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「これを君に与えよう」
リキドに言われたのはそれだけだった
「他に、他に何か指示は無いのですか?」
「…そうだな、好きな時にこれを使えばいい、とだけ指示しておこう」
渡されたのは、手のひらに収まる小さな壺が五つと筆が数本、パレットのような物、スケッチブックだった
「好きな時にって…何で私はここに集められたんですか!何も描きたくなんかないし、とにかく家に帰して下さい!」
「…私には君を帰す術が無い。時が来るのを待ってもらうしか方法は無い。では、私はこれで」
「ま、待って、本当に、本当に三年待てば帰れるのかだけでも教えて!」
「ああ、必ず皆戻っているようだ」
振り返り際にそう答えてリキドは去った
莉子は残された道具達を与えられた部屋に運び戸棚の奥にしまった
「リコ、ようやくあなたも落ち着いて来たから、そろそろこの街を案内するわ。この街は色んな世界の者達が作って出来た街だからチグハグだけど、慣れれば楽しいわよ」
少しでも早く帰れるヒントがあるかもしれないと案内を受けることにした
慣れ親しんだ景色に混ざり、水の塊で出来た建物の中を時計の中身のように歯車がいくつも合わさり動いている場所、いくつもの木に人が住めるほどの大きさの鳥籠のような物がぶら下がっている場所、何度も足を止め見入った
そこに居る人達も仕事をしているであろう人、歌を聴かせる人、食事を取ってる人らがそれぞれに過ごしていた
莉子と同じ容姿の人達もたくさん見受けられたが日本人らしき人は居なかった
「キーニさん、この街はどのぐらいの広さなんですか?」
「んー、多分二日あれば周れると思う。私も全て周ったわけではないから分からないけど」
「記録書を見たと前におっしゃってましたが、私も見ることはできますか?」
「申請を出して、予約が取れれば直ぐに見られるわよ」
「そこへ今から行くことは?」
「図書館と併設されてるから、行くことは可能よ。行ってついでに申請を出したらどうかしら?」
「…はい。お願いできますか?」
「もちろんよ。少し歩くからその前に食事でもしましょう」
鍛冶屋のような場所の奥に家具作りの工房らしき所がありその一角に食事処があった
「チグハグと言った意味が分かったかしら?ふふふ、ここにこんな場所が?って思うところはまだまだあるのよ」
「…はい。キーニさんが居ないと直ぐに迷子になってしまいそうですね…」
「ふふふ、しばらく慣れるまでは私が付いて行ってあげるから安心して。それよりもあなたに合う食事メニューはこれね。さぁ、どうぞ」
それは全て日本語で書かれたメニューだった
莉子はまた涙が溢れた
リキドに言われたのはそれだけだった
「他に、他に何か指示は無いのですか?」
「…そうだな、好きな時にこれを使えばいい、とだけ指示しておこう」
渡されたのは、手のひらに収まる小さな壺が五つと筆が数本、パレットのような物、スケッチブックだった
「好きな時にって…何で私はここに集められたんですか!何も描きたくなんかないし、とにかく家に帰して下さい!」
「…私には君を帰す術が無い。時が来るのを待ってもらうしか方法は無い。では、私はこれで」
「ま、待って、本当に、本当に三年待てば帰れるのかだけでも教えて!」
「ああ、必ず皆戻っているようだ」
振り返り際にそう答えてリキドは去った
莉子は残された道具達を与えられた部屋に運び戸棚の奥にしまった
「リコ、ようやくあなたも落ち着いて来たから、そろそろこの街を案内するわ。この街は色んな世界の者達が作って出来た街だからチグハグだけど、慣れれば楽しいわよ」
少しでも早く帰れるヒントがあるかもしれないと案内を受けることにした
慣れ親しんだ景色に混ざり、水の塊で出来た建物の中を時計の中身のように歯車がいくつも合わさり動いている場所、いくつもの木に人が住めるほどの大きさの鳥籠のような物がぶら下がっている場所、何度も足を止め見入った
そこに居る人達も仕事をしているであろう人、歌を聴かせる人、食事を取ってる人らがそれぞれに過ごしていた
莉子と同じ容姿の人達もたくさん見受けられたが日本人らしき人は居なかった
「キーニさん、この街はどのぐらいの広さなんですか?」
「んー、多分二日あれば周れると思う。私も全て周ったわけではないから分からないけど」
「記録書を見たと前におっしゃってましたが、私も見ることはできますか?」
「申請を出して、予約が取れれば直ぐに見られるわよ」
「そこへ今から行くことは?」
「図書館と併設されてるから、行くことは可能よ。行ってついでに申請を出したらどうかしら?」
「…はい。お願いできますか?」
「もちろんよ。少し歩くからその前に食事でもしましょう」
鍛冶屋のような場所の奥に家具作りの工房らしき所がありその一角に食事処があった
「チグハグと言った意味が分かったかしら?ふふふ、ここにこんな場所が?って思うところはまだまだあるのよ」
「…はい。キーニさんが居ないと直ぐに迷子になってしまいそうですね…」
「ふふふ、しばらく慣れるまでは私が付いて行ってあげるから安心して。それよりもあなたに合う食事メニューはこれね。さぁ、どうぞ」
それは全て日本語で書かれたメニューだった
莉子はまた涙が溢れた
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