断罪の牙

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影の足跡

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 2110年、日本はさらに機械化し、人々の暮らしはより豊かになった。だが、それはほんの一部の者に限られている。実際のところ、今の日本には豊かな者はほとんどいない。多くの国民は一日生きるだけでもギリギリな生活を送っていた。そしてさらに追い打ちをかけるように消費税は40%を超え、新たに様々な税が課せられるようになった。物価もかなり高騰し、かつての10円ガムはいつの間にか500円にまで達していた。そう、まさに日本は一部の富裕層にのみ有利な国となってしまった。
 だが、そんな中、このような体制をよしとしない者たちがいた。彼らが起こしたのが、2128年の「貧困者暴動事件プアルレジスト」だ。この事件は富裕層、貧困者プアル共に多くの死者を出した。戦闘ではアナログ、デジタルの両方による激しい攻防が続いた。だが、貧困者が機械化した武装スーツや強固なセキュリティなどには到底叶うはずもなく、反乱者たちは一部を除いて全滅した。生き残った者たちは裁判にかけられ、全員に死刑判決が下されたのだった。

 貧困者専用の監獄で、かつての反乱者の一人、御影 龍夜みかげ りゅうやは毎日過酷な環境下で労働を強いられていた。御影は特に貧困者と富裕層の間の格差に興味がなく、その日暮らしの人間だった。唯一彼が気にしていた事、それは家族がいなかった事だ。彼の一番古い記憶は、貧困者の群がるスラム街での孤独な生活だった。そのせいか、彼は家族を持つ者が羨ましかった。彼は幼い頃から万引きやスリ等、様々な犯罪に手を染めた。そのため、彼には通常の人間には無いような才能があった。
 「おい、82番!手を止めるな!」
労働施設一体に、よく通る低い声が響く。この監獄は囚人こそ貧困者しかいないが、看守は全員富裕層の人間だ。そんな中で貧困者達がまともな待遇を受ける訳がない。朝は5時に叩き起こされ、仕事が終わるのは23時。食事は10時と18時の2回だけ。それ以外の時間は、多少の休憩はあるものの、ずっと働かされる事になる。
 ここで、彼らが働かされている場所の説明をしておこう。彼らは日の当たらない地下施設でこき使われている。粉塵が舞い、重い空気がのしかかる。富裕層の者たちは古代のコロッセオのような、命を粗末に扱える施設を作るため、第2の日本を作ろうとした。貧困者はその労働力と言うわけだ。
 
 元反乱者達が投獄されて、約3ヶ月が過ぎた。元々30人程いたのが、今では10人程度まで減っていた。と言うのも、過度のストレスや事故、衰弱などによって次々と死んでいったためだ。日本の医療は既に様々な難病を簡単に治療できるところまで成長していたが、貧困者達は傷の手当すらまともに受けられなかった。

「作業終わり!全員速やかに部屋に戻れ!」
時刻は23:00きっかり。看守の声が響いた。労働者達は各々使用した道具を持ってぞろぞろと出口に歩いていった。
 その頃、監獄の上層部では何やら不穏な雰囲気の会議が行われていた。
 翌日、御影は何か得体のしれない違和感に襲われた。部屋に流れる空気がどことなく重たい、だが、心臓の鼓動はそれに反比例して加速する。彼が謎の葛藤にも似た感覚に戸惑っているとき、突然部屋の鍵があいた。
「142番、御影。出ろ。」
言われたまま御影が外に出ると、たちまち看守達が彼を取り囲むように並んだ。前に二人、後ろに二人。この陣形なら例えどんなに屈強な者であっても、看守を振り切って逃げることは難しい。
 彼が四人の看守に連れられて入った部屋には、かつて「貧困者暴動事件」で反乱を起こした者たちがいた。彼は一瞬にして何が起こったのか、そしてこれからどうなるのかを悟った。
 重たい20分が過ぎた。その部屋には生き残った全ての「元反乱者」が詰め込まれた。
「これで終わりか。」
と誰かが呟いた。すると突然、入り口とは真逆の壁が二つに割れ、そこから白い光が差し込んだ。あまりにも眩しい光は彼らを一瞬盲目にした。そして次の瞬間、彼らが目にしたのは無機質な鉄の壁に囲まれた、無慈悲な絞首台だった。
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