9 / 100
天才公爵令息は、7番目の婚約者⁉
第9話
しおりを挟む
「は? マジで言ってんの、七回目の婚約なんて!?」
クリスティーナの隣にいたエドワードが、口をあんぐりと開けた。普段は爽やかな男なのに、その表情は少し滑稽だ。
透き通るような深みのある青い空の下、帝都郊外にあるヴィクトール帝国軍司令本部の戦空艇団訓練場にて、クリスティーナは第三師団の訓練を行っていた。
「エドワード、職務中なのに感情が表に出過ぎよ。ここが戦場なら敵に思惑を気取られるわよ」
「無茶を言うなよ、クリス閣下。これが驚かずにはいられるか。それにここは戦場じゃねーし、訓練中だから」
「その気の緩みを訓練中でも持ち込まないように」
「持ち込ませたのは、誰なんだよ……」
げんなりした副官に対して、肩をすくめたクリスティーナは、空へと視線を向けた。
澄んだ青空を背にして、堂々たる存在を見せつける空飛ぶ戦艦・戦空艇。プロペラを勢いよく回転させて、その巨体は浮かんでいる。
クリスティーナは耳のイヤーカフを触り、通信機を起動させた。
ジジー、ピッと通信回線のノイズの後に軽やかな音が鳴り、交信を開始する。
「こちら、クリス。戦空艇訓練は順調よ」
『こちら、マルス。んじゃあ、そろそろ終了ってとこか』
「こちら、エドワード。聞いてくれ、みんな! クリス閣下が七回目の婚約をしたんだってよ!」
『はあ!? あたしの超推しのクリス閣下が、また婚約させられらたの!?』
『うるさい、モニカ。俺の耳元でしゃべんな!』
戦空艇内で訓練中の団員に通信を入れれば、エドワードの暴露で大騒ぎになってしまった。
だからといって、にぎやかに大騒ぎするのは第三師団では日常茶飯事なのだが。
『閣下、戦空艇に上がって来いよ。その面白い話を聞かせろ』
「面白いって、マルスあなたね……まあ、いいわ」
軽く息を吐くと、クリスティーナは近くに待機させていた、小型迎撃艇カヴァルリーに跨った。エドワードもそれに続く。
操縦桿を操作すると、ブーンと低い羽音のようなモーター音が断続的に鳴り始めた。
カヴァルリーがふわりと浮き、空に向かって走り出す。
バラバラバラ……と、勢いよく回転するプロペラ音が、近づくほどに大きくなった。
二機のカヴァルリーはぐんぐんスピードを上げて、あっという間に戦空艇の甲板に着艦した。
ひらりとクリスティーナが降りると、ざっと爽やかな風が吹き、彼女の艶やかな髪が光を含んでキラキラと靡いた。
「クリス閣下、クリス閣下―!」
戦空艇内に入室したとたん、うわーんと声を上げて、肩までの髪を振り乱して駆け寄ってくる女性がいた。クリスティーナと同じ紅の軍服を着た、数少ない女性団員のモニカだ。
「どういうことですか、また婚約したって!? 七回目ですよ、七回目」
「どうもこうもないわよ、モニカ。勝手に皇太子殿下がお決めになられたのよ」
「あたしの崇め奉りたい孤高のアイドル・クリス閣下が、また人のものになるなんて! 今度はどこの国の王子様ですか!?」
「今度の相手は、本国の貴族ですって」
「本国ぅ!?」
クリスティーナの隣にいたエドワードが、口をあんぐりと開けた。普段は爽やかな男なのに、その表情は少し滑稽だ。
透き通るような深みのある青い空の下、帝都郊外にあるヴィクトール帝国軍司令本部の戦空艇団訓練場にて、クリスティーナは第三師団の訓練を行っていた。
「エドワード、職務中なのに感情が表に出過ぎよ。ここが戦場なら敵に思惑を気取られるわよ」
「無茶を言うなよ、クリス閣下。これが驚かずにはいられるか。それにここは戦場じゃねーし、訓練中だから」
「その気の緩みを訓練中でも持ち込まないように」
「持ち込ませたのは、誰なんだよ……」
げんなりした副官に対して、肩をすくめたクリスティーナは、空へと視線を向けた。
澄んだ青空を背にして、堂々たる存在を見せつける空飛ぶ戦艦・戦空艇。プロペラを勢いよく回転させて、その巨体は浮かんでいる。
クリスティーナは耳のイヤーカフを触り、通信機を起動させた。
ジジー、ピッと通信回線のノイズの後に軽やかな音が鳴り、交信を開始する。
「こちら、クリス。戦空艇訓練は順調よ」
『こちら、マルス。んじゃあ、そろそろ終了ってとこか』
「こちら、エドワード。聞いてくれ、みんな! クリス閣下が七回目の婚約をしたんだってよ!」
『はあ!? あたしの超推しのクリス閣下が、また婚約させられらたの!?』
『うるさい、モニカ。俺の耳元でしゃべんな!』
戦空艇内で訓練中の団員に通信を入れれば、エドワードの暴露で大騒ぎになってしまった。
だからといって、にぎやかに大騒ぎするのは第三師団では日常茶飯事なのだが。
『閣下、戦空艇に上がって来いよ。その面白い話を聞かせろ』
「面白いって、マルスあなたね……まあ、いいわ」
軽く息を吐くと、クリスティーナは近くに待機させていた、小型迎撃艇カヴァルリーに跨った。エドワードもそれに続く。
操縦桿を操作すると、ブーンと低い羽音のようなモーター音が断続的に鳴り始めた。
カヴァルリーがふわりと浮き、空に向かって走り出す。
バラバラバラ……と、勢いよく回転するプロペラ音が、近づくほどに大きくなった。
二機のカヴァルリーはぐんぐんスピードを上げて、あっという間に戦空艇の甲板に着艦した。
ひらりとクリスティーナが降りると、ざっと爽やかな風が吹き、彼女の艶やかな髪が光を含んでキラキラと靡いた。
「クリス閣下、クリス閣下―!」
戦空艇内に入室したとたん、うわーんと声を上げて、肩までの髪を振り乱して駆け寄ってくる女性がいた。クリスティーナと同じ紅の軍服を着た、数少ない女性団員のモニカだ。
「どういうことですか、また婚約したって!? 七回目ですよ、七回目」
「どうもこうもないわよ、モニカ。勝手に皇太子殿下がお決めになられたのよ」
「あたしの崇め奉りたい孤高のアイドル・クリス閣下が、また人のものになるなんて! 今度はどこの国の王子様ですか!?」
「今度の相手は、本国の貴族ですって」
「本国ぅ!?」
0
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
働かないつもりでしたのに、気づけば全部うまくいっていました ――自由に生きる貴族夫人と溺愛旦那様』
鷹 綾
恋愛
前世では、仕事に追われるだけの人生を送り、恋も自由も知らないまま終わった私。
だからこそ転生後に誓った――
「今度こそ、働かずに優雅に生きる!」 と。
気づけば貴族夫人、しかも結婚相手は冷静沈着な名門貴族リチャード様。
「君は何もしなくていい。自由に過ごしてくれ」
――理想的すぎる条件に、これは勝ち確人生だと思ったのに。
なぜか気づけば、
・屋敷の管理を改善して使用人の待遇が激変
・夫の仕事を手伝ったら経理改革が大成功
・興味本位で教えた簿記と珠算が商業界に革命を起こす
・商人ギルドの顧問にまで祭り上げられる始末
「あれ? 私、働かない予定でしたよね???」
自分から出世街道を爆走するつもりはなかったはずなのに、
“やりたいことをやっていただけ”で、世界のほうが勝手に変わっていく。
一方、そんな彼女を静かに見守り続けていた夫・リチャードは、
実は昔から彼女を想い続けていた溺愛系旦那様で――。
「君が選ぶなら、私はずっとそばにいる」
働かないつもりだった貴族夫人が、
自由・仕事・愛情のすべてを“自分で選ぶ”人生に辿り着く物語。
これは、
何もしないはずだったのに、幸せだけは全部手に入れてしまった女性の物語。
裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。
夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。
辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。
側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。
※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる