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「では、第一回元悪役と見習い魔女の集いを始めます。………どうしました、皆さん?」

「「「…………。」」」

ダイニングテーブルを囲み今後の話し合いを始めた四人
ビクトリア、セーラ、マリアの三人は苦々しい顔をした

「ロッテさん…、悪役と言うのはちょっと…」

「悪役なんて…酷い…」

「私、悪女なら許せますわ」

順に、戸惑うセーラ、半泣きのマリア、何故かどや顔のビクトリア

「な、なら悪女に直します…」

「それに貴女だけ"違いますよ"感があって何だか許せませんわ」

「「ええ、そうですね」」

腕組みをし顎をツンと持ち上げたビクトリアに同意し、うんうんと頷く二人

「…だって、わたし前世の記憶無いし…悪女とは程遠いと言うか…」

「でも、ロッテさんも選ばれた四人の中に入ってるから、記憶が無いだけよ」

「でもロッテさんに悪女と言うのは確かに似合いませんわね」

「ロッテは悪女とは真逆な感じですもの」

「ひどーい!」

口を尖らせたロッテを見て三人はクスクスと笑った

「こんな状況ですが、久しぶりに笑ったような気がしますわ」

「私も」

「わたしも」

「…、まぁ、皆さんに笑いを提供出来たのなら良しとします…」

少しぶうたれたロッテだったが、その顔はどこか嬉しそうだった

ずっと師匠と二人切りの生活で、外の世界の人間と会うことはほとんど無く、薬草から作った薬を卸す店の者や、食材や日用品を売っている店の者と話すぐらいで、同じ年頃の娘との交流はこれが初めてだった

一頻り笑い終えた後、皆一様に沈黙した

「で、…。どうやって逃げ切りますの?」

「使いますか…、薬…」

「また処刑になるのは嫌です…」

「処刑の方がまだましです!男達に…あんなことされるぐらいなら…」

「はぁ…、堂々巡りですわね…」

「あのぉ、因みに、皆さん、前のようになりたく無いとして、希望としてはどんな風に過ごしたいんですか?将来の夢とか…?」

「私は、この国の癒し手としてこのまま聖女で居続けたいです」

「私もこの国の為、国政に携わる官僚になるつもりですわ」

「わたしは、学園に通ってもいませんが、将来、教師になりたいです。今世は独学なので、道のりは険しいですけどね」

「ロッテさん、貴女は?」

「前の記憶が無いので比べるとかは出来ないけど、ん~、あんな師匠でも頼りにならない訳では無いし、依頼をこなしたり、薬草を煎じて薬を作ったり、細々と暮らしていく今の生活に不満は特に無いかなぁ…。あ、でも、もっと外の世界を見てみたいかも…。夢が無さ過ぎかな?」

「よろしいんじゃなくて。外の世界に行って見聞を広めるのもきっと役に立つことですのよ」

皆とは違い、これと言って将来の希望など無かったが、馬鹿にされるどころか受け入れてもらえてロッテは少し照れて頬をぽりぽりとかいた

「ん~、でも、本当にどうしましょうね?聖騎士のカイトさんでしたっけ?その人の結婚の申し込みは何か意図でもありそうなんですか?」

「…今のカイトは裏の有るような人では無いわ。でも、先ほども言った通り、私は聖女を続けたいの。物凄く努力してやっと選ばれたんだもの」

「セーラ、貴女のカイト様へのお気持ちはどうなのかしら?」

「……彼は今世でも素敵な人よ…。でも、カイトの手を取ればまた私は間違ってしまうかもしれない…」

「そんなこと分からないじゃないですか!自分が間違わないって、強い意志が有れば!」

ダンっ!と机を叩きマリアが立ち上がった

「マリア、落ち着いて。貴女こそジェイド殿下へのお気持ちはもう無いのしら?」

椅子に座り直したマリアは俯きながら悲し気な表情を浮かべた

「ジェイド様は…、きっと恨んでるから…」

「そんなの分かりませんわ!恨みを晴らそうと言うのなら、王族の権力でも使って、それこそ冤罪でもでっち上げて貴女を捕まえてる筈なのでは?」

「そうですよね、自ら下町までお忍びで探しに来てたことを考えると恨みでは無いのかもしれないですわね…」

「違う!違うったら!前もそうだったけど、わたしの事を本気で好きだった訳じゃ無い!物怖じし無いわたしが珍しかっただけ…」

「でも、マリアはジェイド殿下を今もお慕いしてるのではなくて?」

「そう言う、ビクトリア様こそ…。リヒテルさんの事好きですよね?」

「なっ!何を仰ってるの?リヒテルは暗殺者よ!恐怖することは有っても、想いを寄せるなんて有り得ませんわ!」

「ん~、ビクトリアさんも暗殺者と分かってるなら、罪人として突き出せば良いのにして無いよね?」

「だ、だって、彼が今世で罪を犯してるかなんて知りませんもの!」

「そう言えば、ロッテは前の記憶が無いとしても、どなたか最近接触してきたり、様子の変わった方はみえないの?」

「…移動はホウキに乗ってるから誰かと接触するようなことは無いし…、あっ!そう言えば師匠が気持ち悪いほどベタベタしてきました!」

「ずっと一緒に暮らしてらしたのよね?今まではその様な事無かったのかしら?」

「はい、元々お気楽師匠でして、専ら興味はお姉さま方で、弟子のわたしに可愛いなんて言ってきたことも無かったのに、ここ最近はやたら可愛いだの抱っこだの…」

「「「……………。」」」

「み、皆さん…?そんなじと目で見ないで…」

「…先ずは、マリア!貴女ジェイド殿下と一度話し合いをしなさい!私も公爵家の者として立ち会いますわ」

「私も立ち会うわ。殿下が変な動きをしたら聖女として陛下のお耳に入れると言えば良いわ」

「わたしも!わたしもいざとなったら、何かの魔法で助けるから!」

「…でも、どこでお会いすれば…」

「あ~、その事なら今から全員城に行ってもらって良いかな?」

「!!!師匠!」

いつからそこに居たのか師匠が入り口にもたれてこちらを見ていた

「城とは…どういうことですの?」

「向こうに行けば分かるから。とりあえず四人を全員転移させる前に少しロッテと二人にしてもらっても良いかな?」

「…ええ」

「ロッテ、ちょっと」

ロッテは席を立ち、おいでおいでと手招きする師匠の元へ行った

「ロッテ、私の魔力量でも四人いっぺんには無理だから、ちょっと魔力循環で分けてもらっても良い?一回経験済みだから少しは要領わかったよね?」

「はい、大丈夫だと思います」

「娘さん達、ちょ~っと待ってて」

部屋に元悪女三人を残しロッテの肩を抱き寄せて部屋を出て行った


「だ、大丈夫かしら?」

「最近様子が変だと言ってらしたけど…」

「何も無いわよね…」

「「「……………。」」」

「余りにも戻りが遅いようなら、三人で様子を見に行きましょう!」

「そうね」

「そうですわね」

三人は落ち着かなく冷めてしまったお茶に手を伸ばし、ごくごくと渇き始めた喉を潤した

「…城で一体何が成されるんでしょう」

「ま、まさか、皆一斉に断罪…なんてことございませんわよね?!」

「わたし達何もしてません!だ、大丈夫です!…大丈夫デス…」

「あ、ごめん、ごめん、心配させちゃったね。大丈夫、断罪とかじゃ無いから」

ぐったりとしたロッテを抱きかかえながらロッテの師は戻ってきた

「ロッテ!」
「ロッテさん!」
「な、何が…」

「皆んなで転移するのに、ロッテの魔力を分けてもらわないといけなくてね。魔力切れ起こしたわけじゃ無いから安心して。慣れてないからこうなっただけ。それじゃぁ、早速だけど」

詠唱を始め床に大きな魔法陣がキラキラと光を放ち現れた
三人の元悪女達はそれを認識するや否や、それまでの空間とは異なる音の響きがある場所に居た

彼女等の前に居たのはこの国の王と前世で関わりの有った男達

突然有無を言わさず連れて来られたこの状況と、これからの不安に、意識せず三人は身を寄せ合っていた




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