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序章 詩織

困った生活の始まり

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 それから僕はこれからの生活のことを考えた。

 (○′ I `)。oO(うーん、どうしよう……)

 はりきって “ 華族をブチのめすッ! ” とは言ったものの、このままではジリ貧になるのは分かりきっていた。確かにある程度の生活費は残してくれてはいる。とはいえ年を越せるかどうか、その程度である。光熱費に関しては引き落としだ。これは正直引き落とし口座の残高がわからない以上なんとも言えないがある程度節約を意識して使っていくしかない。

 (○′ I `)。oO(神社、どうしよう?)

 神社の運営は自治会に委ねよう。子供二人でどうにかするには事が大き過ぎる。父系の親族とはもう切れているし母系の親族は遠縁しか居ない。事情を説明してなんとか存続させるようにしないと、ここをなくすようなことがあってはならない。

 あと学校、来春からは区立に編入だ。到底私立の学費は到底工面できるとは思えない。

 (´-`)。oO(それと生活費、だよな…)

 たしか2組の芹沢さんの家が新聞配達の会社を経営してたはずだ。今度アルバイトさせてもらえないか相談してみよう。光もきっと私もやると言い出しそうだけど、流石に光を夜明け前の早朝、一人で街の中を とか危険すぎる。光には苦労をかけたくないけどそれだと本人が納得してくれないだろうし、ここで巫女としてこの場所を守ってもらおう。

子供なりに考えて少しずつ問題点を解決していく。あとはなるように成れ、だ。

 (◎-ω-)。oO(とりあえずこんなもんか……)

 次の日、僕は問題点を解決していくべく行動にうつった。まずは2組だ。休み時間に2組へと足を向ける。他のクラスの生徒がやってくることは少ないので僕が2組の教室へ入ってくるのは十分に目立つ行為ではあったが、今はそうも言ってられない。
すこしざわめく教室、“ 天使あまつか君よ ” と黄色い声をあげながら騒ぐ女子の中から芹沢さんを探し、そして歩を進める。

「芹沢さん」
「は、はい」

 僕に声をかけられ背筋をピッっと伸ばす。さすがにここで話す内容ではないので僕は場所を変えるよう提案した。

「ちょっと、いいかな」
「!・・・はい」

 あ、何か誤解されちゃったかも。さらにざわめきたつ女子を気にしつつも僕は彼女を教室から連れ出した。

「何か、私に用事  でも、あるの  かな…」 

声がうわずってる。

「うん…実は……」

 芹沢さんの瞳がちいさく震えながら僕を捕らえている。あぁ、完全に告白されると誤解してる。気まずいな。。僕はそんなことを考えつつ一拍おいて話を続けた。

「実は、相談したいことがあるんだ。」
「・・・相談?」
「これから話すことは誰にも言わないで欲しいんだけど……」

 僕はかいつまんで事の経緯と今の僕の状況を説明した。愛の告白ではないけれど、僕と秘密を共有することだけでも芹沢さんにとっては特別なことであるみたいで快く協力を受諾してくれた。

「うん、帰ったらパパに相談してみるよ。まかせて、絶対に大丈夫だからっ」

 そういって芹沢さんは胸の前でぐっとにぎりこぶしをつくってみせる。僕はその両手を覆うように手をそえて笑顔でありがとう、と言葉を添えた。芹沢さんの耳が赤くなっているのがわかった。自分でも打算的だと理解はしている。でも全ては光のためだ。僕は自分にそういい聞かせて自分の行動を肯定していった。

 放課後帰り道、次は自治会だ。会長は確か商店街の和菓子屋さんだったはず。店に入ると店主らしきその女性が出てきてくれた。柏木のおばさんとは何度も顔をあわせている。おばさんも僕のことを知ってくれているので話はすぐに始まった。

「おや、司君  今日は一人かい?」
「こんにちは、おばさん。今日はちょっと話ておきたいことがありまして」

「━━、もう警察には届け出てるんだね。」

「はい、3日前に届け出てます。連絡が途絶えてからは10日以上経っています。届出もむしろ警察の方から打診うけたくらいです」

「事情はわかったよ。神社の運営のほうは次の自治会で皆で相談するよ。私の一存では決めれないからね。でも安心しな。私がなんとかしてあげるから。それより私はあんた達のこれからの生活のほうが心配だよ。本当に大丈夫なのかい?」

「頼れる親族が居ないので自分達でやっていけるとこまでやってみます。でも正直不安な気持ちでいっぱいです…」

「いつでも私を頼りな。先生にはいつもお世話になっていたからね。あんた達が路頭に迷うなんてこと絶対にさせやしないよ」

 やさしい言葉に正直胸が詰まる想いをした。その空気を悟ったのか、おばさんはやさしく僕を抱きしめてくれた。不安な想いが涙となってあふれて来る。いままで気丈にふるまってはいたが僕も不安だったんだ。でも身近な大人に話を聞いてもらって言葉をかけてもらい、その重圧から少し解放されていくのがわかった。

 僕達はまだ子供なんだ。
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