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3話
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(まあ、身分違いの恋なんて俺には無関係だわな)
酒場の二階は宿屋でもあり、そのまま朝まで寝過ごした俺は鏡を前にしてそう思っていた。
ピョンピョンとあっちこっちに跳ね、何故か白と黒が混じったタイガーカラーの髪。
黙って真顔でいる間はイケメンと呼ばれた青い瞳のついたキリッとした顔。
シラガや皺とか1本も見当たりませんね。当たり前だが。
「トラマル―、何してるのー?早く行くよ~」
おっといけない、シュタが呼んでいる。
そろそろ王都に行かないといけない時間だ。
「…今行く」
どうせ聞こえてないだろうが、小声で返事をして部屋を後にする。
先に起きていたアスリーとシュタは一階の酒場で待っていた。
王都に向かうための馬車は出発時間が決まっているため、朝食は適当にパンと水を流し込むように食べる。
「何回見ても思うけど、それちゃんと噛んでる?」
「大丈夫だろ。食い終わったんならさっさと行くぞ」
俺が頷いて無言で立ち上がると、2人はそれぞれの武器を片手に歩き出した。
シュタが弓、アスリーは両手剣だ。どちらも魔力を帯びている。
この異世界では当たり前のように魔力があり、当然だが魔法とやらも存在する。
ただ魔術師は数が少ないらしく、2人と違って普通の片手剣の俺は会った事すらない。
ぜひ会った時には俺の武器にもエンチャントして欲しい、炎属性とか雷属性がカッコいいと思う。
(カッコいいと言えば、俺らのパーティーって割と強くてイケてると思うんだよな)
アスリーはパーティーの中で一番の防御力がある鎧を身に纏い、敵の注意を引き付けるタンクの役割を果たしている。
大きな魔物にアスリーは正面からぶつかって一歩も引かないし、小型の魔物は両手剣で一気に薙ぎ払うストロングスタイルだ。
そしてアスリーが引き付けた敵を俺が颯爽と横から迎撃し、万が一逃げようとした敵も遠くから華麗にシュタが弓で片付ける。
(そういえば、シュタの弓は魔力射出型の武器だから矢がいらないんだったな…)
本人の魔力が無限という訳ではないし、いざとなったら必要だろうが。普段は嵩張らなくて便利でいい。
そんな考え事をしながら馬車に乗ったからか、視線に気づいたシュタが振り返った。
「どうしたの?僕の顔に何かついてる?」
別に何もない、と首を振るとアスリーが「そろそろ出発するぞ」と声をかけてきた。
それに返事をしたシュタが「よいしょ」と俺の隣に腰掛ける。
馬が嘶き、俺たちを乗せた馬車は王都への道をガタゴトと走り出した。
(…出会ってまだ半年くらいの俺たちだが―――)
舗装なんてされてない凸凹だらけの道を、荷物を載せた馬車が行く。
(―――滅多な敵に苦戦する事もないだろ。うん、いけるいける)
王都までの数時間、魔物に出くわす事もあるだろう。
馬車には王都の店に納める商品の数々が積まれている。
それらを護衛するのは今回、相乗りをさせてもらっている俺たちだ。
ギルドの依頼ではないが、お互い商売として信用を掲げている。失敗はまあ多分許されない。
(ま、俺たちに限って敗北とか…ないんですけどね!)
フラグを黒ひげ危機一髪のごとく、これでもかと刺して2時間後―――
―――そう思っていた時期が俺にもありました。
酒場の二階は宿屋でもあり、そのまま朝まで寝過ごした俺は鏡を前にしてそう思っていた。
ピョンピョンとあっちこっちに跳ね、何故か白と黒が混じったタイガーカラーの髪。
黙って真顔でいる間はイケメンと呼ばれた青い瞳のついたキリッとした顔。
シラガや皺とか1本も見当たりませんね。当たり前だが。
「トラマル―、何してるのー?早く行くよ~」
おっといけない、シュタが呼んでいる。
そろそろ王都に行かないといけない時間だ。
「…今行く」
どうせ聞こえてないだろうが、小声で返事をして部屋を後にする。
先に起きていたアスリーとシュタは一階の酒場で待っていた。
王都に向かうための馬車は出発時間が決まっているため、朝食は適当にパンと水を流し込むように食べる。
「何回見ても思うけど、それちゃんと噛んでる?」
「大丈夫だろ。食い終わったんならさっさと行くぞ」
俺が頷いて無言で立ち上がると、2人はそれぞれの武器を片手に歩き出した。
シュタが弓、アスリーは両手剣だ。どちらも魔力を帯びている。
この異世界では当たり前のように魔力があり、当然だが魔法とやらも存在する。
ただ魔術師は数が少ないらしく、2人と違って普通の片手剣の俺は会った事すらない。
ぜひ会った時には俺の武器にもエンチャントして欲しい、炎属性とか雷属性がカッコいいと思う。
(カッコいいと言えば、俺らのパーティーって割と強くてイケてると思うんだよな)
アスリーはパーティーの中で一番の防御力がある鎧を身に纏い、敵の注意を引き付けるタンクの役割を果たしている。
大きな魔物にアスリーは正面からぶつかって一歩も引かないし、小型の魔物は両手剣で一気に薙ぎ払うストロングスタイルだ。
そしてアスリーが引き付けた敵を俺が颯爽と横から迎撃し、万が一逃げようとした敵も遠くから華麗にシュタが弓で片付ける。
(そういえば、シュタの弓は魔力射出型の武器だから矢がいらないんだったな…)
本人の魔力が無限という訳ではないし、いざとなったら必要だろうが。普段は嵩張らなくて便利でいい。
そんな考え事をしながら馬車に乗ったからか、視線に気づいたシュタが振り返った。
「どうしたの?僕の顔に何かついてる?」
別に何もない、と首を振るとアスリーが「そろそろ出発するぞ」と声をかけてきた。
それに返事をしたシュタが「よいしょ」と俺の隣に腰掛ける。
馬が嘶き、俺たちを乗せた馬車は王都への道をガタゴトと走り出した。
(…出会ってまだ半年くらいの俺たちだが―――)
舗装なんてされてない凸凹だらけの道を、荷物を載せた馬車が行く。
(―――滅多な敵に苦戦する事もないだろ。うん、いけるいける)
王都までの数時間、魔物に出くわす事もあるだろう。
馬車には王都の店に納める商品の数々が積まれている。
それらを護衛するのは今回、相乗りをさせてもらっている俺たちだ。
ギルドの依頼ではないが、お互い商売として信用を掲げている。失敗はまあ多分許されない。
(ま、俺たちに限って敗北とか…ないんですけどね!)
フラグを黒ひげ危機一髪のごとく、これでもかと刺して2時間後―――
―――そう思っていた時期が俺にもありました。
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