春を待つ君に

まめ

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桜はやはり咲いてはいなかった
それでも2人はずっと桜の前に居続けた

「…リコ、俺、…リコが…、リコが笑った顔が好きだ。ずっと笑顔で居てくれ」
「…そ、その、約束、ま、守れる、かなぁ…」グスッ

ネオは泣き出した莉子の唇に人差し指をちょん、と当て、
「守れるさ、笑顔で送ってくれるだろう?」
莉子はコクリと頷いた



…………


ネオが元の世界に戻る日になった
同じ住まいの住人達は2人に気を使い、前日にお別れの挨拶を済ませ、普段通りに出掛けて行った

ネオは泣き出しそうな莉子の両手を握り、優しく微笑んでいた
その時が来て段々と身体に靄が掛かったようになり始めた時、ネオは最後の言葉を告げた

「…リコ、先に向こうで待ってる。必ず探すからな。ここで半年頑張れ、ずっとリコを想ってる…リコ、ありが………

「ネオ!ネオ!やだ、やだよ、ネオ!……」


……莉子の声はもうネオには届かなかった




莉子は何日もネオの椅子で過ごした

対で作ると言っていた椅子は未完成のまま莉子の部屋に置かれていた

ネオを描いた絵を見て泣きながら眠った日もあった

ずっと何日もネオの絵を見ていた莉子は、ネオに絵を描き続けるよう言われたこと、笑顔で居ることを約束しただろう?と語られているように感じ、やっと部屋を出ることができた

そこから半年間、ネオと訪れた場所、新たに1人で訪れた場所の人々や街並みをスケッチブック何冊も描いた
時には描いた人にプレゼントもした


この世界に来てからもう間も無く三年…
私もこの世界から旅立つ時だ
元の世界ではやることがたくさん待ってる!
ネオに会った時恥ずかしくない自分で居たい!


莉子はその日までずっと笑顔で居続けた






……………



ピピ、ピピピピ、ピピピピピピ

ー莉子~!起きなさ~い!学校遅刻するわよ~!

「はーい!もう、起きた~!お弁当出来てるー?」



「莉子、寝癖!ほら、ちゃんと直して!」
「お母さん、時間無い!行ってきまーす!」
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