春を待つ君に

まめ

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キーニさんが元の世界に戻る時が来た
湿っぽいのは嫌だから明るく祝って欲しいというキーニさんの希望に沿って共同スペースを飾り付け賑やかしくした

「ヒィヤルフに来られて本当に良かった!皆にも会えたし!私凄く幸せよ!ありがとう!」

元の世界には持っていけないことを分かっていたが、莉子はキーニに絵を手渡した
「キーニさん、これ…」
「リコ、ありがとう…、皆良い表情に描けてるわ…
「キーニさん!!!」

そのまますっと姿が薄くなりやがて見えなくなった…

キーニの居た場所にヒラリと莉子の絵がその場に残った
そこにはキーニを中心に住人達の笑顔で溢れた温かい住まいが描かれていた…

莉子はその絵を両手で抱きしめホロホロと涙を流し続けた


………


「そうか、キーニさん戻ったんだ…」
「うん、皆でお祝いして笑顔で送るつもりだったんだけど…やっぱり泣いちゃった…」
ネオは莉子の頭をポンと撫でた

「リコ、明日、工房に来てくれないかな」
「ん?急に改まってどうしたの?」
「…、必ず来て」
「うん、…分かった」
いつになく真剣なネオに莉子は落ち着かない気持ちになった



………



工房にはいつも居たガハトの姿が見えなかった
莉子に気が付いたネオは布を掛けていたところに手招いた
「やっと完成したんだ。リコの椅子だよ。さぁ、見てみて」
バッと布を外すと、そこには背もたれに桜の透かし彫り、猫脚のロココ調を思わせる椅子があった
「素敵!素敵だよ、ネオ!この桜もこの膝起きも脚のカーブも凄く優雅で、前にも言ったけど使わずにずっと眺めておきたいぐらい!」

「………リコ、ガハトさんも先日戻ったんだ…、もし、もし、嫌で無ければ、キーニさんも戻ったことだし、今のところから、ガハトさんの部屋に移ってこないか?」
「え?」
「………、リコ、俺はあと…あと半年なんだ。リコさえ良ければ、少しの時間でも一緒に過ごして欲しい…、ここを離れる時、リコに見送って欲しいんだ…ダメかな…?」
「え、あの…、ネ、ネオ、急に淋しくなっちゃったの?」
「……、この椅子を作っている時に思ったんだ…、向こうに戻って、辛いことがあってもリコの笑顔を思い出せば頑張れるんじゃないかって…、ダメかな…」
「ロ、ロザリさんもキーニさんも居ないから、私が勝手に決めていいのかも分からない…で、でも、ここの制約に無ければ、私もネオと、ネオと一緒に居たい!」
「あー、なんか、あれだ、恥ずかしいな…」
「わ、私も…」




莉子は今の住まいからガハトが住んでいた部屋へと移ることになった
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