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まだ怒ってる
しおりを挟むあの後、結局紅葉は一度も口を聞いてくれなかった。
コンビニから弁当を買って、戻ってきた紅葉は、そのまま部屋に直行してしまったのだ。
俺が隠し事をしていたのが、やっぱり気に入らないみたいだ。
(皇の事なんか話してどうするんだよ……)
まあ、俺としてはこれが一番丸く収まると考えての事なんだが、事情を知らない紅葉には伝わないか。
でも、だからって正直に話すのも、なぁ……。
てか、なんで紅葉にそんな事で怒られないといけないんだ?
誰と付き合おうと俺の勝手だろ。
いちいち、誰と付き合っているって全部報告しない道理なんかない。
うん、絶対にそうだ。
そう考えると腹立ってきた。
……俺、悪くねーじゃん。
何が悲しくて、妹にあんな白い目でみられなくちゃいけないんだよ。くそぅ……。
誰か紅葉の機嫌の直し方教えてくれ、マジで。
俺は悶々とした気持ちのまま一晩を過ごして、ろくに眠れやしなかった。。
☆★☆
ジリリリ。
静寂を打ち破るようにうるさく鳴り響く目覚まし時計。
(うるさいなぁ……。後、5分……)
ようやく眠りにつけたと思ったのに、もう起きろ、だなんて理不尽すぎる。
後、5分ぐらい寝ても問題ない。まだ、6時じゃないか。
目覚まし時計を手でパンッと叩いて、音を消した。
ジリリリッ……!
「いい加減もう起きろよ、ねぼすけ」とでも言いたげに、何度も何度もしぶとく訴えかけてくる目覚まし時計君。
俺も、いい加減再三の催促にうんざりしてきて、折れた。
しぶしぶ身体を起こして、今何時かな、とさり気無く時計に目をやると、
7:30
「……は?」
――――見間違いか?
思わず、二度見して再度確認したが、時計の針は間違いなく7:30を示している。
……やべ。
遅刻するとは限らないが、朝飯を食べれば、ギリギリの時間だ。
一気に目が覚めた。
慌てて、制服に着替えながら、リビングに向かう。
——紅葉はとっくに食事中のようで、炊き立ての白ご飯を一人で食べていた。
今日は紅葉の担当日。
昨日の事もあって、少し不安だったけど、ちゃんと俺の分も食卓に並べられていた。
下を向いて、目は合わしてくれないけど。
「なんで、起こしてくれなかったんだよ。遅刻するじゃん」
味噌汁を一気に喉に流し込み、さりげなくテーブルの向かい側に座る紅葉に、話しかけた。
すると、紅葉はピタッと箸の動きを止めて、
「自分で起きないお兄が悪いよ。もう高2なのにいい加減私に起こされないと起きれないってどうなの?」
「うぐっ。ま、まあそうだな。俺が悪いな。アハハ……。でも、遅刻したらヤバいだろ。困ったときは助けてほしいなぁーなんて……」
「あっそ。今日私弁当お兄の分作ってないから、適当に購買で買えば? 隠し事なんかするお兄の為に弁当まで作れないよ」
「へ」
やっぱりまだ怒ってる。
俺が凹んでいると、紅葉は「じゃ、そういうことなんで、よろしく。ごちそうさまでした」と手を合わせて食器を流しに置き、制鞄を持って、先に学校へ向かってしまった。
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