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勝負編
スローガンその12「アオイちゃんはお金が欲しい」
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学生時代の僕は、いつも怯えながら過ごしてきた。巻き込まれないように。目をつけられないように。
「俺達は、校則なんかに縛られない! 自由の戦士! 人類の自由と平和のために、今! 立ち上がる!」
今日も、矢部井桐生が教卓を前にして演説していた。周りは、それに賛同する不良ばかり。担任は、顔を腫らして床に倒れ込んでいた。
窓ガラスは割られ、壁は傷だらけ。廊下では四六時中改造バイクが走り抜けている。
なぜ、こんな物騒な中学に通わないといけなかったのか。
主な原因は二つ。僕の成績が軒並み低いのと、貧困だ。
金だ。僕には金が必要なんだ。それさえあれば、テキストを買って、勉強して、もっとまともな学校に行ける。
金が欲しい。
◆
だから僕は、ここに面接に来た。
「……お金、ねぇ。まーうちみたいな店には、そういう人もいるよ。君いくつ?」
「21……です」
「……」
「……」
「……そう。君がそう言うなら、そういうことにしておくよ。じゃあ早速今日から働いてもらうけど、いい?」
「もちろんです。よろしくお願いします」
金さえ稼げれば、その手段なんてどうでもよかった。
「お、見ない顔だね。新人さんかな~?」
「はい。はじめまして。今日から新しく入ったアオイと言います」
◆
僕が働き始めて数週間後のことだった。知らない部屋のベッドで目を覚ましたのは。
「!?」
「……起きた? どう? 初めてテイクアウトされた気分は」
「えっ……」
ていくあうと。初めて聞いた言葉だった。
「アオイちゃんってお酒弱いんだね。ちょっと煽ったら簡単にベロベロになって、私についていっちゃうなんて」
この女の人……。確か、今日僕を指名してきた「コウガサキ」って人だ。なんで、裸……?
得体の知れない恐怖で、僕は身をかばった。そして気づいた。自分が裸にされていることに。
「な……なんなんですかいったい! 僕をどうしようって……」
「アオイちゃん未成年でしょ。20歳より下」
「ち……違います」
「アオイちゃんはお金に困ってる。違う?」
「……はい」
「私の忠実な僕になってくれたら、お金あげる」
「ちゅーじつなしもべ……?」
「私の言うことなんでも聞くってこと。悪いこととか、こういうこととか、してほしいから」
「そうしたらお金……くれるんですか?」
「約束する」
◆
こうして僕は自分の個人情報を担保にすることで、甲ヶ崎華那の都合のいい手足となった。
いつしか彼女は化粧品会社『地序』を立ち上げ、僕は……。
スパイとして、天寿へ潜り込んだ。
「俺達は、校則なんかに縛られない! 自由の戦士! 人類の自由と平和のために、今! 立ち上がる!」
今日も、矢部井桐生が教卓を前にして演説していた。周りは、それに賛同する不良ばかり。担任は、顔を腫らして床に倒れ込んでいた。
窓ガラスは割られ、壁は傷だらけ。廊下では四六時中改造バイクが走り抜けている。
なぜ、こんな物騒な中学に通わないといけなかったのか。
主な原因は二つ。僕の成績が軒並み低いのと、貧困だ。
金だ。僕には金が必要なんだ。それさえあれば、テキストを買って、勉強して、もっとまともな学校に行ける。
金が欲しい。
◆
だから僕は、ここに面接に来た。
「……お金、ねぇ。まーうちみたいな店には、そういう人もいるよ。君いくつ?」
「21……です」
「……」
「……」
「……そう。君がそう言うなら、そういうことにしておくよ。じゃあ早速今日から働いてもらうけど、いい?」
「もちろんです。よろしくお願いします」
金さえ稼げれば、その手段なんてどうでもよかった。
「お、見ない顔だね。新人さんかな~?」
「はい。はじめまして。今日から新しく入ったアオイと言います」
◆
僕が働き始めて数週間後のことだった。知らない部屋のベッドで目を覚ましたのは。
「!?」
「……起きた? どう? 初めてテイクアウトされた気分は」
「えっ……」
ていくあうと。初めて聞いた言葉だった。
「アオイちゃんってお酒弱いんだね。ちょっと煽ったら簡単にベロベロになって、私についていっちゃうなんて」
この女の人……。確か、今日僕を指名してきた「コウガサキ」って人だ。なんで、裸……?
得体の知れない恐怖で、僕は身をかばった。そして気づいた。自分が裸にされていることに。
「な……なんなんですかいったい! 僕をどうしようって……」
「アオイちゃん未成年でしょ。20歳より下」
「ち……違います」
「アオイちゃんはお金に困ってる。違う?」
「……はい」
「私の忠実な僕になってくれたら、お金あげる」
「ちゅーじつなしもべ……?」
「私の言うことなんでも聞くってこと。悪いこととか、こういうこととか、してほしいから」
「そうしたらお金……くれるんですか?」
「約束する」
◆
こうして僕は自分の個人情報を担保にすることで、甲ヶ崎華那の都合のいい手足となった。
いつしか彼女は化粧品会社『地序』を立ち上げ、僕は……。
スパイとして、天寿へ潜り込んだ。
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