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第一章 エトワール学園へようこそ

聖印

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「海部様、取り急ぎお伝えしたい件がございまして…」
「どうした」

校内探索をしているところ、部屋で日高の帰りをまっているはずの慎之介が顔色を変えて歩み寄ってきた。

「姫が外部と接触しました」
「所属は」
「スウェーデンです」
「聖印と踏んでの接触である可能性は?」
「話を聞いた限りではその兆候はございません。ただその相手に問題がございまして…」
「相手は誰だ」
「ヴェルナドッテ=オスカル三世、王位継承権第3位の王族です」

俺は頭をかかえる。なんでよりによって王族なんだっ!

「問題はまだございまして……」
「・・・まだあるのか」
「次の復活祭、オスカル三世と同行することになっております」
「ああ、そうか。・・・王族だったよな?」
「はい、本国に帰国して復活祭を執り行う義務がある立場ですので、その・・・」
「それに同行するという認識でよいのだな」
「はい…」
「まったく世話の焼ける姫様だ。こちらが苦労しているのに外出手段の方から勝手にやってくるとは。王族の外交特権ならどこの国も関与できまい。慎之介、お前はオスカル3世の動きに注視しろ。単なる恋心であれば問題ない。好きにさせておけ。ここで復活祭を送るよりむしろ好都合だ。ここは宗教色が強すぎる。ヘタに関与して覚醒したら後手を踏む。それにこれで学園側の出方も見ることができる。ここが敵か味方になるかで事は大きく変わってくるからな」
「では早速行動観測に移ります」

 俺は思案を張り巡らせた。万が一の緊急回避ルートにはなるかもしれないが、できれば使いたくはない。だが死との2択といった極限選択であれば選ばざるを得ないか。

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 授業選択期間を終えたころ、復活祭の準備が行われる。エトワールでも復活祭を行うみたいで、写真でみたことのあるかわいらしい卵が飾られていた。宗教の自由は保障されているので無論強制参加ではないが多くの生徒は参加するみたいだ。ただ大半は単なるお祭として参加するようで、それはそれで楽しそうでもあった。
 復活祭が終われば本格的な学園生活の始まりだ。私は約束どおりオスカルと過ごすことになっている。小さい自家用機があるから大丈夫だよって言ってたけど、貴族って みんなそういうモノなのかな?欧州基準がいまいちわからない。

 小泉さまの言うとおり、外出届けを提出する。3日ほどして許可がおりた。

「それでは、行ってまいりますっ。お土産、何か買ってきますね!」
「いってらっしゃい。存分に楽しんできてください。どうぞお気をつけて」
「海部さまも、いってきますね?」
「ああ、ちゃんと帰って来いよ」
「はいっ!」
(いよいよだなぁ、一応お泊りデートになるのかな?)


「大丈夫でしょうか?」
「外出許可を出したという時点で学園側もスウェーデンは白と見ているのだろう」
「そうですが……」
「なに、犬に噛まれたとでも思えば良い。魔力供給もそろそろ必要になる年頃だ。その先は本人次第だ。俺達が口を挟むことではない」
「海部様は…」
「なんだ」
「いえ。何もありません」
「・・・そうだな、強いてあげれば 妹 だな。流石に恋愛感情を抱く年ではない。安心しろ。俺は少女性愛者ではない。お前はどうなのだ?」
「そうですね、もし自分に妹がいれば、今のような心境になるのかもしれません」

「しかし2週間たっても本国側からなんの音沙汰もないのは少々気掛かりではあるな」
「海部様はどこまでご存知なのですか?この計画の全容」
「正直なところ、ほとんど聞かされておらん」
「私もですよ。私達は私達のできることをするしかないようですね」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「おはようっ、詩織!」
「おはようっ、オスカル。すごい車だね?」
「ん?そうなのかな?日本では珍しいのかい?」
「んー、あまり見かけないかな?」

 リムジンって言うのかな?にゅよーーんと長い車が門の前に停まっていた。ここからエディンバラ空港までは車で1時間くらいかかるらしい。そこから飛行機で2時間の旅だ。飛行機で2時間だと東京ー北海道より近いんだよね。
 オスカルとの会話はすごく楽しい。気を使わないでいいのもあるけど、私の知らないことをいっぱい知っている。車の中での1時間はすぐに過ぎていった。
 空港について出迎えの人たちと合流する。そして案内されるがままについて行く。貴族だしVIP待遇なんだろうとは思っていたけど、なんかノーチェックで飛行機まで到着してしまった。国境がない=電車と同じ  ならこうなるのかな?
 あとパパラッチというものを始めて見た。オスカル君、君はもしかして大物貴族なのかい?わたし普通の服できちゃったけど大丈夫なんだろうか?

