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「えっ……、付き合う?」
私は頭にクエスチョンマークを浮かべて、首を捻った。
「誰と、誰が?」
「先生と僕がです」
岡田くんはゆっくりとそう言った。
「3年のとき、僕、告白したじゃないですか。そしたら先生、社会人になったらねって言ったじゃないですか」
……ちょっと待って、私、そんなこと、言った……わ。
私は記憶をたどった。
あれは確か、大学受験準備の補修で多目的室で岡田くんを教えてた時だ。
すごい緊張した様子で『付き合ってくれませんか?』って言われたんだった。
まさか生徒と付き合うなんて有り得ないし、教師のことが気になるなんて高校生の時にはありがちなことだから、『ありがとう、でも先生は生徒とは付き合えない』って答えたんだった。それで、『社会人になって、まだそう思ってくれてたらまた言って』って言ったんだった……。
岡田くんはかなり格好良いし、東京に進学したら、高校生の頃のことなんてすぐ忘れて彼女作ってキャンパスライフ満喫するんだろなぁって思ってたから、そんなに気にしてなかったけど、そういえば、そうだった。
「言った……けど、そのね、岡田くん」
私は彼の肩をぽんぽんっと叩いた。
「先生は、ほら先生だし、岡田くんは大学生じゃない。ほら、学校とかにいい子いっぱいいるでしょ」
「お金稼いでます。車も買ったし」
彼はふくれたような顔をした。
「ほぼ社会人です。そしたら問題ないでしょう。僕は、先生が好きなんです」
私はすっかり困ってしまった。嬉しいは嬉しいけど……でも、
「いやいや、私、28よ。岡田くん、まだ20歳じゃない」
あははと笑うと、岡田くんはきっと鋭い茶色の眼差しを私に向けた。
「age is just a number ですよ、先生。年とか関係ないです。それとも彼氏とかいるからですか?」
年齢はただの数字、どっかの授業で名言的な感じで紹介したような気もする。
そんなことを考えながら私は首を振った。
「彼氏、はいないけど……」
「じゃあ、僕でいいじゃないですか」
岡田くんは私の肩に両手を乗せると、身体を自分の方へ向けさせた。
真剣な目つきは、ブレザー姿だった頃と比べて大分大人びていて、不覚にも心臓がどくっと鳴った。
いや、でも、成人したての子、しかも教え子よ。
付き合うとかは……ないでしょ。
私は彼の手をどけようと身体をゆすった。
「気持ちはとっても嬉しいけど……、岡田くんは私の生徒だしね……、そういうのは……」
岡田くんの手は思ったより力が入っていて動かない。
彼はもう一度ぐっと私の身体を自分の方へ向けさせると言った。
「キスして、駄目か判断してください」
カチン、と岡田くんがシートベルトを外す音が車内に響いた。
背の高い身体が私の方に覆いかぶさってきて、柔らかい茶色い髪が頬に触れた。
それから唇が重なった。
私は頭にクエスチョンマークを浮かべて、首を捻った。
「誰と、誰が?」
「先生と僕がです」
岡田くんはゆっくりとそう言った。
「3年のとき、僕、告白したじゃないですか。そしたら先生、社会人になったらねって言ったじゃないですか」
……ちょっと待って、私、そんなこと、言った……わ。
私は記憶をたどった。
あれは確か、大学受験準備の補修で多目的室で岡田くんを教えてた時だ。
すごい緊張した様子で『付き合ってくれませんか?』って言われたんだった。
まさか生徒と付き合うなんて有り得ないし、教師のことが気になるなんて高校生の時にはありがちなことだから、『ありがとう、でも先生は生徒とは付き合えない』って答えたんだった。それで、『社会人になって、まだそう思ってくれてたらまた言って』って言ったんだった……。
岡田くんはかなり格好良いし、東京に進学したら、高校生の頃のことなんてすぐ忘れて彼女作ってキャンパスライフ満喫するんだろなぁって思ってたから、そんなに気にしてなかったけど、そういえば、そうだった。
「言った……けど、そのね、岡田くん」
私は彼の肩をぽんぽんっと叩いた。
「先生は、ほら先生だし、岡田くんは大学生じゃない。ほら、学校とかにいい子いっぱいいるでしょ」
「お金稼いでます。車も買ったし」
彼はふくれたような顔をした。
「ほぼ社会人です。そしたら問題ないでしょう。僕は、先生が好きなんです」
私はすっかり困ってしまった。嬉しいは嬉しいけど……でも、
「いやいや、私、28よ。岡田くん、まだ20歳じゃない」
あははと笑うと、岡田くんはきっと鋭い茶色の眼差しを私に向けた。
「age is just a number ですよ、先生。年とか関係ないです。それとも彼氏とかいるからですか?」
年齢はただの数字、どっかの授業で名言的な感じで紹介したような気もする。
そんなことを考えながら私は首を振った。
「彼氏、はいないけど……」
「じゃあ、僕でいいじゃないですか」
岡田くんは私の肩に両手を乗せると、身体を自分の方へ向けさせた。
真剣な目つきは、ブレザー姿だった頃と比べて大分大人びていて、不覚にも心臓がどくっと鳴った。
いや、でも、成人したての子、しかも教え子よ。
付き合うとかは……ないでしょ。
私は彼の手をどけようと身体をゆすった。
「気持ちはとっても嬉しいけど……、岡田くんは私の生徒だしね……、そういうのは……」
岡田くんの手は思ったより力が入っていて動かない。
彼はもう一度ぐっと私の身体を自分の方へ向けさせると言った。
「キスして、駄目か判断してください」
カチン、と岡田くんがシートベルトを外す音が車内に響いた。
背の高い身体が私の方に覆いかぶさってきて、柔らかい茶色い髪が頬に触れた。
それから唇が重なった。
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