46 / 100
三人目の元婚約者は、隣国の王弟殿下
第46話
しおりを挟む
「わたくしもですわ。この度はわたくしをこちらに置いてくださり感謝しています」
「皇女殿下をお守りする……いや、孫の婚約者を守るのは当然のことですよ」
クリスティーナとシキの祖父母であるモガミとカエデが会うのは、実は初めてではない。
初めて出会った場所は、この国ドルレアンの王宮だ。
モガミは公爵家当主であり、この国の政治の中枢を担う人物の一人。そして公爵夫人であるカエデは、王太后の右腕と呼ばれるほどの人物である。
「ティナがドルレアンの王弟と婚約していたことを、すっかり忘れていました」
「ふふ。わたくしもこの国に来るまですっかり忘れていたわ。三人目の婚約者だったかしら」
クリスティーナは当時のことを思いだし、苦笑した。
この時ももう婚約することはないと思っていたが、今では七人目の婚約者を迎えている。
クリスティーナはモガミにすすめられて、応接室のソファに腰かけた。その隣に当然のようにシキも座った。
「この国から殿下が去られたことは残念でなりませんでしたよ。この国の膿を出してくださった、殿下のような気骨のある人物は少ないですからな」
「何をしたんですか、ティナ」
にこにこと笑みを向けるモガミとは対照的に、シキから胡乱気な視線を向けられたが、クリスティーナは嫣然と微笑んで見せる。
「あら。わたくしはただ王弟が外交の職務の裏で、海外の多くの令嬢をたぶらかしていたことを、みなさんに教えて差し上げただけよ」
「それだけじゃないでしょう?」
「そうね。外交ルートとは別ルートで勝手に交渉して、私腹を肥やしていたことも暴いたかしら」
「それはそれはすばらしい婚約破棄劇でしたな。王弟殿下の振る舞いは目に余っておりましたから。プライドも高い方でしたから、鼻をへし折るにはちょうどよかったですよ」
「おかげさまで、悪女と呼ばれるようになったけれど」
六人目の婚約者からも言われた悪女という評判は、このドルレアンから始まった。
三人目の婚約者であった王弟ナガト・ドルレアンは、端正な顔立ちで貴族令嬢に人気があった。
婚約破棄をされた王弟は、令嬢たちの噂好きを利用して、一方的にひどく振った悪女だとクリスティーナにレッテルを貼ったのだ。
はあ、と深くため息をついたシキは手を伸ばし、クリスティーナの頭をぽんぽんと撫ぜた。
「無茶をしないでください。それに悪女と噂を流されるなんて……」
「悪女である前に、わたくしは血を恐れない軍人よ。悪女ごとき、何を恐れることがあるのかしら?」
「さすが殿下でいらっしゃる。軍人としてもすばらしい方だと私は思っております。この国も何度か第三師団に助けてもらっていますからな」
「ふふ、お上手ね」
「……お爺様、ティナをそんなに褒めちぎって、何かあるのですか?」
シキがモガミをひたと見据えた。
モガミはにこにこと笑っていたが、その笑みを深くした。
「いい勘をしておるな、シキ。殿下宛にこれが届いておりますよ」
すっとクリスティーナの目の前に差し出されたのは、高位貴族からと思われる手紙だった。
「皇女殿下をお守りする……いや、孫の婚約者を守るのは当然のことですよ」
クリスティーナとシキの祖父母であるモガミとカエデが会うのは、実は初めてではない。
初めて出会った場所は、この国ドルレアンの王宮だ。
モガミは公爵家当主であり、この国の政治の中枢を担う人物の一人。そして公爵夫人であるカエデは、王太后の右腕と呼ばれるほどの人物である。
「ティナがドルレアンの王弟と婚約していたことを、すっかり忘れていました」
「ふふ。わたくしもこの国に来るまですっかり忘れていたわ。三人目の婚約者だったかしら」
クリスティーナは当時のことを思いだし、苦笑した。
この時ももう婚約することはないと思っていたが、今では七人目の婚約者を迎えている。
クリスティーナはモガミにすすめられて、応接室のソファに腰かけた。その隣に当然のようにシキも座った。
「この国から殿下が去られたことは残念でなりませんでしたよ。この国の膿を出してくださった、殿下のような気骨のある人物は少ないですからな」
