさん…」
「何も謝ることなんて無いよ。チィ、トトはどんなチィも大好き、いつも言ってるだろう?」
「でも、っ、チィ、早く、心も成長、させたいっ、うっ」
「ごめん、泣かせるつもりは無かったのに。チィ、本当にトトはどんなチィも好き。それとずっと一緒。これだけは忘れないで」
「うんっ」
背中でポンポンとリズムを取ってやりチィを落ち着かせた
「トトは悪い人だな。チィの泣いてる顔も好きなんて」
チュっと瞼にキスをした
「ふふっ、チィは泣いてる顔も笑ってる顔も怒ってる顔も全部全部可愛い。可愛いくて前チィが言ってたみたいにはむってしたくなる」
「…ほんと、う?」
「ああ、本当だよ」
「チィも、チィも、トトさんの、顔全部全部好き!」
「ありがとう、チィ」
少し泣き止んだチィにチュっと啄むキスをした

身体がいつまでも小さい事で泣いた事の無いチィが心の成長を望み泣いた
心の変化の現れだった

あの日宰相と騎士隊長にチィの全てを話した
二人は驚きを見せたが直ぐにそれを受け入れてくれた
チィの話を聞き何とかカシャバルトに行く同意を得たが共に騎士団を派遣するときかなかった
やはり早々に出立するしかないな

ラルフは眠りながら涙を流すチィの額に口付けた


日の登り切らないまだ薄暗い時間、ラルフはチィに呼び掛けた
「チィ、寝てるところごめん。昨日のだけど、早速向こうに行く。ギルドの依頼の時と同じように支度してくれる?」
「トトさん、おはよぅ…。うん、分かった…」
目をしょぼしょぼとさせながらチィは返事をした

城の裏手の林へ続く道をフェンリルの姿をしたラルフはチィを背中に乗せ走り始めた

夕方過ぎフェンリルの早さであと三分の一の距離となった所でチィが言った
「トトさん、…これ以上駄目。小鳥さん達が行ったら駄目って言ってる」
「チィ、小鳥達は何て?」
「真っ黒なのが広がってるって…。自分達も向こうには行けないから行ったら危ないって」
「真っ黒な物…。それを取り除く為にも向かわなければならないんだが…。チィ、少し寄り道しよう」
「どこに行くの?」
「一番近い所に信頼出来るギルドがあるからそこに寄る」

そう告げると方角を少し変え再び走り出した


辿り着いたギルドで改めて話を聞く事にした

「ラルフ!えらい別嬪さん連れて…ってもしかしてチィ?!」
「ギルド長、久しぶり。来て早々だが、俺達だけで話せるか?」
「…分かった。奥へ行こう。…にしても昔っからちっこくて可愛いチィがなぁ…大人に…ラルフの匂い付けまでされて…」
バッファロー獣人のギルド長はモサモサの髭を忙しなく弄った
「まさかなぁ…チィがなぁ…」
「ギルド長さん、チィはトトさんの番いなの」
「ああ、チィは唯一無二の番いだから大丈夫だ」
「いや、大丈夫と言われても…でも大人になってっから、別に大丈夫なのかぁ…。お、ここだ」

奥の部屋まで案内し、やっと落ち着いてきたギルド長だった

「早速だが、例の伝令を貰った件だが、その後何か情報はあったか?」
「いや、それがよぉ、向こうから最後に戻ってきたギルド員が変なこと言い出してよぉ」
「変な?」
「ああ、ある日教会の者を名乗るもんが水を綺麗にするとかで、水に何か入れる儀式のようなことをし始めたらしいんだよ。そしたら、数日もしない内に、水場という水場から黒い霧のようなもやが発生して、それがどんどん街を覆っちまったらしいんだよ。バタバタと倒れていったもんは黒斑病のように身体が黒くなっていくらしいんだが、黒斑と違うのは全身が墨みたいに真っ黒になるってそいつは言うんだよ。黒い霧も聞いたことねぇし、墨みたいに真っ黒になる病気も聞いたこともねぇ。だが、そいつの怯え方見てっとどうやら本当らしくてな」
「そのギルド員と話せるか?」
「ああ、今は依頼も受けてねぇようだから、部屋に居る」

チィを連れそのギルド員の部屋へ向かった
「トトさん、チィ、黒斑病に似てるなら、何が効くか分かるかもしれない」
「うん、そうだね…。だけど、もう少し話を聞いてみよう」
そう言ったラルフの顔は険しかった




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