「・・・・エコノミーとぜんぜん違う」
「詩織はこういの嫌いなの?」
「嫌いとか好きとかじゃないけど、なんていうか、別世界?」
(わたし窓際がいい、とかそんなレベルじゃなかった。)

 自家用機って、こういうことだったんだね。双発プロペラ機をイメージしてたけどここまできてさすがのわたしもオスカルの立場が見えてきた。王族だ、この人。

(うぅ、わたしどうなっちゃうんだろう?気分はもうまな板の上のお魚さんだよぉ)

 空港についてからも出迎えとかTV局なのか、カメラがまわっていたり、すでにわたしは地に足がついていない、そんな状態だった。そして到着した。我が家、どうみても宮殿です。ありがとうございました。

「すてきな家ですね?博物館かな?」
「そういえば、ちゃんと話てなかったね。ごめん詩織。おどかすつもりはなかったんだ。でも身分を明かすと詩織との距離がはなれそうで、、」
「ううん、オスカルはオスカルだよ。でもこの服はまずいかなってちょっと後悔してるかな?」

 わたしはどちらかと言うと動きやすい普段着をチョイスしてここまで来てしまったことを、少し後悔していた。

「それじゃまずショッピングに行こう!」
(だめだ、いまのオスカルだと店ごと買い上げちゃいそうだっ)
「おちついて、オスカルっ。約束してた観光が先だよっ!」
「そうだったね、そこで何かいいものが見つかれば、お詫びにプレゼントさせてよっ!」
「それでオスカルの気がすむなら、それでいいよっ」

 そういって入っていくのはストックホルム宮殿、オスカル君の家じゃないですか!?
 たしかに宮殿見てまわりたいとは言ったけど。
(ここはもうわりきって普段みれない宮廷美術とか、ファンタジーな世界観を堪能しよう。)

 オスカルが博識なのもこれで合点がいった。しかし広い。とても1日で見て回れる気がしない。オスカルがこっちだよ~手招きするのでそちらへ駆け寄ると、部屋1面に洋服がならんでいる。どれでもすきなのえらんでねっといつもの天使の笑顔を向けてくる。おそらくこの後、他の王族の方々との面会があるかもしれないので、ちゃんとしたドレスに着替えさせてもらう。生まれてはじめてメイドさんにお洋服きせてもらった。だんだん後戻りできないところまできちゃってる実感はあった。

 わたしが模様替えしている間にオスカルも正装に着替えており、そこにはいつもと違う、王子様としてのオスカルが出迎えてくれた。

「詩織、すごく似合ってるよ。本物のお姫様みたいだ」
「オスカルもいつもとぜんぜんちがうね?本物の王子様みたいだよ?」
「僕は本物だけどね?」

 くすくすわらいあう。オスカルはスッっと膝をおり、わたしの手を取って手の甲に口付けをした。

「今日は来てくれてありがとう、詩織。心から歓迎するよ」
「ありがとう、オスカル。今日は存分に楽しませてもらうわね」

 それからほどなくして現国王との謁見、もうこの辺りからあまり記憶がなかった。精一杯の演技、自分じゃない自分を演じる。映画や小説の中にでもいるような、自分の持てる限りの知識や経験をフル動員して立ち居振舞う。どうしてこんなにがんばっているのかさえもわからない。国益とか考える年でもないのに。気がついたら寝室に居た。隣にはオスカルが居る。 

「詩織、今日は疲れたんじゃない?」
「えっ、うん、、、。ちょっと緊張しすぎて、頭くらくらするかも」
「大丈夫?」

 やさしく肩を抱き寄せるオスカル。もう覚悟きめなきゃいけないのかな?これってもうそういうことなんだよね?

「ありがとう、大丈夫だよ」

YESともNOとも答えないわたしにオスカルも、すこし困った様子だった。なんて声かけるのが正解なんだろう。

「明日は湖、見に行こう。すごく綺麗なんだよ?詩織に見せてあげたいんだ」
「うん」

 オスカルの手がやさしくわたしを触れてくる。

「今夜は、側に居ていいかな?」
「うん、いいよ」

 オスカルはそっとわたしを横たえ、そして手を握り締めてやさしく語り始めた。 

「僕はね、詩織と出会ってまだ少ししか経っていない。でも君のことを大好きになってしまったんだ。他のだれよりも、君のことを愛している。僕の胸の中は君でいっぱいなんだよ。でも君の中には僕じゃないだれかがずっと居るんだ。今もその人が君の中にいて、君を守っているんだ。だから僕は今の詩織を見守ることしかできない。でもね、僕は君をあきらめるつもりは無いし、これからも愛し続けると思う。だから待っているよ。そしてわがままを聞いてくれるなら、僕のことも見続けてほしい。いつかその人より君にふさわしい人になってみせるから」

 オスカルはそう言うとわたしに羽のようにかるい布団をかけて、そっとおやすみとつぶやき頬にキスをしてくれた。君が眠るまで、側に居させて。やさしい瞳で語りかけてくる。 

(オスカル、どうしてわたしなの?)

 わたしはそのまま深い眠りへと誘われていった。




 次の日、約束どおりメーラレン湖へと出かけた。

 北欧神話の起源巡り。知らない物語にわたしは夢中になった。いろいろな物語を教えてくれるオスカル。ギュルビィ王の話からはじまり、オーディン、ゲフィオン、アース神族、ヘイムスクリングラ、オスカル自身もナポレオンの遠い血縁にあたることを知った。

「あまり街の中は案内できなかったけど、次に来るときはもっといろんな場所、見せてあげるよっ」
「うんっ、楽しみにしてるねっ!」

 車窓から流れる街の風景を名残惜しそうに眺める。こうして短いバカンスはおわり、わたし達は本格的な学園生活をおくることとなった。



王立エトワール魔法学園

 そのカリキュラムの中には当然実技も含まれてくる。そのなかでもやはり盛り上がるのが国別対抗の模擬戦だ。結果は直接成績へと反映されるため、どの国も必死である。だけどそれ以上に国としてのメンツが常勝不敗を求めてくる。
 今日は○○○と○○○とがマッチングする、とか  ○○○が○○○に負けた、とかそういった話が連日食堂で飛び交っている。そしてそんなわたし達も明日、はじめての模擬戦に参加することとなっている。

 それなのに部屋でまったりしている二人に問いかける。

「あの、あしたって模擬戦ですよね?準備とかしなくて大丈夫なんですか?」
「準備?模擬戦で準備してどうする?」

 海部さまは、読んでいる雑誌から目を切り、こいつは何を言っているのだ?そんな眼差しをこちらに向けつつそう答えてくださった。

「え、、でも成績に反映するんですよ?」
「日本代表には成績優秀者がいる。そいつが居る限り落第点はない」
「わたしのテストの点数なんてまぐれですよ?どうせすぐに抜かれちゃいます」
「大丈夫だ。抜かりはない」
「どこにそんな根拠があるんですかっ!」

 わたしはちょっと子供っぽく、ぷりぷり怒ったように海部さまへと問いかけた。

「日高は努力家だ。日本の日高がこと学業において他国に負けるはずが無い」
「海部さま、かいかぶりすぎですっ!」

 海部さまは事も無げに、そう答えて再び見ていた雑誌の続きを読み始めた。

「日高さん、海部様の仰るとおり、模擬戦です。手の内を見せる必要はありません。負けなければいいのです。無理に勝ちにいく必要もありません」
「そういうものなのですか?小泉さま」
「模擬戦に全力をだして勝ちに行くのは愚と私も海部様に同意しますね」

 どうやら小泉さまも海部さまと同意見みたいだ。あれ?わたし一人でもりあがちゃってる?もしかして?

