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それは何?
しおりを挟む皇に弁当を貰った後、俺は売店に急いで直行した。
(やべぇ……。もう昼休みあとちょっとしかねーじゃん)
思ったよりも皇と居た時間が長かったせいで、昼休憩も残り半分しかない。
おかげで、さっきはあった長蛇の列も今はすっかりなくなっていて、列に並ばずに済んでからそれは良かったんだが……。
商品棚にたくさんあったはずの商品の大半が売り切れになっていた。
おかげで、
(詰んだ。……2つ買ってこいって言われたけど、塩結びとタラコしかない……)
西条の好きな鮭とイクラはもうなかった。
――遅いし、売り切れってどういう事? あり得ないんだけど!
……目に見えて怒られる光景が浮かぶ。俺が100%悪いんだけどさ。
しかし、ないよりはマシだろ。
仕方なく俺は、その不人気商品2つを手に取って、西条から預かったカードで会計を済まして、教室に大急ぎで戻った。
☆★☆
5限目開始15分前。
何とか教室にたどり着き、西条の席に向かう。
西条はいつも通りだった。
朝俺が登校してきた時と同じ。
みんなが友達同士でお喋りをしているのをそっちのけで、一人で、雑音をかき消すように、両耳にヘッドフォンを装着して、自作の英単語帳をペラペラとめくって、勉強していた。
そして、それは俺が席の前に立っても。
「西条……遅れてごめん! ちょっと一回列から抜けちゃって、さ。鮭とイクラ売り切れてた。だから、その……塩結びとタラコ買って来たんだけど……」
そっと机におにぎりを置いて、怒られるの承知で声を掛けてみたが、
「……あ、そ。なかったら、仕方がないわよ。買って来てくれてありがと。カードは?」
「……え? あ? あ、あるけど……」
「頂戴」
「ど、どうぞ」
「どうも」
意外にも何も起こらなかった。
拍子抜けだが、とにかく俺は言われた通り、おにぎりとカードを西条に手渡した。
そして、それっきり西条は俺に何も言わない。
勉強を一時中断して、ビリビリとおにぎりの包装ラップを引き取って、食事を始めた。
(……変だな。怒られるって思ったんだが。……逆にこうなると怖)
無言の圧を感じた俺。
どこか居心地の悪さを感じつつ、俺も食事を始めようと、皇から貰った2段弁当を机に置いてパカッと開けた瞬間。
後ろに目でも付いているんじゃないか、と思えるほど間髪を入れずに、
「――その赤い弁当は何かしら?」
西条の恐ろしく冷たい声がした。
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