混濁の中に咲くアセビ

まめ

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現れた次のガラス窓

ー「あれは今から愉しみな美貌ですね。母親も王弟殿下を虜にしたと聞きました」

「ヘンリー、エリザベス嬢は王太子殿下の妃候補でもあるのよ」

「殿下のお手付きになる前に、私があれを育てるのも一行では無いですか。それにアネッサが王太子妃の座を狙ってますからね。可愛い妹のために、ライバルを排除してやるのも兄の勤めかと」

「品の無い事を…」

ダンスのパートナーを勤めた帰り、ヘンリーとミネルバ夫人の会話を廊下で聞き、ぐっと唇を噛み締めているヴィンセントの姿

ー「カインズ様はとても優しくて素敵な人だよ…」

滑稽なわたしのヘンリーへの評価は、こだまするように何度か繰り返し、その窓はまた音を立てて消えた




ー「すっかり、男の良さを覚えたようで、こいつやられながら、自分もイキましたよ!」

卑下た笑いに包まれた空間に、蹴破るように現れた数人の騎士とヴィンセント

「エリィ!」

目隠しと口封じの布を充てがわれ、全裸で白濁塗れの男の側で、気を失っているわたし
真っ青な顔で、駆け寄ったのはヴィンセントだった

「まさか、エリィが巻き込まれるなんて…、ごめん、ごめん、エリィ…。怖い思いをさせて…。ごめん…」

「ヴィンセント様、…この者は如何なさいますか」

ヴィンセントがわたしを抱きしめる横で、破落戸達を取り押さえながら憐れむように襲われた男にマントを掛けている騎士

数秒その男の手を握りヴィンセントは騎士に指示した

「…その者に服を着せ、一旦屋敷に連れて行け」

「かしこまりました」

わたしを自分の羽織ってきた上着で包み、ヴィンセントは言い聞かせるようにわたしに言った

「まだ…力が充分じゃなくて、ごめん…。あいつに力を使ったから、直ぐにはこの記憶を消してあげられない…。ごめん、エリィ…。少しだけ、…少しだけ我慢して…。エリィを守るためだったのに…ごめん…」

胃の物が込み上げるような光景に目を塞ぎたいのに、それを許さないかのように、入れ替わりに次の窓が現れた


ー「ヴィンセント、エリザベス、二人で私を悦ばせてみろ」

寝台に腰掛け、脚を開き、ヴィンセントとわたしを跪かせて何かをさせている

「ああ、幼いながらも、あれの美貌を受け継いだだけはある」

薄笑いを浮かべ怯える二人の頭を撫で続けているジェノライド

「エリザベス、膝に乗れ」

ジェノライドに従い、力無く片足に腰を下ろすわたしの顔は恐怖に支配され、かたかたと震えている
徐に寝着の裾から手を潜らせ、わたしの足の付け根辺りを弄っている

「や、止めて下さい…。僕が、僕がエリィの分まで…

「誰が、口を離して良いと言った!お前は続けていろ!」

頭を撫でていた手はぐっとその頭を押さえ込むように、自由を奪った

「ヴィー!」

「お前達は誰に生かして貰っているのか分かっているのか?まだまだ、教育が足りないとみえる」

悪魔のようなその支配者の顔は、わたし達から人としての尊厳を奪っていった

「全部飲み干せ、ヴィンセント」

嘔吐きながら、ヴィンセントは喉を鳴らす

二人の目から光が失われていった




ー「身体が大丈夫そうなら、サラのことで頓挫していたお前達の教育を再開しようと思っている」

隣に立つヴィンセントが、ビクッと身体を硬らせたように見えた

記憶にあるあの場面

「ジェノライド様!エリィはまだ体調が優れません!まだ無理だと思います」

そのまま部屋に残されたヴィンセントを目線で指示し、寝台へと向かわせた

「エリザベスの分まで私を悦ばせると前から言っていたな。その言葉通り、今日は二人分愉しませてもらうぞ。脱げ、ヴィンセント」

着ていた物を全て脱ぎ去り、ヴィンセントはジェノライドに向き合った
何かを覚悟したような、だが、怯えたような顔をしている

「受け入れる準備をしろ」

黙って頷き、投げ渡された棒状の物を手に取った
苦痛に満ちた顔で必死に何かを耐えている

「良いぞ、ヴィンセント、もっとそれを動かしてみろ」

ぼやけた視界の中、ヴィンセントを眺めジェノライドも身に付けていた物を目を離さずに一枚、一枚脱いでいく

「そろそろだな。四つん這いになれ」

そして突然真っ黒な靄が視界を遮り、途切れ途切れに痛みに苦しむヴィンセントの声と水音が長く長く続いていた

ジェノライドの荒い息が響き、やがてその暗闇は静けさに包まれた

〈男のヴィンセントで、これだけ善いのだ。エリザベスはどれだけ私を悦ばせてくれるのであろうな〉

頭の中に聞こえてくる声

「駄目だ、エリィには…エリィには手を出すな!」

〈…エリザベスに…〉

「そうだ、エリィはお前の相手など二度としない!」

「エリザベスは…私の相手をすることは無い…」

「………そうだ…」

「ああ、エリザベスにはもう相手をさせることは無い……」

「…な、…何…を…突然……」

「ヴィンセント、エリザベスのことはお前が決めろ。スケジュールも決めてやれ」

「………はい…」

寝台から降り、ガウンを羽織ったジェノライドはヴィンセントを残し部屋を後にした

自分の身体をその腕で抱きしめ、震え唱えるように言葉を繰り返す

「エリィは…僕が守る…僕が…」

何度も言葉を繰り返しながら、よろよろと脱ぎ捨てた服を纏い、部屋の扉に手を掛ける

突然目を見開き、固まるヴィンセント

扉が開くのを待っていたようにそこにはリタの姿があった

「ヴィンス、近しい者と交わってあなたは何の力を手に入れたの?」

リタの言葉とは思えない馴れ馴れしい口調と愉しさを隠そうともしないその顔でリタは言ったのだった…







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