上 下
11 / 18

後編③

しおりを挟む

国の最北端、極寒の地。

至る所に魔物が幅を利かせて生息し、人など到底住める場所ではない辺境。

勇者はその地に小屋を建て、世俗を絶っていた。

暖炉もない凍えるような冷気に包まれた小屋だったが、寒さを感じていないのか、揺りかご椅子を漕いで、窓から見える外の景色をぼんやりと眺めることに、一日の大半を過ごしていた。

勇者の頭の中には、魔物討伐のことも、城での出来事も何もない。

思考の放棄。

魔物討伐、城での事、カレン……。

全てが勇者を追い詰めた結果、そうなり、人里離れた秘境に身を置いていた。

☆★☆

そんな日々をしばらく送っていたある日。

いつものように外の景色を眺めて、うつらうつら夢の世界に入りかけそうになったその時。

ドンドン………ドンドンドンッ!!

びゅうびゅうという猛吹雪に負けないぐらいに、扉をけたましく叩く音が。

(またか……)

魔物が小屋にある食べ物を求めて、襲撃することは珍しくなかった。

その度に返り討ちにしてきたので、ここ最近は襲撃もめっきり減ってきていたのだが……。

剣を握り、今にも破壊されそうな木扉をバンっと開けて、勢いのまま外敵に剣を振りかざした。

「——ヒッ!」
 
だが、あとほんの数センチというところで気がついた。

魔物だと思い込んでいたが、人である事に。

頭に雪を積らせ、鼻からカチコチに凍った鼻水をつけた武装した中年の兵士。
慌てて剣を下ろし、勇者は謝罪をした。

そして、どうしてこんなところまで来たのか、疑問を口にしたが、寒さで体をガタガタ振るわせるのを見て、質問は後だと思いとどまり、中に入れた。

☆★☆

温かいお茶を一気に飲み干した中年の兵士。

身体が温まってくると、頭を下げて勇者に感謝の意を述べ、自分は王の命を受けてココに来た。

——そして、迫りくる魔物の脅威を退けるべく、今一度国の為に力を貸してほしいと。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

スレイブズ

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:405pt お気に入り:13

底辺奴隷の逆襲譚

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:50

過激な百合の毒

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:242pt お気に入り:0

F級テイマーは数の暴力で世界を裏から支配する

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:2,237pt お気に入り:30

【R18】エンドレス~ペドフィリアの娯楽~

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:2,415pt お気に入り:24

会長様ははらみたい

BL / 連載中 24h.ポイント:106pt お気に入り:34

その日、女の子になった私。異世界転生かと思ったら、性別転生だった?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:327pt お気に入り:261

【R18】スライム調教

ホラー / 連載中 24h.ポイント:1,065pt お気に入り:28

処理中です...