囚われた王子

5.

スタンは女との逢瀬が終わるといつも自室で目が覚める

身体は現実だと云うが、目覚めると自室なのだ

自分がおかしくなってしまったのかと思い自嘲した

「どうかしているな。メリッサに誠実で無ければ…。考えるのもよそう。」

スタンは政務をこなし始めた



………


トラバスが気分転換がてら、新たな品種の薔薇を見に行かないかと誘った

アクセサリーにも薔薇を模した物を使うほど、メリッサは薔薇が好きだ

満面の笑みを浮かべ喜ぶメリッサをトラバスは微笑ましく見ていた


薔薇園でメリッサは興奮したようにたくさん語った
お伽話の"蔦薔薇と魔女"に出てくる、女神の蔦薔薇という薔薇が1番好きなこと
香りを楽しむならフェイル伯爵の改良した薔薇が最高なこと
幼な子のように可愛らしく語るメリッサの頬に思わず口付けた


驚いて目をまん丸になったメリッサを見て、トラバスはクスクスと笑い出した

「もう！からかわないで下さい！トラバス様！」
「ふふっ、メリッサは本当に可愛いね」

メリッサは近くの薔薇よりも赤くなった