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ジェミニとの再会
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マダムの邸宅に戻って来たリオベルは、先程のブティックの店員の話から、友人が訪ねて来ること、その友人が自分にデザインを依頼するかもしれないことを伝え、依頼を受けることの許可を事前に取っておいた。
門前でうろうろと落ち着かない様子でジェミニを待ちつつ、何から問えば良いのかずっと考えていた。
二頭立ての馬車が、邸宅まで続く緩やかな坂道をこちらに向かって来るのが見えた。
爪先立ちになっても体を捩っても馬車に乗る人物など見えるはずもないのだが、リオベルは何度も馬車の窓を確認する。
そしてゆっくりと御者が馬の手綱を引き馬車を停めた。
扉を開け先に降りてきたのは壮年期後半と見られる男性。
後から降りる者に手を延べ、愛しみ深く真綿を包むようにされるエスコート。
そのエスコートを受け降りてきたのは、スタンドからーのデイドレスにケープを纏い、ほんのりと化粧を施された、リオベルと同じぐらいの年若い女性。
じっとその人を確かめようにリオベルは見つめていた。
自分達の訪問を知っていたかのように、待っていたリオベルに驚きの表情を浮かべたかのは一瞬で、直ぐに笑んだ。
「リオベル、…久しぶり。突然…ごめんね」
気まずそうに相手が名前を呼ぶ。
「ジェミィ…」
言いたいこと、聞きたいこと。
溢れそうなほどあった言葉が一つも出てこない。
「ジェミィ、私にも紹介してくれないか」
付き添った男性がジェミニの腰に手を添えたまま、その目線をジェミニに合わせるように顔を覗き込む。
その仕草は粗暴な印象は微塵も感じられなかった。
ほんの数分、離れた場所から見ただけなので、フレックスに聞いていなければ、以前テレサと揉めていた人物だと気づかなかっただろう。
酷いことをされているのではないかと悪い想像ばかりしていた。
だが、今見る限りは大丈夫そうだ。
友人の元へこうして来られるというこはそういうことだろう。
「ええ。友人でデザイナーのリオベルよ。リオベル、こちらはデュリオス…」
「突然の訪問、すまない。デュリオス・ヒンバレー・カシュアだ」
紳士的なその振る舞いに応えるべく、リオベルも落ち着くため、一拍おいて返した。
「リオベルです。…私を訪ねて来て下さった、のですよね…。どうぞ、中へ」
ーーー
「ジェミィがどうしても君にデザインをお願いしたいと言うのでね」
「…まだデザイナーを名乗ることは出来ませんが、マダムには友人の依頼を受けても良いと許可は取ってあります」
ジェミニ一人でやって来たのならば、直ぐにでもこれまでのことを尋ねていただろう。
テレサとの件もある。
ジェミニと二人切りになれるまで初めは当たり障りのない会話にリオベルは留めた。
そして、いよいよドレスの話になったタイミングで、リオベルは提案をした。
「オーダーを受けるにあたって、先ずは採寸からさせていただきます」
「デザイン画からではないのかな」
「…はい。いつも、採寸をしながら、希望の形、色、装飾…どんなイメージが良いかをお聞きして、それから何点かのデザイン画を作成させていただいてます。デザインをいくら気に入っていただいても、逆にその方のイメージを損なうことがあってはいけませんから、先に…」
ブティックのオーナーであるこの男に通用するだろうか。
不自然な提案だと何か勘ぐられるのでは、と不安が過ったが、堂々とこれが自分のデザイナーとしてのスタイルだと言い切ることにした。
「では別室にて採寸して参ります。その間、こちらでお待ち下さい。ジェミィ…行きましょう」
「…ええ」
別室に向かいながら、先に歩くリオベルにジェミニがぽつりと言った。
「心配したよね…」
それまで我慢していたリオベルはくるりと振り返り、力の限りジェミニを抱きしめた。
「当たり前じゃない!どうして何の連絡も…。連絡も取れないような状況だったの?」
「…ううん、違うの。色々あって」
「あの人の前では聞くに聞けなかったけど、大丈夫なの?助けが必要?」
「助け?あの、違うの。誤解よ。デュリオスに助けてもらったのはわたしの方なの」
「…えっ、…どういう…?」
採寸用の部屋に通し、待ち人用の一人掛けの椅子にジェミニを一旦座らせ、その横でリオベルは絨毯に腰を下ろした。
「連絡をしなかったのは…本当にごめん。急に工房を辞めたからびっくりしたよね」
「ただ、お互い忙しくて会えないだけだと思ってたから…」
「うん。わたしもバタバタしてたから。本当は工房も辞めるつもりなんかなかったの。最初はある人の代わりにちょっとだけ、別な針子仕事をするだけのつもりだったから…」
「それでどうして辞めることになったの?」
「わたし…、そこで大変なミスをしちゃって…。でも、それを助けてくれたのが彼なの」
これまでのジェミニ話を、リオベルは急かすことなく聞いた。
門前でうろうろと落ち着かない様子でジェミニを待ちつつ、何から問えば良いのかずっと考えていた。
二頭立ての馬車が、邸宅まで続く緩やかな坂道をこちらに向かって来るのが見えた。
爪先立ちになっても体を捩っても馬車に乗る人物など見えるはずもないのだが、リオベルは何度も馬車の窓を確認する。
そしてゆっくりと御者が馬の手綱を引き馬車を停めた。
扉を開け先に降りてきたのは壮年期後半と見られる男性。
後から降りる者に手を延べ、愛しみ深く真綿を包むようにされるエスコート。
そのエスコートを受け降りてきたのは、スタンドからーのデイドレスにケープを纏い、ほんのりと化粧を施された、リオベルと同じぐらいの年若い女性。
じっとその人を確かめようにリオベルは見つめていた。
自分達の訪問を知っていたかのように、待っていたリオベルに驚きの表情を浮かべたかのは一瞬で、直ぐに笑んだ。
「リオベル、…久しぶり。突然…ごめんね」
気まずそうに相手が名前を呼ぶ。
「ジェミィ…」
言いたいこと、聞きたいこと。
溢れそうなほどあった言葉が一つも出てこない。
「ジェミィ、私にも紹介してくれないか」
付き添った男性がジェミニの腰に手を添えたまま、その目線をジェミニに合わせるように顔を覗き込む。
その仕草は粗暴な印象は微塵も感じられなかった。
ほんの数分、離れた場所から見ただけなので、フレックスに聞いていなければ、以前テレサと揉めていた人物だと気づかなかっただろう。
酷いことをされているのではないかと悪い想像ばかりしていた。
だが、今見る限りは大丈夫そうだ。
友人の元へこうして来られるというこはそういうことだろう。
「ええ。友人でデザイナーのリオベルよ。リオベル、こちらはデュリオス…」
「突然の訪問、すまない。デュリオス・ヒンバレー・カシュアだ」
紳士的なその振る舞いに応えるべく、リオベルも落ち着くため、一拍おいて返した。
「リオベルです。…私を訪ねて来て下さった、のですよね…。どうぞ、中へ」
ーーー
「ジェミィがどうしても君にデザインをお願いしたいと言うのでね」
「…まだデザイナーを名乗ることは出来ませんが、マダムには友人の依頼を受けても良いと許可は取ってあります」
ジェミニ一人でやって来たのならば、直ぐにでもこれまでのことを尋ねていただろう。
テレサとの件もある。
ジェミニと二人切りになれるまで初めは当たり障りのない会話にリオベルは留めた。
そして、いよいよドレスの話になったタイミングで、リオベルは提案をした。
「オーダーを受けるにあたって、先ずは採寸からさせていただきます」
「デザイン画からではないのかな」
「…はい。いつも、採寸をしながら、希望の形、色、装飾…どんなイメージが良いかをお聞きして、それから何点かのデザイン画を作成させていただいてます。デザインをいくら気に入っていただいても、逆にその方のイメージを損なうことがあってはいけませんから、先に…」
ブティックのオーナーであるこの男に通用するだろうか。
不自然な提案だと何か勘ぐられるのでは、と不安が過ったが、堂々とこれが自分のデザイナーとしてのスタイルだと言い切ることにした。
「では別室にて採寸して参ります。その間、こちらでお待ち下さい。ジェミィ…行きましょう」
「…ええ」
別室に向かいながら、先に歩くリオベルにジェミニがぽつりと言った。
「心配したよね…」
それまで我慢していたリオベルはくるりと振り返り、力の限りジェミニを抱きしめた。
「当たり前じゃない!どうして何の連絡も…。連絡も取れないような状況だったの?」
「…ううん、違うの。色々あって」
「あの人の前では聞くに聞けなかったけど、大丈夫なの?助けが必要?」
「助け?あの、違うの。誤解よ。デュリオスに助けてもらったのはわたしの方なの」
「…えっ、…どういう…?」
採寸用の部屋に通し、待ち人用の一人掛けの椅子にジェミニを一旦座らせ、その横でリオベルは絨毯に腰を下ろした。
「連絡をしなかったのは…本当にごめん。急に工房を辞めたからびっくりしたよね」
「ただ、お互い忙しくて会えないだけだと思ってたから…」
「うん。わたしもバタバタしてたから。本当は工房も辞めるつもりなんかなかったの。最初はある人の代わりにちょっとだけ、別な針子仕事をするだけのつもりだったから…」
「それでどうして辞めることになったの?」
「わたし…、そこで大変なミスをしちゃって…。でも、それを助けてくれたのが彼なの」
これまでのジェミニ話を、リオベルは急かすことなく聞いた。
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