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第21話 夜の町
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今日は隣国に面した国境沿いの警備と、町の女たちの不平不満を解消するべく、大臣とフォクシーの三人で会議を開いた。
本来は脳史たちの意見も聞きたいところなのだが、魔族と同席などしたくないの一点張り。わからず屋の頑固者に構っている暇も余裕もないので、三人で行うこととした。
我が国は大陸の端――西側に面しており、北側にはアルスタルメシア国、東にはエルビン国、さらに南にはユーゲニウム国が位置している。
ベンデュラム国は西の最果てということもあり、西側が海に面していることが唯一の救いなのだが、それでも三ヵ国に囲まれている状況である。
仮にこの三ヵ国が手を取り合い一気に攻めてきたとなれば……さすがに一万のフォクシー軍と、六千のペンデュラム兵だけでは到底太刀打ちできない。
まぁ仲があまりよろしくない三ヵ国が手を取り合うことはないと思われるが。
しかし、借金の形に我が国の領土を狙っている各国が、いずれ我先にと乗り込んで来ることなど容易に想像がつく。
だからといい、フィーネにさらなる増軍の要請は通らないとフォクシーは言う。
「やはりダメですか……」
重苦しい溜息を吐き出す大臣の表情が曇っていく。
「半年ほど前から帝国より北の地にて、一部の魔王軍が帝国軍と交戦状態にあるのじゃ。拮抗する両軍の力はほぼ互角。じゃが、そこに勇者が加われば……」
「均衡は崩れるということか」
「その通りじゃ、お前さまよ。魔王さまはそこに軍の増援を送るかどうかの采配に頭を悩まされておられる」
下手に増援を送ってしまえば、いつやって来るかもわからない勇者に壊滅させられる危険性がある。
だが、このまま何も手を打たなければ、北地で戦っている部下を見殺しにしてしまうこととなる。
う~ん、確かに難しい問題だな。
そんな中、まだ何もことが起こっていない我が国へさらなる増軍など検討する余地もないということか。
ある意味納得だな。
「とりあえずいまは各国境沿いに兵力を分散させ、警備強化に当たるしかあるますまい」
「残念ながらそのようだな」
「それはそうとお前さまよ、女たちの欲求不満はどう解消するのじゃ?」
「ああ、それなら王都に残っている魔族兵を少し貸してくれれば問題ないよ」
「それは構わぬが、何をする気じゃ?」
「簡単な話だよ。女たちの欲求不満を解消させるために、魔族の色男たちが酌をしてくれるエロティックなお店をオープンさせる。そこで疑似恋愛に身を投じれば、欲求不満なんて一発解消さ!」
しかも、女たちが落とした大金はそのまま俺のお小遣いになるという仕組みだ。
最近は心を入れ替えた大臣の財布の紐が堅くて困り果てていた。
そこへ来てのビッグチャンス!
ムフフ……稼ぎまくるぞ~!
「ようこそお出でくださいました、マダム」
「あら、今日は一段とハンサムね」
「それはきっとマダムがくださった、このダイヤを散りばめた首輪のお陰だと思われますよ」
「オホホホ――平民とは違い。わたくしは男爵家のマダァ~~~ムですことよ。当然のことですわ」
手始めに王都にオープンさせた『ウルフボーイ』と名付けられたこの店は、オープンして以来大繁盛。
近頃では平民だけでなく、あのような豚似の貴婦人も堂々とやって来ては大金を落としていく。
いわゆる太い客というやつだ。
しかもこのお店『ウルフボーイ』は、軍の仕事と銘打っているので、売り上げのすべてが俺のもの。
お気に入りのウルフボーイを店内No.1にするため、彼女たちは日夜激しい攻防を繰り広げている。
「ミラスタール十三世を頂こうかしら?」と、店内に響き渡る声で豚がしてやったりと口の端を吊りあげれば、負けじと骨婦人が「わたくしはミラチャン・コンティを頂けるかしら?」、と声を張りあげる。
両端のVIPシートに腰をおろす二人が睨み合う。火花が飛び散る度にチャリ~ン♪ チャリ~ン♪ と至福の音が聞こえてくる。
その度にバーカウンターに腰をかけた俺の頬がだらしなく崩れていく。
「ムフフ……バカばっかりだな」
すると、ご満悦する俺の元に物々しい足音が響いてくる。足音の主は理性を失った猿のような男二名。彼らは入店するや否や怒声を放った。
「お前っ、一体何をやっているんだ! 我が家の資産をこんな魔族なんぞに貢ぎおって。気は確かかっ!」
「なんだこの酒はっ! ミラチャン・コンティだと? こんな聞いたこともない酒が二百万ギルっ!? ふざけるなっっ!」
楽しい雰囲気に包まれていた店内が一変、二人の猿によって台無しにされる。
しかも、店内で夫婦喧嘩をおっぱじめる始末。
このままでは店の評判と利益に影響が出てしまう。
そこで、俺は二人の猿を宥めようと声をかけたのだが、怒りの矛先が俺へと向けられる。
「大体にして陛下っ! あなたのせいですぞ」
「このような聞いたこともない酒が二百万ギルとはどういうことです! これではぼったくりではありませんか。払いませんぞ!」
さぁ帰るぞと妻を連れ帰ろうとする二人に、俺は少し話がしたいと店先へ連れ出した。
「このようなことを王自らがお認めになられるとはどういうことです!」
「ちゃんと説明して頂けるのでしょうな!」
「うむ、ではついて参れ」
