春を待つ君に

まめ

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街の中に慣れてきた莉子は1人で変わった建物やそこで働く人などをスケッチし始めた
鳥かごのような物がぶら下がった木々のところでスケッチをしている時だった
バサッバサッと頭上から羽ばたきの音がしてふと見ると鳥のような羽を付けた男性が降りてくるところだった

その羽の美しさに見惚れていた莉子は無意識にその男性をスケッチし始めた
ふと見ると男性の羽の付け根に大きな傷が見受けられた
「初めまして、お嬢さん」
「は、初めまして…すみません、勝手に描いて…」
「いや、問題ないよ。私を描いてくれていたんだろう?是非見せてくれないか?」
「はい…」
描き始めたばかりのラフ画だったが、望まれるままに見せた

「…ありがとう。その絵に色を付けてまた見せてくれないだろうか?仕上がったところを是非見てみたいんだ」
「…お時間を頂いても?」
「ああ、もちろんだとも。私はいつもこの辺りを飛んでいるから、いつ来てくれてもいい」
「分かりました…、あ、あの、私、莉子と言います。あなたは?」
「ああ、すまない、私はジーンだ」
「では、ジーンさん、仕上がったらまた持ってここに来ます」
「楽しみにしているよ」
そう告げるとジーンはまた羽を広げ、飛び立って行った
その優雅さにジーンの姿が小さくなるまで莉子はずっと見続けた


住まいに戻り何故か急がなくてはいけない気がして、必死に絵を仕上げに掛かった
「リコ、食事はちゃんと取らないとダメよ」
「はい、すみません、キーニさん。あと少しで仕上がるので…」
「…ここに置いておくからちゃんと食べてね」


三日ほど掛けて納得のいく仕上がりになり、莉子はジーンの元に訪れた

出会った時と同じように空からバサッバサッと羽ばたきの音共にジーンは現れた
「リコちゃん、仕上がったんだね。私の我儘ですまなかったね」
「いえ、自分では納得のいく仕上がりになったんですが…どうですか?」
恐る恐るジーンに絵を差し出したが、ジーンはそれを見て悲しそうな嬉しそうな表情でそれを見つめていた
「あの、…、何か気に入らなかったですか?」
「いや、凄く嬉しいよ。ありがとう。この絵を頂いても?」
「も、もちろんです!気に入って頂けたのなら、嬉しいです」
「…そうだ、お礼にリコちゃんに空を見せてあげるよ」
「え?」
言うが早いか、フワリと莉子を抱きしめ空へジーンは飛んだ

初めは怖くて目を開けられ無かったが段々と慣れてそっと見てみると、そこにはヒィヤルフの街が一望出来た
幻想的な空からのヒィヤルフは街全体が光っているように見えた


「ありがとうございました。素敵な景色が見られて楽しかったです」
「いえ、こちらこそ、こんなことでしかお礼が出来ずすまないね。また空を飛びたくなったらここへおいで。私はあと半年はここに居るからね」

素敵な景色の印象は莉子の心に深く残った
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