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晴れない気持ち

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 直ぐにでもジェミニの住み込み先を探しに行きたい気持ちはあるのだが、リオベルはドレスの依頼を受けている。

 先日、依頼のあった娘達がやって来て、それぞれの娘達の纏う雰囲気と、許可を得ていくつかさせてもらった質問により、リオベルはその場でスラスラと三着ずつ、計六着のデザインを描きあげた。
 デザインを気に入れば、と確約の無い依頼だったが、嬉しい誤算とでも言うべきか、デザインした全てのオーダーを受けることになってしまった。

 取り急ぎの二着以外は急がなくて良いと言ってもらえたのだが、当然、季節が変わってしまう前には完成させなければならない。

 やらなければならないことが山積みだ。

 今回もマダムの配慮で、お抱えの専属のパターンナーの手を借りることになったのだが、材料やお針子の手配、その他諸々、とにかく時間がいくら有っても足りないのだ。

 いつもなら、根を詰め過ぎて休みを取ろうとしないリオベルだが、今回は自ら休みを調整し取った。



「いくら、忙しくてもリオに何かしら相談しそうなのになぁ」


 リオベルに合わせてマイラーは休みを取ってくれた。
 カフェの四人掛けの席に二人は座り、マイラーは運ばれてきた紅茶を一旦持ち上げたが、口を付けずにまたソーサーに戻した。


「私も、ジェミニの性格を考えると、何だか納得ができないの…。だからフレックスさんに聞いてみようと思って。レオは、何も聞いてない?」
 
「…それが…、この間、フレックスとジェミニちゃん付き合ってるって話、したよね?」

「うん。だから、この間、フレックスさんを見かけた時にも聞こうと後を追いかけたんだけど、見失っちゃって。そのことと何か関係ありそうなの?」

「俺、フレックスに揶揄いながら冷やかしたんだ…。そしたら違うって。考えごとしてたから、適当に返事しただけだって言うんだ。適当にって酷いだろ?でも、ジェミニちゃんとそういう仲になりたいんじゃないのか?て、慌てて聞いたんだけど、自分でもよく分からないって、曖昧なことしか言わないし」

「喧嘩でも…したのかな…」


 リオベルも紅茶に口にすることなく、温かさを確認するように、両手でカップを包んだ。
 

「…私、とりあえず、工房でその一緒に辞めたって人のこともう少し詳しく聞いてみる」

 
 腕を伸ばし、向かいに座るリオベルの頭をくしゃくしゃと撫で、安心させるようにマイラーは目尻を下げた。


「ジェミニちゃんのことたがら、ただ単に、言うタイミングを逃しただけかもしれない。休みが取れたら家にも帰るって言ってたんだよね。心配ないさ。リオもデザイナーの仕事で忙しいんだろう?とりあえずはその事に集中!俺も、フレックスに聞いておくから。相談とか受けてたかもしれないし。こっちでも何か分かったら、リオんとこに報告に行くよ」

「ありがとう」


 マイラーの言葉通り、心配し過ぎなのかもしれないと、自分に言い聞かせることで、リオベルは晴れない気持ちを無理矢理落ち着かせたのだった。


 
 










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