ラグナロク 神々のきまぐれ

ちゃばしら

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序章 詩織

序幕

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 その日は静かな朝だった。


 日曜日、いつも通り母さんは赤いマーチに乗って出かけていった。
 僕が作ったお弁当をもって。


「いってきます」
「いってらっしゃーい」


 何気ない会話
 母さんはこちらを振り向いてニコリと微笑みかけると、手を振り、車へと乗り込んでいった。

 キュククククッ
 いつもの聞きなれたセルモーターの音
 マフラーに穴でも開いているのか、ちょっとみすぼらしい排気音を響かせながらボボボボーーと遠ざかるマフラーの音を僕は聞いていた。

 光は食べるのも寝るのも大好きだ。
 日曜の朝は、いつもゆっくりしてる。


ーririririri

 しばらくして家の電話が鳴った。

「もしもしーーー」


 その電話の音で光も目を覚ましたようだ。
 眠そうな目をこすりながら、パジャマ姿のまま部屋から出てきた。

「おはよう、、おにいちゃん、、ん?どしたの?」
「えっ、、ううん、母さん、急な出張が入っちゃったみたいでね、しばらく帰れないって、電話があったんだよ」
「そなんだ、、じゃぁしばらく二人っきりだね?」

 光は身を寄せてくる。
 僕は悟られないように、そんな光をぎゅっと抱きしめた。

 電話の内容は、母さんが華族に連れて行かれた、という内容だった。

 2年前の父さんと同じ、またしても華族が、僕から家族を奪って行ったんだ・・・!

 母さんは父さんと同じく魔法研究者だった。そして父さんと同じ魔法の平和利用を研究する研究者でもあった。二人は大学時代に知り合い、互いの考え方に共鳴し、尊敬しあい、そして惹かれ、愛し合ったと聞かされたことがある。

 でも父さんも母さんも魔力所持者という訳ではなかった。おそらくは研究内容、その内容が左派的であったためだろう。華族はその権限で僕達の両親を拉致したんだ。

 沸々と怒りが込み上げてくる。
 恐怖よりも先に、僕はこの感情に支配されて行った。

「おにいちゃん……?」

 僕は表へ飛び出した。
 そして睨みつける。
 その小さな瞳に映し出されていたのは街の遠くにある大きな壁だった。

 あの壁、あの壁の向こうに華族が居る。
 東京の街の中央にそびえる大きな壁

「見ていろ、、いつか、、いつかこの僕が、、この俺が、、お前らをぶちのめしてやるッ・・・!」


ーーこの日から、僕の長い長い戦いの日々が始まった。
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