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リビングに戻ると、香澄は訝し気に二人を見比べて、裕也に小声で聞いた。
「ゆうくん、トイレ長くなかった?」
裕也は気まずそうな笑いを浮かべて頭を掻いた。
それ以外に答えようがなかった。
「デザートも何種類かあるんだ。どれがいいか感想を教えて欲しい」
マンゴーの乗ったミルクプリン、フルーツケーキ、桃のコンポートと3種類のデザートを拓真と結花子が2人の前に並べる。
香澄の関心はそちらに移ったらしく、彼女は瞳を輝かせてデザートにスマホのカメラを向けた。
「いただきます」
結花子も席につくと、デザートスプーンを手に取って、まずはプリンにそれをさし込んだ。ゆっくりすくい上げて、口元に運ぶ。
しゅるり、と白いプリンが彼女の唇の中へ吸い込まれる様子を凝視して、裕也はごくり、と喉を鳴らした。先ほど起こったことが脳内で反復される。あの唇がさっきまで、自分のものを咥えていたのだと考えると、白昼夢でも見ていたかのような感覚に陥った。
裕也の視線に気がついた結花子は、口角を少し上げると、スマートフォンを卓上に出して、画面をタップした。
それを正面に座る、裕也と香澄の方へと押し出す。
裕也は背筋がすっと冷たくなるのを感じた。
その画面には――先ほどの洗面所での一部始終が、裕也の顔が映る状態で真上から撮られて、再生されていた。
『っ、奥……さっ、ん、……っ』
切羽詰まったような自分の吐息混じりの声がリビングに響いて、裕也は頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。
これはどういうことだ?
何でこんなものをここで晒すんだ?
俯いて身を硬くする裕也の耳に届いたのは、心底驚いたような拓真の声だった。
「結花子、何だこれは」
拓真は妻の行動に驚愕していた。
結花子は裕也のことを気にいったようだったので、彼にちょっかいを出すことはあるだろうと思っていた。洗面所で見た光景は予想の範疇だったので、そこまで驚きはなかった。
ただ、結花子が拓真の会社の人間を相手に選ぶことは今までなかったし、しかも相手は新婚で、妻も家に呼んでいるところでさすがに事に及ぶとまでは思っていなかったので、それは意外だと思った。ただ、彼女なら相手の妻にバレないように上手くやるだろうと思ったので、そのままにすることにしたのだが。
――今、この席で、その映像を流す意図が全く分からなかった。
「何って、さっき洗面所で桜井くんと楽しんだ映像よ」
結花子はふふっと笑った。
「ゆうくん、トイレ長くなかった?」
裕也は気まずそうな笑いを浮かべて頭を掻いた。
それ以外に答えようがなかった。
「デザートも何種類かあるんだ。どれがいいか感想を教えて欲しい」
マンゴーの乗ったミルクプリン、フルーツケーキ、桃のコンポートと3種類のデザートを拓真と結花子が2人の前に並べる。
香澄の関心はそちらに移ったらしく、彼女は瞳を輝かせてデザートにスマホのカメラを向けた。
「いただきます」
結花子も席につくと、デザートスプーンを手に取って、まずはプリンにそれをさし込んだ。ゆっくりすくい上げて、口元に運ぶ。
しゅるり、と白いプリンが彼女の唇の中へ吸い込まれる様子を凝視して、裕也はごくり、と喉を鳴らした。先ほど起こったことが脳内で反復される。あの唇がさっきまで、自分のものを咥えていたのだと考えると、白昼夢でも見ていたかのような感覚に陥った。
裕也の視線に気がついた結花子は、口角を少し上げると、スマートフォンを卓上に出して、画面をタップした。
それを正面に座る、裕也と香澄の方へと押し出す。
裕也は背筋がすっと冷たくなるのを感じた。
その画面には――先ほどの洗面所での一部始終が、裕也の顔が映る状態で真上から撮られて、再生されていた。
『っ、奥……さっ、ん、……っ』
切羽詰まったような自分の吐息混じりの声がリビングに響いて、裕也は頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。
これはどういうことだ?
何でこんなものをここで晒すんだ?
俯いて身を硬くする裕也の耳に届いたのは、心底驚いたような拓真の声だった。
「結花子、何だこれは」
拓真は妻の行動に驚愕していた。
結花子は裕也のことを気にいったようだったので、彼にちょっかいを出すことはあるだろうと思っていた。洗面所で見た光景は予想の範疇だったので、そこまで驚きはなかった。
ただ、結花子が拓真の会社の人間を相手に選ぶことは今までなかったし、しかも相手は新婚で、妻も家に呼んでいるところでさすがに事に及ぶとまでは思っていなかったので、それは意外だと思った。ただ、彼女なら相手の妻にバレないように上手くやるだろうと思ったので、そのままにすることにしたのだが。
――今、この席で、その映像を流す意図が全く分からなかった。
「何って、さっき洗面所で桜井くんと楽しんだ映像よ」
結花子はふふっと笑った。
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