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女の匂いがする!
しおりを挟む帰り道。
いつもとなんら変わらない道を歩きつつも、俺は皇の事を思い出していた。
告白されるというだけでも、俺にはキャパシティーオーバーなのに、キスされるなんて……。
しかも、あんな可愛い後輩に。
嬉しくないはずがない。
タイミングが違ったら、俺は二つ返事で告白にOKを出していただろう。
だけど、俺はみどりの事が好きで、それは振られた今も変わらない。
未練たらたらと、皇に言われたけど、そうだ。
否定はしない。
だけど、しょうがないじゃないか。
好きなんだから。
そんな気持ちで、皇の告白を受け入れるわけにはいかない。
それこそ、失礼だと俺は思う。
☆★☆
――考え事をしていたせいか、体感であっという間に家に着いた。
一軒家の我が家。
父さんは単身赴任で海外に居て、今は俺と母さん、それと一つ下の妹の紅葉と暮らしている。
まあ、母さんはバリバリのキャリアウーマンでいつも夜遅くに帰ってくるから、実質紅葉との二人ぐらいだけど。
上着のポケットから鍵を取り出して、家に入る。
と、同時。
「遅い! 今何時だと思っているの? 私、部活から帰ってきてもうお腹ペコペコなんだけど? 今日、お兄が作る日! 分かってる?」
「……わ、わりぃ。すぐ、作るわ」
「ほんと、早くしてよね! 私、リビングでテレビ見てるから。出来たら、呼んで」
「……了解」
時刻は六時半を回っており、帰宅部の俺とは違って、バリバリの陸上部に所属している紅葉が、部活のジャージ姿で、カンカンに怒っていた。
我が家では、食事を作るのは当番制。
そして、今日は俺の日。
紅葉が怒るのは無理もない。
俺は、慌てて靴を脱ぎ捨てて、鞄を置き、台所に上がろうとしたが、
「ねえ、ちょっと待って」
「どうした?」
さっきまで、怒っていた紅葉が、急にシュンとした声で呼び止めた。
振り返ると、紅葉が俺の服を指差して、顔を近づけてクンクンと鼻を鳴らした。
そして、ジロッと俺を怪しむような目で、
「……お兄から変な匂いがするんだけど。何の匂い?」
「気のせいだろ」
「気のせいじゃない! お兄から…………女の匂いがする……!」
「は、はぁ~~~!? 何だよ、女の匂いって……。言い方!」
すると、紅葉は「嘘でしょ……」と、目を丸くしたかと思えば、次の瞬間には冷やかすように、ツンツンと肘で俺を小突いて、
「それで、それで、相手は誰? まさか、ついにみどりちゃんと――!」
一人、盛り上がって半分自分の世界に入りだした紅葉に
「ちげぇよ」
俺は紅葉の頭にチョップして、紅葉から逃げるように台所で夕飯の準備を始めた。
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