「では明日、わたしは何をすればよいのでしょう?」
「何もするな、じっとしてろ。端から戦力になるとはおもっとらん」

海部さまは雑誌を読みながら端的に命令してくる。

「ひどいですね?」
「事実を言ったまでだ。うごかれると逆に迷惑だ」
「ううっ…」
(は、反論できないっ!)

「そうですね、日高さんは情報収集に徹してください」
「情報収集ですか?」
「はい、相手の使用武器や魔法、行動パターン、情報を制するものが戦いを制します。これは重要な任務ですよ?」
「はいっ、かしこまりましたっ!」


「あと、そろそろ教えていただきたいのですが?」
「何をだ?」
「聖印です。聖印って何なのですか?」
「聖印は、聖印だ」
「海部さま、答えになってませんっ。発動したらまずいんですよね?知りませんよ?模擬戦で勝手に発動しちゃっても?」 

 海部さまは小さくため息をついて言葉を続けた。

「ロストフォークロア、失われし伝承という意味だ。真実はだれにもわからん。ただ言える事はお前の人生を確実に変えてしまうということだ。知らずに過ごすなら今のお前は今のままだ。だが知ることによりお前の前に2つの選択肢が現れる。それでも聞くか?」

 いきなりの爆弾発言にわたしはすこしたじろいだ。今の自分の人生に不満はない。毎日充実してる。でも胸の中にぽっかりと空いた穴、それはいつも感じていた。

「うっ・・・、それでも、やっぱり知りたいです。自分のことですので」
「ならば俺の知る限りを教えてやろう」

 少し間をおいて海部さまは語り始めた。

「有史以来、時代をかえる節目が何度も訪れている。それは救世主とよばれることもあれば絶対的な王として現れることもある。歴史研究家によって認識の差異はあれ、時代の節目に関わっているのが絶対的な魔力だ。あるものは海を割り、あるものは世界の地図を塗り替えた。その中である一定の法則を見出した歴史家が提唱したのが聖剣の存在だ。天啓により聖剣と比喩される絶大な魔力を所持する男子、その男子と交わりし女子を聖印と呼ぶ」
「本来、魔力はその体内にあるとされる器に蓄積される。だが聖剣と交わりし女子はその聖剣の魔力量に耐え切れず器を消失する。器の消失自体はなにも聖剣に限った話ではない。器として未熟な幼年期での性交渉でも容易に器は破損する。ただ聖剣により器が消失した場合、それは消失ではなく棚落ちという状態になり、ようは底がぬけただけで無限に魔力を蓄積できるようになる。体内にではなく体外に魔力を蓄積するようになる。今のお前がそれだ」
「無論そのようなものただの語り草、伝説の御伽噺、誰もがそう思っていた。俺もそう思っていた。お前に会うまではな」
「そして聖印は魔法を発動したときに何らかの特殊固体として具現化する。それは俺にもわからん」
「お前が聖印であることが世に知れれば、世界がお前を狙う。お前を奪う。お前を利用しようとする。お前を殺そうとするものも現れるだろう。幸いお前が聖印であることを知っているのは俺と小泉、学園側の極少数と俺は見ている」

「わ、わたし……また魔法つかえるように…なるんですか?」

「俺の話、聞いていたか?使える使えないの2択であれば使える状態にある。だが従来の魔力行使ではなんら発動しないだろう。何がトリガーなのか、それは誰にもわからん」
「だから日高、お前は魔法を使うな。使おうと思うな」
(流石に12歳の少女が受け止めるには厳しすぎる現実か。)
「安心しろ。少なくともここにお前が居る3年間は、俺がお前を守ってやる。日高、こっちに来い」

