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ボルドーのドレス
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リオベルを指定しての初めてのオーダードレスが仕上がり、マダムが連絡を入れたところ、例のパーティに出席のため、主催者の所で前日から滞在するので、そちらに届けて欲しいと返事がきた。
そして指定された日、この別荘地の中で一番の敷地の広さと、一際格式のある屋敷へリオベルは自ら納めに向かった。
裏口には夕刻から行われるパーティーのためだろう。
多くの業者が食材や花を荷馬車に乗せ、出入りをしていた。
「リオ?」
その列で裏口を通してもらう順番待ちをしていたリオベルに聴き慣れた声で呼びかける者が居た。
声の主は紺の騎士服の正装に身を包んだマイラーだった。
「どうしてここに?」
リオベルこそ、その質問をしたいところだったが、大きなドレスが入った二つの箱を見て理解したマイラーが、すっとその箱をリオベルの手から取った。
「持つよ」
「え、良いわ。レオ、任務中なんでしょう?」
「うん。警護の任務中。怪しい者が居ないか見張りの任務。だから、丁度良い、案内するよ」
「丁度良いって…。怪しい人扱い?」
「うん。俺の仕事場まで来ちゃう、怪しい人物。…ぷはっ、冗談」
少しむくれながら、レオを訪ねたわけじゃないのに…とぶつぶつ言っているリオベルにマイラーは吹き出した。
「邪魔しちゃ悪いわ。それに…順番もあるし」
「そのまま列に並んでたら、遅くなっちゃうよ。これ、誰に届けるの?」
スタスタと歩き始めてしまったマイラーを慌てて追いかけ、オーダー主の名を告げた。
屋敷の正面玄関は開け放たれており、早々と支度を終え、これから行われる晩餐のために采配を振るう女主人がそこにいた。
光沢のあるボルドーのドレスを纏い、シルバーの髪をきっちりと結い上げた壮年の女性が、マイラーとリオベルを目に留めた。
「招待客の、ヒューディガー子爵へお届け物です」
マイラーがその貴婦人に用件を告げると、許可する旨首肯した。
品格の漂う凛とした立ち姿。
混ざりの無いシルバーの髪を更に引き立てるようなボルドーのドレス。
不躾と知りつつ、リオベルはその貴婦人から目が離せなかった。
ーーーーー
リオベルが以前のように自由に休みを取れるようになったのはそれから更に二ヶ月が過ぎてからだった。
仕事に影響がでないよう、考えが引き摺られないようにしていたジェミニのこと。
リオベルは真っ先にブティックの工房へ、今一度話を聞くために向かった。
やはり、お針子達からは前回と同じことしか聞けなかった。
工房を後にしようとした時、ブティックの方からテレサが一巻きの布を運んで来るのが見え、思わず呼び溜めた。
デザインの横流しを疑われ、居辛くなったと、ジェミニから聞かされていたが、工房で仕事を続けていることに安堵した。
久しぶりにリオベルの顔を見たテレサは話が有るので、手にしていた巻き布を工房に置いて来るから待ってて欲しいと言った。
リオベルはジェミニのことを何か聞けるのではと、裏道に抜ける出入り口の方で待つことにした。
そして指定された日、この別荘地の中で一番の敷地の広さと、一際格式のある屋敷へリオベルは自ら納めに向かった。
裏口には夕刻から行われるパーティーのためだろう。
多くの業者が食材や花を荷馬車に乗せ、出入りをしていた。
「リオ?」
その列で裏口を通してもらう順番待ちをしていたリオベルに聴き慣れた声で呼びかける者が居た。
声の主は紺の騎士服の正装に身を包んだマイラーだった。
「どうしてここに?」
リオベルこそ、その質問をしたいところだったが、大きなドレスが入った二つの箱を見て理解したマイラーが、すっとその箱をリオベルの手から取った。
「持つよ」
「え、良いわ。レオ、任務中なんでしょう?」
「うん。警護の任務中。怪しい者が居ないか見張りの任務。だから、丁度良い、案内するよ」
「丁度良いって…。怪しい人扱い?」
「うん。俺の仕事場まで来ちゃう、怪しい人物。…ぷはっ、冗談」
少しむくれながら、レオを訪ねたわけじゃないのに…とぶつぶつ言っているリオベルにマイラーは吹き出した。
「邪魔しちゃ悪いわ。それに…順番もあるし」
「そのまま列に並んでたら、遅くなっちゃうよ。これ、誰に届けるの?」
スタスタと歩き始めてしまったマイラーを慌てて追いかけ、オーダー主の名を告げた。
屋敷の正面玄関は開け放たれており、早々と支度を終え、これから行われる晩餐のために采配を振るう女主人がそこにいた。
光沢のあるボルドーのドレスを纏い、シルバーの髪をきっちりと結い上げた壮年の女性が、マイラーとリオベルを目に留めた。
「招待客の、ヒューディガー子爵へお届け物です」
マイラーがその貴婦人に用件を告げると、許可する旨首肯した。
品格の漂う凛とした立ち姿。
混ざりの無いシルバーの髪を更に引き立てるようなボルドーのドレス。
不躾と知りつつ、リオベルはその貴婦人から目が離せなかった。
ーーーーー
リオベルが以前のように自由に休みを取れるようになったのはそれから更に二ヶ月が過ぎてからだった。
仕事に影響がでないよう、考えが引き摺られないようにしていたジェミニのこと。
リオベルは真っ先にブティックの工房へ、今一度話を聞くために向かった。
やはり、お針子達からは前回と同じことしか聞けなかった。
工房を後にしようとした時、ブティックの方からテレサが一巻きの布を運んで来るのが見え、思わず呼び溜めた。
デザインの横流しを疑われ、居辛くなったと、ジェミニから聞かされていたが、工房で仕事を続けていることに安堵した。
久しぶりにリオベルの顔を見たテレサは話が有るので、手にしていた巻き布を工房に置いて来るから待ってて欲しいと言った。
リオベルはジェミニのことを何か聞けるのではと、裏道に抜ける出入り口の方で待つことにした。
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