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お仕事三番勝負編
スローガンその26「VS安倍氏」
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「さあ、始めようか。……『お仕事三番勝負』を!」
「違う意味で話が早いな」
僕、番門碧は隣にいる蝶茶韻理早智を窺った。先ほどの爆発で多少驚いたのだろう。彼女の拳が震えているのが分かった。しかし首を左右に何度か振ると、意を決したように叫んだ。
「のぞむところよ!」
「それでこそ天下の天寿だ。……少し待っていろ」
◇
それから小一時間が経過し、周囲は昔懐かしいような芸人集合系外ロケ番組を思わせる様々なセットが地序の社員によって用意された。
「諸悪の根源である伊ヶ崎波奈を潰すため、まずはその障害となり得る君達を地獄へ叩き落してあげよう。……始めてくれ!!」
「さあ始まりました。特別番組『地序対天寿! 会社対抗お仕事三番勝負』のお時間です。進行と実況を務めさせていただきます……秘伝のエイムで相手を滅亡!……でお馴染み、元eスポーツプレイヤーであり空の宮テレビアナウンサー、私枕木明です」
おいなんか始まったぞ。
「解説は人質の皇甫麗亞さんです。よろしくお願いいたします」
「ん」
ん、じゃないよ。君までボケ側に回られたらツッコミが追いつかないよ。
「さて、これから地序チームと天寿チームから一人ずつ代表を選出し、三つの勝負で競っていただきます。先に二勝したチームの勝利となり、それぞれの要望を受け入れることとなります。地序チームリーダーの甲ヶ崎華那さん、何を望みますか?」
「伊ヶ崎波奈にこれまでの罪を懺悔させ、公開処刑することだ!」
「続いて天寿チームリーダーの蝶茶韻理早智さん、何を望みますか?」
「『図書カード五千円分×チーム人数』よ!」
「おいふざけるな」
「ふっ、エリートは……高望みしないのよ」
正気の選択とは思えないが。
「各種目の勝敗を公平に決めるため、審査員の方々をお迎えしております。まず左から……静岡県議会議員の連邦群詩和気さん」
「連邦群です。今回はみんな一位じゃダメなんですか?」
「いやよくないだろ」
「続いて『とにかく大好き倶楽部』会長のダイ・好きピヨさん」
「いやぁ~、良きですねぇ~。みんな大好きピヨ~!」
「何がだ。何が良きなんだ。そもそも何が大好きなんだ」
……おや?
ツッコんでいて気を取られていたが、ダイ・好きピヨの向かって右隣の席が空いている。
「そして最後は甲ヶ崎華那さんの元部下であり現在は正式に天寿の社員となった番門碧さんです。さあ、どうぞ審査員席へ」
そうか、確かに僕なら地序と天寿、双方の内部事情を知っている。審査員にはそれなりに適任というわけか。
審査員席へ向かうため甲ヶ崎華那を横切ろうとしたその時、彼女からこっそりと囁かれた。
「君のジャッジには期待しているよ。碧ちゃん」
「……僕は、より多くのお金をくれる陣営の味方です。お忘れなきよう」
「あ、碧ちゃん……」
あからさまに狼狽えていたが、まあそういうことだ。公平に審査させてもらうよ。……といっても、地序に雇われたであろう他の二名が公平な判断をするかどうかは疑わしいが。
「なお、この番組は空の宮テレビの番組枠を使い、市内全域に生放送しております。番組は一時間を予定しておりますが、延長することとなった場合は『空の宮すくすくラジオ』さんからラジオ放送にてお送りいたします」
いやスポーツ中継か。
「それでは早速第一種目です。名付けて『VS安倍氏』!」
楽器隊による熱烈なファンファーレが辺りに響き渡る。
「ルールは簡単。こちらの特設リングで闘ってもらい、スリーカウントを取った時点で決着。審査員による多数決で勝敗を決定します。戦いの場はリングとなっておりますが、使用する技は限定いたしません。殴る蹴る、道具を使うなど、なんでもアリです」
なるほど。万が一地序チームが格闘戦で負けても審査員で覆せる、というわけか。
「さて、地序チームはどなたを選出しますか?」
「こちらは……コイツだ!」
土煙の向こうから、二メートルは超えているであろう身長の大柄な男がやってきた。
「百戦錬磨の無敵野郎! ムエタイ界絶対王者のマスクマン! 安倍拳史郎だ! 大金をはたいて雇ったぞ!」
「リングネーム『安倍氏』でお馴染みの安倍です! 安倍のオリジナルマスク、絶賛発売中でーす! ……ちょっと、サイズ感間違えたけど……。ぐすん」
小さすぎるとかか? あとその体躯で「ぐすん」って。
「私のターン! ドローよ! スタンバイステップ! 魔法エネルギーを一つ消費して『禁欲の壺』から本日のビックリドッキリフレンズ『横垣センセー』をレベルゼロツーでどこからともなく通常召喚! つぅぅーじょぉぉーしょーかん! 二回言うのは念のため! クリスタルコアはボイドから二つ装備よ!」
「(/>△</)ヨ、ヨクワカリマセンガガンバリマス!!」
「恩師をカードゲームのオモチャにするな。あとよく分からんのに頑張るな」
「さて今回の対戦カード、皇甫さんはどう見ますか?」
「本職が勝つんじゃない? どうでもいいけど」
「さあ戦いのゴングが………………今、鳴りました!」
「ぶちのめせー! 安倍氏ー! かっとばせー! 安倍氏ー!」
貴女は野球の応援しか知らないのか?
「立って! 立つのよ先生! まだライフは満タン、ここを乗り切れば……お願い先生! 負けないで! 次回『安倍氏伏す!』ご期待ください!」
「違う意味で話が早いな」
僕、番門碧は隣にいる蝶茶韻理早智を窺った。先ほどの爆発で多少驚いたのだろう。彼女の拳が震えているのが分かった。しかし首を左右に何度か振ると、意を決したように叫んだ。
「のぞむところよ!」
「それでこそ天下の天寿だ。……少し待っていろ」
◇
それから小一時間が経過し、周囲は昔懐かしいような芸人集合系外ロケ番組を思わせる様々なセットが地序の社員によって用意された。
「諸悪の根源である伊ヶ崎波奈を潰すため、まずはその障害となり得る君達を地獄へ叩き落してあげよう。……始めてくれ!!」
「さあ始まりました。特別番組『地序対天寿! 会社対抗お仕事三番勝負』のお時間です。進行と実況を務めさせていただきます……秘伝のエイムで相手を滅亡!……でお馴染み、元eスポーツプレイヤーであり空の宮テレビアナウンサー、私枕木明です」
おいなんか始まったぞ。
「解説は人質の皇甫麗亞さんです。よろしくお願いいたします」
「ん」
ん、じゃないよ。君までボケ側に回られたらツッコミが追いつかないよ。
「さて、これから地序チームと天寿チームから一人ずつ代表を選出し、三つの勝負で競っていただきます。先に二勝したチームの勝利となり、それぞれの要望を受け入れることとなります。地序チームリーダーの甲ヶ崎華那さん、何を望みますか?」
「伊ヶ崎波奈にこれまでの罪を懺悔させ、公開処刑することだ!」
「続いて天寿チームリーダーの蝶茶韻理早智さん、何を望みますか?」
「『図書カード五千円分×チーム人数』よ!」
「おいふざけるな」
「ふっ、エリートは……高望みしないのよ」
正気の選択とは思えないが。
「各種目の勝敗を公平に決めるため、審査員の方々をお迎えしております。まず左から……静岡県議会議員の連邦群詩和気さん」
「連邦群です。今回はみんな一位じゃダメなんですか?」
「いやよくないだろ」
「続いて『とにかく大好き倶楽部』会長のダイ・好きピヨさん」
「いやぁ~、良きですねぇ~。みんな大好きピヨ~!」
「何がだ。何が良きなんだ。そもそも何が大好きなんだ」
……おや?
ツッコんでいて気を取られていたが、ダイ・好きピヨの向かって右隣の席が空いている。
「そして最後は甲ヶ崎華那さんの元部下であり現在は正式に天寿の社員となった番門碧さんです。さあ、どうぞ審査員席へ」
そうか、確かに僕なら地序と天寿、双方の内部事情を知っている。審査員にはそれなりに適任というわけか。
審査員席へ向かうため甲ヶ崎華那を横切ろうとしたその時、彼女からこっそりと囁かれた。
「君のジャッジには期待しているよ。碧ちゃん」
「……僕は、より多くのお金をくれる陣営の味方です。お忘れなきよう」
「あ、碧ちゃん……」
あからさまに狼狽えていたが、まあそういうことだ。公平に審査させてもらうよ。……といっても、地序に雇われたであろう他の二名が公平な判断をするかどうかは疑わしいが。
「なお、この番組は空の宮テレビの番組枠を使い、市内全域に生放送しております。番組は一時間を予定しておりますが、延長することとなった場合は『空の宮すくすくラジオ』さんからラジオ放送にてお送りいたします」
いやスポーツ中継か。
「それでは早速第一種目です。名付けて『VS安倍氏』!」
楽器隊による熱烈なファンファーレが辺りに響き渡る。
「ルールは簡単。こちらの特設リングで闘ってもらい、スリーカウントを取った時点で決着。審査員による多数決で勝敗を決定します。戦いの場はリングとなっておりますが、使用する技は限定いたしません。殴る蹴る、道具を使うなど、なんでもアリです」
なるほど。万が一地序チームが格闘戦で負けても審査員で覆せる、というわけか。
「さて、地序チームはどなたを選出しますか?」
「こちらは……コイツだ!」
土煙の向こうから、二メートルは超えているであろう身長の大柄な男がやってきた。
「百戦錬磨の無敵野郎! ムエタイ界絶対王者のマスクマン! 安倍拳史郎だ! 大金をはたいて雇ったぞ!」
「リングネーム『安倍氏』でお馴染みの安倍です! 安倍のオリジナルマスク、絶賛発売中でーす! ……ちょっと、サイズ感間違えたけど……。ぐすん」
小さすぎるとかか? あとその体躯で「ぐすん」って。
「私のターン! ドローよ! スタンバイステップ! 魔法エネルギーを一つ消費して『禁欲の壺』から本日のビックリドッキリフレンズ『横垣センセー』をレベルゼロツーでどこからともなく通常召喚! つぅぅーじょぉぉーしょーかん! 二回言うのは念のため! クリスタルコアはボイドから二つ装備よ!」
「(/>△</)ヨ、ヨクワカリマセンガガンバリマス!!」
「恩師をカードゲームのオモチャにするな。あとよく分からんのに頑張るな」
「さて今回の対戦カード、皇甫さんはどう見ますか?」
「本職が勝つんじゃない? どうでもいいけど」
「さあ戦いのゴングが………………今、鳴りました!」
「ぶちのめせー! 安倍氏ー! かっとばせー! 安倍氏ー!」
貴女は野球の応援しか知らないのか?
「立って! 立つのよ先生! まだライフは満タン、ここを乗り切れば……お願い先生! 負けないで! 次回『安倍氏伏す!』ご期待ください!」
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