「何をしたんですか、ティナ」
にこにこと笑みを向けるモガミとは対照的に、シキから胡乱気な視線を向けられたが、クリスティーナは嫣然と微笑んで見せる。
「あら。わたくしはただ王弟が外交の職務の裏で、海外の多くの令嬢をたぶらかしていたことを、みなさんに教えて差し上げただけよ」
「それだけじゃないでしょう?」
「そうね。外交ルートとは別ルートで勝手に交渉して、私腹を肥やしていたことも暴いたかしら」
「それはそれはすばらしい婚約破棄劇でしたな。王弟殿下の振る舞いは目に余っておりましたから。プライドも高い方でしたから、鼻をへし折るにはちょうどよかったですよ」
「おかげさまで、悪女と呼ばれるようになったけれど」
六人目の婚約者からも言われた悪女という評判は、このドルレアンから始まった。
三人目の婚約者であった王弟ナガト・ドルレアンは、端正な顔立ちで貴族令嬢に人気があった。
婚約破棄をされた王弟は、令嬢たちの噂好きを利用して、一方的にひどく振った悪女だとクリスティーナにレッテルを貼ったのだ。
はあ、と深くため息をついたシキは手を伸ばし、クリスティーナの頭をぽんぽんと撫ぜた。
「無茶をしないでください。それに悪女と噂を流されるなんて……」
「悪女である前に、わたくしは血を恐れない軍人よ。悪女ごとき、何を恐れることがあるのかしら?」
「さすが殿下でいらっしゃる。軍人としてもすばらしい方だと私は思っております。この国も何度か第三師団に助けてもらっていますからな」
「ふふ、お上手ね」
「……お爺様、ティナをそんなに褒めちぎって、何かあるのですか?」
シキがモガミをひたと見据えた。
モガミはにこにこと笑っていたが、その笑みを深くした。
「いい勘をしておるな、シキ。殿下宛にこれが届いておりますよ」
すっとクリスティーナの目の前に差し出されたのは、高位貴族からと思われる手紙だった。
0
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
働かないつもりでしたのに、気づけば全部うまくいっていました ――自由に生きる貴族夫人と溺愛旦那様』
鷹 綾
恋愛
前世では、仕事に追われるだけの人生を送り、恋も自由も知らないまま終わった私。
だからこそ転生後に誓った――
「今度こそ、働かずに優雅に生きる!」 と。
気づけば貴族夫人、しかも結婚相手は冷静沈着な名門貴族リチャード様。
「君は何もしなくていい。自由に過ごしてくれ」
――理想的すぎる条件に、これは勝ち確人生だと思ったのに。
なぜか気づけば、
・屋敷の管理を改善して使用人の待遇が激変
・夫の仕事を手伝ったら経理改革が大成功
・興味本位で教えた簿記と珠算が商業界に革命を起こす
・商人ギルドの顧問にまで祭り上げられる始末
「あれ? 私、働かない予定でしたよね???」
自分から出世街道を爆走するつもりはなかったはずなのに、
“やりたいことをやっていただけ”で、世界のほうが勝手に変わっていく。
一方、そんな彼女を静かに見守り続けていた夫・リチャードは、
実は昔から彼女を想い続けていた溺愛系旦那様で――。
「君が選ぶなら、私はずっとそばにいる」
働かないつもりだった貴族夫人が、
自由・仕事・愛情のすべてを“自分で選ぶ”人生に辿り着く物語。
これは、
何もしないはずだったのに、幸せだけは全部手に入れてしまった女性の物語。
裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。
夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。
辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。
側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。
※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる