ラグナロク 神々のきまぐれ

ちゃばしら

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プロローグ 聖剣誕生

プロローグ とある兄妹

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そして、時を同じくして 日本 ━━━ 


「神様、お願いがあります。今日1日だけ兄であることを辞めさせてください」


 叶うはずのない願い。
 それは自分でもわかっていた。僕には妹がいる。最愛の妹。
 そんな妹の夢、いつも口癖のように唱えている言葉


「私はね、将来おにいちゃんのお嫁さんになるんだよ」


 無邪気に笑いながら
 疑問を抱くこともなく

 今日は妹の、いや僕達の誕生日だ。

 自分の記憶、一番古い記憶がどれなのかはさだかではない。でもどのページをめくっても側には妹がいた。

 叶わない、そうと判っていても、叶えてあげたい想い

もう一度、眼を閉じ、神様にお願いをした。

やわらかい髪、やさしい瞳、僕を呼ぶ声、いつもあとをついてくる姿


ーーその刹那、まばゆい光に包まれた感覚を覚える。
ーーそしてそれは溶け込むように意識の中へと入って行く。
ーー驚いて眼を開けるが、そこにはいつもの境内が映し出されていた。

「何、いまのは……」


 天使あまつか つかさ 11歳
 ぼくは妹が好きだ。大好きだ。
 三度のご飯より愛している。

 僕はこの神社で生まれ育った。幼いころから父にいろんな神様の話を聞かされていた。どれも興味深く、神様も実は完璧ではなく人情味あふれる身近な存在なんだと自分の中での神様とはそういう存在だった。

 そして神様と何気ない(一方的な)会話が日課にもなっていた。普段は日頃の出来事に感謝することが多い。この世のすべてのものを最初につくったのは神様達だ。だからそのなかで起こったささやかな幸せを、神様に感謝するようになっていた。そして時折、わがままなお願いをすることもあった。

 でも今のような感覚を覚えるのは初めてだった。

 
 これが11月11日11歳の誕生日、最初の出来事だった。


その日の夜━━━

つかさひかり、誕生日おめでとう」

 母さんはそう言って僕達にプレゼントを渡してくれた。僕がお願いしていたのは魔法に関する本だった。この手の書籍の流通は極めて少ないが、母さんは魔法学の研究者ということもありどこからか入手してくれたみたいだ。やっぱり魔力がある以上、多少なりとも興味はある。
 そうだ、僕には魔力が宿っているんだ。ちなみに誰でも魔力を持っているというわけではない。一般人では寧ろ魔力持ちのほうが圧倒的に少ない。故に魔法書なんて需要もなく、図書館でもあまり見かけない。ちなみに母さんも魔法学者だけど魔力はまったくなかった。

「司、この本で魔法について勉強するのはいいけれど、絶対に人前で魔法を使ったらダメだよ?」
「わかってるよ母さん、ありがとう!」
「はい、光はこっちね」
「ありがとうお母さんっ!」

 光もさっそく包みを開ける。中からでてきたのは野球のクラブだった。

「光、野球はじめるの??」
「うん!私もおにいちゃんと一緒に野球するんだよっ!」

 ニコニコしながらそう答える。
 たしかに光の運動センスはすごい。なんでも半端なくこなす。もはやでたらめな領域の運動神経というのは兄である僕が1番認めるところではあるけれど。

「僕のチーム、男しかいないよ?」
「あれ?おにいちゃん、もしかしてやきもち?」

 光は誰が見てもかわいい。十人いれば十一人かわいいと答えるくらいにかわいい。最近では女の子ばっかりのチームもあるけれど、光は僕の所属するリトルリーグに入るつもりみたいだ。

「光が入ってくると4番でエースの座、奪われるかもしれないって思っただけだよ」
「おにいちゃんがキャッチャーやってくれるならピッチャーしてあげてもいいよ?」

 得意げに笑顔を見せてくる。

「ねね、おにいちゃん。キャッチボールしようよっ」
「もう外、暗いよ」
「すこしだけ、ね、おねがい~」

 そう言って腕を引っ張る。

「うん、わかったよ」

 僕は母さんに目をやってから答えた。
 母さんはやれやれ、といった表情を見せてから、

「二人とも気をつけるんだよ」
「「 はーい 」」



「さすが光、スジがいいね」
「これくらい誰にだってできるよ~」

 光はそういいながらテンポ良くボールを投げ返す。とても初めてグローブをつけたとは思えない。とはいえ辺りは真っ暗で境内の外灯と月明かりだけが頼りだったのでふとボールを見失い取り損ねる。

「あ、ごめんっ」

 取り損ねたボールが転々と転がっていく。あわてて二人でそれを追うがどうやら完全に見失ってしまったようだ。

「ごめんなさい、おにいちゃん…」
「気にすることないよ。明日明るくなったらまた探そう」
「ううん、もう少し探す」

(そういえばまだ光にプレゼントを渡してなかったな。渡そうと思ってポケットに入れっぱなしになってるや…。今渡してしまおう。)
 
「光。誕生日おめでとう」
「わぁ、ありがとう~♪」

 僕は光にシュシュをプレゼントした。光の髪は決して長くはないけれど、店の前で欲しそうにしていたのを見かけたからだ。光はシュシュを手首につけて「一生大事にするね」と答えてくれた。笑顔を沿えて。そんな笑顔を月明かりが照らす。

「私もあるんだよ、プレゼント」

 そう言って光は少しこちらに身を寄せてきたかとおもえば、すぐに唇を重ねてきた。
 一瞬何が起きたか判らなかった。
 一度はなれ、再度重なり合う。次は理解できた。何が起きているのか。

「光・・・」

 光は目を細めてやさしく微笑んできた。そして3度目のキスをした。そしてそのあとこう言葉を続けた。

「キスの先もしちゃおっか……」


 光が小悪魔イタズラっぽく、身を寄せてたずねてくる。

「えっ……」
 
 今までの人生で感じたことのないくらいのドキドキ感、心臓が本当に飛び出るかんじゃないかと思った。

「なーんてねっ!ウソだよっ」

「お誕生日おめでとう、大好きだよ。おにいちゃん」

再度唇がチュっと重なる。そして光はぎゅーっと僕を抱きしめてくれた。

「僕もだよ、光。大好きだよ…」


 (あ、頭がくらくらするっ!か、神様っ!?本気っすか!?)
 光は、えへへっと笑顔を見せると、ボール探しは明日にしようっと僕の腕を引いて家の中へと戻って行った。


.。.:*・゜+.。.:*・゜+.。.:*・゜+.。.:*・゜+.。.:*・゜+.。.:*・゜


幼い頃の妹の夢
最初の一歩は、それを叶えてあげたい。そんな想いからだった。

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