7回目の婚約破棄を成し遂げたい悪女殿下は、天才公爵令息に溺愛されるとは思わない

結田龍

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第三師団の魔獣討伐

第40話

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 エドワードに告げたことをもう一度伝える。
 団員たちをちらりと見れば、ぎりっと奥歯を噛みしめているが、カヴァルリーをくるりと操り、戦空艇に向って走り出した。


「閣下、すみません!」

「クリス閣下、ご無事で!」

「必ず戻ってきてくださいよ!」

「わかっているわ。早く!」


 ギロリと睨んだワイバーンたちが翼を広げ、一斉にクリスティーナに向って猛進した。
 クリスティーナはすぐさま操縦桿を操作し、ワイバーンを振り切るようにカルヴァリーを加速する。


(そのままわたくしを追いかけなさい)


 降りしきる雨の中を縦横無尽に動き回り、長い尻尾や重い拳を振り上げるワイバーンたちの攻撃を避けていく。
 そして、避けながら視界の端に捉えたのは、戦闘部隊を引き上げて、順調に戦線を離脱する戦空艇だった。


(このままいけば、無事に撤退させ……、っ!?)


 瞬間、クリスティーナはぶわりと鳥肌が立った。殺気だ。


(下!?)


 すぐに殺気が飛んできた方向に視線を向ければ、召喚されたワイバーンが猛スピードで、こちらに突っ込んできていた。


(まずい! 避けきれない!!)

「ティナ!!」


 刹那、鞭のようにしなった魔力を帯びた三本の刀身が、電光石火の勢いで、側面から召喚されたワイバーンに深々と突き刺さる。


「ギャアアアアアアアッ!」


 召喚されたワイバーンが絶叫し、全身を痙攣させた。そのまま魔力の炎に焼かれ、塵となって消滅した。
 息を飲んだクリスティーナの視線の先には、魔刀アシュラを構えたシキがいた。
 さらにシキは、八の字を描くようにすばやく刀を動かす。再び刀身が三本に増えてビュンッと鞭のようにしなり、今度は後ろに控えていた三体の巨大化したワイバーンに襲い掛かかった。


「ギャアッ、ギャアッ!!」


 ワイバーンたちが痛みに声を上げる。三本の刀身が次々にワイバーンを斬りつけた。
 致命傷には至らないが、魔刀アシュラを嫌がったワイバーンたちは、バサリと翼を羽ばたかせてゆっくりと旋回すると、大きく後退した。


「シキ!」


 眉根を寄せたクリスティーナはワイバーンと距離を取りつつ、シキのもとへカルヴァリーを寄せた。


「ティナ、大丈夫でしたか?」

「あなた、撤退を命じたはずよ!」


 シキに助けてもらったのはありがたいが、上官の命令に従わないのはいただけない。
 クリスティーナが食って掛かれば、シキは秀麗な顔を顰めた。


「婚約者を置いて逃げる男が、どこにいるんですか」

「婚約者の前に、わたくしは上官よ!」

「私は副官の前に婚約者です。助けるに決まっているでしょう」

「でも!」

「ほら、ワイバーンが来ますよ!」


 クリスティーナは唇を噛みつつ、再び翼を羽ばたかせて接近してくる三体のワイバーンを睨みつけた。
 それに反応してか、威嚇するようにワイバーンがギャアッ、と咆哮を上げ迫ってくる。
 クリスティーナとシキは一瞬視線を交わし、同時に左右に分かれてカルヴァリーを加速した。


(わたくしについてきたのは、ワイバーン一体ね)


 巨体を揺らし飛行するワイバーンが、クリスティーナの背中を追ってくる。ちらりと後ろを確認したクリスティーナは、さらに速度を加速した。
 シキが戦闘に加わっているとはいえ、この状態の三体と同時に戦うのは分が悪いなんて、初めからわかっている。今は戦空艇が撤退できればいい。その時間を稼ぎたい。


(早く離脱ラインを越えさせないと……)


 クリスティーナはハッと息を吐いて、右手のハルバードを握りしめ、構えた。
 すぐさまカルヴァリーを操作し、くるりと方向を転換した。すると、なぜかワイバーンもくるりと方向を転換した。


「え?」





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