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4.再開
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「あら、ステラ、刺繍を刺す手が止まってるわよ。心ここにあらずね。何かあったのかしら?」
「…母様。いえ、何でもないわ。そうだわ、母様糸が足りなくなったから買いに行ってもいいかしら?」
あの日から、ステラは毎日レイのことが頭から離れなかった
バークスやラミア達にレイとの出会いを打ち明け、尚更自分があの騎士レイに心を奪われたことを実感していた
街に行けばまたレイに会えるのではないかと淡い期待をしていた
「侍女に使いを出したら?私は午後からお客様を招いているから付き添えないし…」
「母様、追加する別な色も選びたいの。1人では行動しないし、護衛も1人連れて行くから…ねぇ、母様お願い」
ステラのお願いに折れ、侍女と護衛を付けることと裁縫店以外には行かないことを約束させ、外出の許可を母ヘイリンはしたのだった
「いいこと、必ず直ぐに帰るのよ」
「分かってるわ、母様。では、行って参ります」
ヘイリンは心配気な顔のままステラを見送った
馬車を停め、1本中に入った裁縫店までずっとキョロキョロとしながら歩くステラに侍女は怪訝そうな顔で諌めた
「お嬢様、先程からどうされたんですか?はしたないですよ」
「…何でも無いわ」
そう簡単には会えないかと諦めかけた時、レイ達見回り騎士3人が角を曲がって現れた
「あっ!」
思わず声を出したステラに、おや?という顔でこちらに気が付き騎士達は近付いてきた
「ノアール様、先日は助けていただきありがとうございました」
「ああ、あの時のお嬢様。あの時は本当にすまなかったね。ジャスティン、改めてお嬢様にお詫びを」
レイしか目に入って居なかったが騎士の1人が先日の青年ジャスティンだった
騎士服の首元を少し着崩していたジャスティンはさっと整え、ステラに向き直った
「可愛い花、先日は酔っ払ってすまなかったね。あれからこのレイにこっぴどく説教食らったよ。もう昼に響くほど酒は飲まないことを約束させられてね。身体に血の代わりに酒が流れてるとまで言われてる私が禁酒中さ。ということで、もう安全だから今度お茶でもしないかい?」
さっと、手を差し出したジャスティンの手はバチンという音と共にレイに払われた
「ジャス!いい加減にしないか!まだ反省してかいのか?騎士の恥を晒さないでくれ」
「おいおい、レイ、恥とは酷いな。お前は硬過ぎるんだよ」
戯けてみせたジャスティンにステラはクスクスと笑い出した
「騎士様、先日は本当に怖かったんです。騎士様とお茶はご遠慮しますが、ノアール様には先日のお礼をさせていただきたく思います」
「あちゃあ…ジャスティン、お前損な役割だな。レイに美味しいとこ取りされてるじゃないか」
もう1人居た騎士に揶揄われたレイは顔を赤らめながら
「お嬢様、民の安全を守るのが私達騎士の仕事です。お気になさらず」
と言い踵を返そうとした
「ステラです!ステラ・ロンシェルです!」
慌てて名を告げたステラにレイはコクリと頷いて2人の騎士を掴むようにして行ってしまった
遠くから「ステラちゃんまたね~」とジャスティンがにこやかに手を振っていた
「お嬢様、一体いつ騎士様とお知り合いに?」
「ふふ、ハンナと居る時にね。このことはお母様には秘密よ。心配なさるといけないから。さぁ、ナンシー行くわよ。刺繍糸の色も決まったから、その色を買うだけ。ふふ、早く行きましょう」
「危ないことは無かったんですよね?お嬢様。奥様に報告するようなことは無いんですよね?お嬢様~」
足早に裁縫店に向かったステラを慌てて追いかける侍女だった
「…母様。いえ、何でもないわ。そうだわ、母様糸が足りなくなったから買いに行ってもいいかしら?」
あの日から、ステラは毎日レイのことが頭から離れなかった
バークスやラミア達にレイとの出会いを打ち明け、尚更自分があの騎士レイに心を奪われたことを実感していた
街に行けばまたレイに会えるのではないかと淡い期待をしていた
「侍女に使いを出したら?私は午後からお客様を招いているから付き添えないし…」
「母様、追加する別な色も選びたいの。1人では行動しないし、護衛も1人連れて行くから…ねぇ、母様お願い」
ステラのお願いに折れ、侍女と護衛を付けることと裁縫店以外には行かないことを約束させ、外出の許可を母ヘイリンはしたのだった
「いいこと、必ず直ぐに帰るのよ」
「分かってるわ、母様。では、行って参ります」
ヘイリンは心配気な顔のままステラを見送った
馬車を停め、1本中に入った裁縫店までずっとキョロキョロとしながら歩くステラに侍女は怪訝そうな顔で諌めた
「お嬢様、先程からどうされたんですか?はしたないですよ」
「…何でも無いわ」
そう簡単には会えないかと諦めかけた時、レイ達見回り騎士3人が角を曲がって現れた
「あっ!」
思わず声を出したステラに、おや?という顔でこちらに気が付き騎士達は近付いてきた
「ノアール様、先日は助けていただきありがとうございました」
「ああ、あの時のお嬢様。あの時は本当にすまなかったね。ジャスティン、改めてお嬢様にお詫びを」
レイしか目に入って居なかったが騎士の1人が先日の青年ジャスティンだった
騎士服の首元を少し着崩していたジャスティンはさっと整え、ステラに向き直った
「可愛い花、先日は酔っ払ってすまなかったね。あれからこのレイにこっぴどく説教食らったよ。もう昼に響くほど酒は飲まないことを約束させられてね。身体に血の代わりに酒が流れてるとまで言われてる私が禁酒中さ。ということで、もう安全だから今度お茶でもしないかい?」
さっと、手を差し出したジャスティンの手はバチンという音と共にレイに払われた
「ジャス!いい加減にしないか!まだ反省してかいのか?騎士の恥を晒さないでくれ」
「おいおい、レイ、恥とは酷いな。お前は硬過ぎるんだよ」
戯けてみせたジャスティンにステラはクスクスと笑い出した
「騎士様、先日は本当に怖かったんです。騎士様とお茶はご遠慮しますが、ノアール様には先日のお礼をさせていただきたく思います」
「あちゃあ…ジャスティン、お前損な役割だな。レイに美味しいとこ取りされてるじゃないか」
もう1人居た騎士に揶揄われたレイは顔を赤らめながら
「お嬢様、民の安全を守るのが私達騎士の仕事です。お気になさらず」
と言い踵を返そうとした
「ステラです!ステラ・ロンシェルです!」
慌てて名を告げたステラにレイはコクリと頷いて2人の騎士を掴むようにして行ってしまった
遠くから「ステラちゃんまたね~」とジャスティンがにこやかに手を振っていた
「お嬢様、一体いつ騎士様とお知り合いに?」
「ふふ、ハンナと居る時にね。このことはお母様には秘密よ。心配なさるといけないから。さぁ、ナンシー行くわよ。刺繍糸の色も決まったから、その色を買うだけ。ふふ、早く行きましょう」
「危ないことは無かったんですよね?お嬢様。奥様に報告するようなことは無いんですよね?お嬢様~」
足早に裁縫店に向かったステラを慌てて追いかける侍女だった
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