春を待つ君に

まめ

文字の大きさ
上 下
8 / 23

8.

しおりを挟む
「リコ今日は何処に行くの?」
「おはようございます、キーニさん。今日はネオが街のおススメ場所を案内してくれるって言うから、行って来ようと思います」
「ネオくんて、この間の子ね。ふふっ、早速仲良くなったみたいで良かったわね。楽しんでらっしゃい。帰ったら私にも聞かせてちょうだいね」
「はい、行って来ます」

家具工房に向かって歩いて行くと手前の鍛冶屋でロザリが挨拶をしているところだった
「皆も世話になったね!私も来週元の世界に戻ることになった!私が案内した者達へ、先に挨拶を済ませて置こうと思ってね!」
大きな声を張り上げていたロザリだったが、職人達はそちらを見ずに作業を続けながら、頷いただけだった

「ロザリさん!あの、先日はありがとうございました!」
「ああ、リコ!ここでは聞き辛いだろうから、家具工房の方へ行こう!」


「リコ、少し慣れてきたようだね。安心したよ」
「はい、先日記録書を見てきて…」
「そうか…。私の記録はどうなるのかな?まぁ、自分で見ることは出来ないがね」
「ロザリさんは、ここでの役目は何だったんですか?」
「ん?私かい?私はそのままさ。案内役。リキドにこの役目を指示された時は訳が分からなかったが、ふと思い出したことがあってね…。今ならその意味が分かったような気がするよ」
「それは、どういう…?」
「ああ、リコも直ぐに分かるさ。心が穏やかに過ごせるこの場所は今にしてみれば三年間では短いぐらいだが、元の場所には家族も居るからね。長いような短いような…、来た当初はあれだけ待ち焦がれていたのにな。ふふ。不思議だね。さて、そろそろ次の場所へ挨拶に向かうとするか。リコ、それでは」
ロザリは紳士的な礼をして去って行った

キーニ達と暮らして居る家へ案内された時は、その後ろ姿に取り残されたように感じたが、その日は穏やかに見送ることができた

「リコ、ごめん、待たせたね」
「ううん、私の案内人だったロザリさんと話していたの。来週戻るんだって挨拶していたとこ」
「そっかぁ、戻るのかぁ…。俺はこの椅子を仕上げるまでは戻りたく無いなぁ」
「え?仕上げられなかったら、ずっとここに居てもいいの?」
「んー、三年間ていう区切りがあるから頑張れるのかもしれないか…。そうだなぁ、うーん」
顎に手を当て真剣に悩み出したネオを見て莉子は吹き出してしまった
「やだ、ネオったら」
「何だよ、ヒトが真剣に考えてるのに…ぷっ、でもそうだな、俺達には期間何か決められないしな。ほら、行こう!」
「うん!」
記録書を見に行った時同様、2人は手を繋ぎながら街へ向かった
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛する義兄に憎まれています

ミカン♬
恋愛
自分と婚約予定の義兄が子爵令嬢の恋人を両親に紹介すると聞いたフィーナは、悲しくて辛くて、やがて心は闇に染まっていった。 義兄はフィーナと結婚して侯爵家を継ぐはずだった、なのにフィーナも両親も裏切って真実の愛を貫くと言う。 許せない!そんなフィーナがとった行動は愛する義兄に憎まれるものだった。 2023/12/27 ミモザと義兄の閑話を投稿しました。 ふわっと設定でサクっと終わります。 他サイトにも投稿。

私のことを愛していなかった貴方へ

矢野りと
恋愛
婚約者の心には愛する女性がいた。 でも貴族の婚姻とは家と家を繋ぐのが目的だからそれも仕方がないことだと承知して婚姻を結んだ。私だって彼を愛して婚姻を結んだ訳ではないのだから。 でも穏やかな結婚生活が私と彼の間に愛を芽生えさせ、いつしか永遠の愛を誓うようになる。 だがそんな幸せな生活は突然終わりを告げてしまう。 夫のかつての想い人が現れてから私は彼の本心を知ってしまい…。 *設定はゆるいです。

性癖の館

正妻キドリ
ファンタジー
高校生の姉『美桜』と、小学生の妹『沙羅』は性癖の館へと迷い込んだ。そこは、ありとあらゆる性癖を持った者達が集う、変態達の集会所であった。露出狂、SMの女王様と奴隷、ケモナー、ネクロフィリア、ヴォラレフィリア…。色々な変態達が襲ってくるこの館から、姉妹は無事脱出できるのか!?

【完結】忘れてください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。 貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。 夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。 貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。 もういいの。 私は貴方を解放する覚悟を決めた。 貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。 私の事は忘れてください。 ※6月26日初回完結  7月12日2回目完結しました。 お読みいただきありがとうございます。

最近様子のおかしい夫と女の密会現場をおさえてやった

家紋武範
恋愛
 最近夫の行動が怪しく見える。ひょっとしたら浮気ではないかと、出掛ける後をつけてみると、そこには女がいた──。

運命の番?棄てたのは貴方です

ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。 番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。 ※自己設定満載ですので気を付けてください。 ※性描写はないですが、一線を越える個所もあります ※多少の残酷表現あります。 以上2点からセルフレイティング

【完結】王太子妃の初恋

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
カテリーナは王太子妃。しかし、政略のための結婚でアレクサンドル王太子からは嫌われている。 王太子が側妃を娶ったため、カテリーナはお役御免とばかりに王宮の外れにある森の中の宮殿に追いやられてしまう。 しかし、カテリーナはちょうど良かったと思っていた。婚約者時代からの激務で目が悪くなっていて、これ以上は公務も社交も難しいと考えていたからだ。 そんなカテリーナが湖畔で一人の男に出会い、恋をするまでとその後。 ★ざまぁはありません。 全話予約投稿済。 携帯投稿のため誤字脱字多くて申し訳ありません。 報告ありがとうございます。

嘘はあなたから教わりました

菜花
ファンタジー
公爵令嬢オリガは王太子ネストルの婚約者だった。だがノンナという令嬢が現れてから全てが変わった。平気で嘘をつかれ、約束を破られ、オリガは恋心を失った。カクヨム様でも公開中。

処理中です...