「はい。なんでしょう?」
「後ろを向け?」
 
 わたしは海部さまの前でクルリと身を翻し背を向けた。

「?こうですか?」
「髪をあげろ」 

 わたしは言われるがままに髪を持ち上げてみる。

「?こうですか?」
「こうだ。そのままうごくな」
 
 海部さまはぐいっと髪をもちあげて、それをキープするよう指示してきた。
 そしてわたしの首にネックレスをつけてくれた。

「あの、これは?」

「守りの加護がこめられた魔術具だ。用心にこしたことはない。常時つけていろ。くれてやる」
「あ、ありがとうございます……」

 それは青い青い、海の青さを凝縮したような、青い輝きを放ったネックレスだった。 

「礼には及ばん。お前が狙われるのが今の日本選抜最大の弱点だからな」
「…そうでしたね」
(うわぁ、生まれて初めての魔術具だ。)

「海部さま。これってどうやって使うんですか?」
「つかわんでいい。もってろ。魔法は何があっても使うな。厳命だ」
「はい。。」
(また厳命されてしまったっ…!)

「さて、もうこんな時間か。お子様はもう寝ろ」
「お、お子様って!それにまだ22時ですっ!」
「ここからは大人の時間だ」

そういって海部さまはウイスキーを取り出した。

「最後に1つだけ聞かせてください。お二人は私が聖印だから、その、、やさしくしてくれるのですか?」

「俺はお前が聖印であることを知らずにここへ来た。それが答えだ」
「私もそうですよ。聖印であるかないかは関係ありません。日高さんが私たちの姫であることは変わりませんよ」

「はい。。ありがとうございます、、、おやすみなさい」

 私は部屋にもどって、司くんへの手紙を書き始めた。止まってた時計の針が動き出した、そんな気がした。



「よろしいのですか?海部様」
「かまわん。日高は利口だ。知って自分で対処してもらったほうが動きやすい」

「聖印の件は事実を知らせておく必要があるという事に関しては私も同意見です。ただあの首飾り、あれは国宝パシフィックブルー、政変の最中、失われたと思われていたモノをどうして……」

「今回の件で叔父より授かった。お前も知っているであろう。叔父達が荷担した一大政変劇を」
「元々あれは初代総理大臣を勤めた伊藤文博暗殺事件を嘆いた明治天皇が事件当時、総理大臣を務めていた桂一郎に授けたのが始まりとされている。それ以降、歴代総理の証として受け継がれてきた」
「時は流れ当時の政策に異を唱えた叔父は秘かに民守党との密約に応じた。そして党本部よりパシフィックブルーを持ち出したのだ。民守はそれにあわせ内閣不信任決議を発動、それによって所有権が一時的に無効になったパシフィックブルーの名義を上書きし、その証をもって政変を起こす予定だったが、造反に合い政界を追われることとなった。俗に言う小沢の乱だ」

「無論存じ上げております。そのパシフィックロストによって党内で不和が生じ、大幅な議数を失うこととなり一党独裁が不可能となった我ら自民党は孔明党のような宗教集団の手先政党と連立を組む事態となり、未だにそれが解消できず意思決定権の脆弱なねじれ状態に陥っております。どうしてその総理の証と言えるものを日高さんにもたせたのですか?私は実物を見るのすら初めてですよ」

「聖印はそこまでして守らねばならぬ存在ということであろう。敗戦以降、日本人としての誇りを失い、GHQ100年計画で今にも滅ぼうとしているわが日本を救える最後の希望として」

「海部様は聖剣をもってして世界のパワーバランスを変えようとお考えなのですか?」

「聖剣の逸話が真実であれば、世界は一変する。この日本を中心に。日高が聖剣の1stドリップなのか2ndドリップなのかは聖剣自身にしかわからん。ただ確実に言える事は平民で聖印の数はそう多くは無いということだ。それ故、日高はなんとしても無事日本に連れて帰る必要がある。石一つであれの命が救えるなら安いものだ。そしてその聖剣の所持者もすでに特定できている」

そういって海部様は1枚のメモを寄越して来た。

「この者が聖剣所持者で間違いないのでしょうか?」

「100%とは断言できん。日高には悪いとおもったが部屋を覗かせてもらった。手紙の送り先、家族ではない異性、ほぼ間違いないであろう。中身までは確認しとらん。送り先までだ。ピーピングは趣味ではないのでな」

そこにはこう書かれていた。


「・・・天使  司」
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