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私が先輩を好きになった理由⑦(皇視点)
しおりを挟むでも、私がそう思った瞬間、水を差すように、タイムリミットは来ました。
……ブーン……ブーン……
「あ」
まるで、「そこまでよ」とでも言わんばかりに、先輩のポケットからバイブ音が鳴り響きました。
そして、スマホの画面を見た瞬間、先輩は背中にものさしでも入れられたのかな? って思えるぐらい、背筋をピーンと伸ばして、私に、
「や、やべっ! 西条からだ! ……で、出て良いかな?」
「……はい。全然良いですよ」
さっきまで私を慰めてくれた時とは全然違って、ソワソワしだす先輩。
私は仕方なく喉元まで出掛かった言葉を引込めました。
「ありがとう! あ、もしもし西条? 何?」
「――」
会話の相手である西条先輩が何を話しているのか私には聞こえてなかったです。
ですが、
「え? 今どこにいるかって?」
「――」
「……み、道草なんかしてねーよ!」
「―――」
「本当だって! ちゃんと今、言われたように渡したからさ! 嘘じゃねぇって!」
「————」
「……うん。……うん。え? 今もうバス停にいるの? 後、5分で来るっ!?」
「――」
「す、すぐに行くわっ!」
会話の内容は先輩の応答した分だけで、大体推測できました。
大方、私が泣いたせいで、その分時間をロスして、先輩が西条さんの所に戻ってこなかったから、心配して連絡してきた……。
そんな所でしょう。
先輩は電話を終えると、私にパンッと両手を合わせて、
「ごめん! 西条なんだけどさ、もう帰り支度、とっくに終わってるらしくて。……俺にも早く来いって。……なんか、さっき話そうとしてたけど……」
どうにもこうにも私は自分の気持ちを仕舞いこむしかありませんでした。
そもそも、まだ会って間もない先輩に、「もうちょっと一緒に居てください」なんて事。
私には言う度胸も資格も、その時は無かったですしね。
だから、私は、精一杯笑顔を作って、
「あ、いえ! 特に大したこと言うつもりじゃなかったんで、全然大丈夫です! ……それより、早く西条さんの所に行ったほうが良いんじゃないですか? 私ももう帰ろうって思ってるんで」
「そ、そっか! じゃあ、俺。うん、行くわ!」
そして、そう言うや否や、先輩は小走りで西条先輩の所に戻っていきました。
それが先輩との初めての出会いでした。
私が先輩を好きになった原点で、きっかけです。
先輩を本格的に意識したのはもう少し後なんですが、それはまた今度。
……今は、先輩にまずは私を意識してもらわないといけないので!
勢いで、一週間って制限設けちゃって時間もないですしね!
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