プンスカプンスカと激昂する二人を連れて、俺は別の店先で足を止める。
「なんですかな……ここは」
「一体なんなのです、陛下」
「まぁ、入ってみればわかる」
二人を連れて店の門をくぐると、
「ようこそいらっしゃいましたわ♡」
「新規のお客さま二名ね♪」
肌を露出したキャミソール姿のレネアとリリスが、ケモ耳娘たちを引き連れ一斉に黄色い声を響かせる。
透かさず二人の腕にしがみついたケモ耳娘たちが、ぷにゅぷにゅおっぱいを押し当てると、先ほどまでフンガッフンガッと鼻息の荒かった二匹の猿が鼻の下を伸ばし始める。
「男女問わず、息抜きは大事だと俺は常々考えていた。長きに渡る貧乏で、皆心身ともに疲れ果てておったからな。お前たちは息抜きしなくて平気か?」
にたーっと満面の笑みを張りつけて問いかけてやると、コホンと咳払いした二人のむっつりが白々しく言いやがる。
「た、確かに陛下の仰られることも一理あるな」
「ど、同感だな。夜の町が賑やかなのは栄えている証拠とも云いますしな」
「しかし、あの酒の値段は法外では?」
あと一押しと判断した俺は、二人の耳元で囁いてやった。
「レネアはFカップ。リリスはGカップ。アラクネとサキュバス……それにケモ耳娘とムフフな夜を過ごせるのは、世界広し探せどここだけだ! 気に入られればアフターサービスなんてのもあるかもな~♪ まっ、別に文句があるなら出禁にしてやっても」
「滅相もありませぬっ」
「文句などこれっぽっちもっ」
「うむ。では遠慮せず、沢山お喋りして沢山飲んで行くのだ」
こいつらが今日までに蓄えた財産をすべて吐き出させてやる。
お前たちが税を納めていなかった数年間、プールしてたことなどすべてまるっとさっくりお見通しだ!
その金をすべて力技で回収してやるまでのこと。
この国の金も女もすべて、この俺のものなのだからな!
本来は脳史たちの意見も聞きたいところなのだが、魔族と同席などしたくないの一点張り。わからず屋の頑固者に構っている暇も余裕もないので、三人で行うこととした。
我が国は大陸の端――西側に面しており、北側にはアルスタルメシア国、東にはエルビン国、さらに南にはユーゲニウム国が位置している。
ベンデュラム国は西の最果てということもあり、西側が海に面していることが唯一の救いなのだが、それでも三ヵ国に囲まれている状況である。
仮にこの三ヵ国が手を取り合い一気に攻めてきたとなれば……さすがに一万のフォクシー軍と、六千のペンデュラム兵だけでは到底太刀打ちできない。
まぁ仲があまりよろしくない三ヵ国が手を取り合うことはないと思われるが。
しかし、借金の形に我が国の領土を狙っている各国が、いずれ我先にと乗り込んで来ることなど容易に想像がつく。
だからといい、フィーネにさらなる増軍の要請は通らないとフォクシーは言う。
「やはりダメですか……」
重苦しい溜息を吐き出す大臣の表情が曇っていく。
「半年ほど前から帝国より北の地にて、一部の魔王軍が帝国軍と交戦状態にあるのじゃ。拮抗する両軍の力はほぼ互角。じゃが、そこに勇者が加われば……」
「均衡は崩れるということか」
「その通りじゃ、お前さまよ。魔王さまはそこに軍の増援を送るかどうかの采配に頭を悩まされておられる」
下手に増援を送ってしまえば、いつやって来るかもわからない勇者に壊滅させられる危険性がある。
だが、このまま何も手を打たなければ、北地で戦っている部下を見殺しにしてしまうこととなる。
う~ん、確かに難しい問題だな。
そんな中、まだ何もことが起こっていない我が国へさらなる増軍など検討する余地もないということか。
ある意味納得だな。
「とりあえずいまは各国境沿いに兵力を分散させ、警備強化に当たるしかあるますまい」
「残念ながらそのようだな」
「それはそうとお前さまよ、女たちの欲求不満はどう解消するのじゃ?」
「ああ、それなら王都に残っている魔族兵を少し貸してくれれば問題ないよ」
「それは構わぬが、何をする気じゃ?」
「簡単な話だよ。女たちの欲求不満を解消させるために、魔族の色男たちが酌をしてくれるエロティックなお店をオープンさせる。そこで疑似恋愛に身を投じれば、欲求不満なんて一発解消さ!」
しかも、女たちが落とした大金はそのまま俺のお小遣いになるという仕組みだ。
最近は心を入れ替えた大臣の財布の紐が堅くて困り果てていた。
そこへ来てのビッグチャンス!
ムフフ……稼ぎまくるぞ~!
「ようこそお出でくださいました、マダム」
「あら、今日は一段とハンサムね」
「それはきっとマダムがくださった、このダイヤを散りばめた首輪のお陰だと思われますよ」
「オホホホ――平民とは違い。わたくしは男爵家のマダァ~~~ムですことよ。当然のことですわ」
手始めに王都にオープンさせた『ウルフボーイ』と名付けられたこの店は、オープンして以来大繁盛。
近頃では平民だけでなく、あのような豚似の貴婦人も堂々とやって来ては大金を落としていく。
いわゆる太い客というやつだ。
しかもこのお店『ウルフボーイ』は、軍の仕事と銘打っているので、売り上げのすべてが俺のもの。
お気に入りのウルフボーイを店内No.1にするため、彼女たちは日夜激しい攻防を繰り広げている。
「ミラスタール十三世を頂こうかしら?」と、店内に響き渡る声で豚がしてやったりと口の端を吊りあげれば、負けじと骨婦人が「わたくしはミラチャン・コンティを頂けるかしら?」、と声を張りあげる。
両端のVIPシートに腰をおろす二人が睨み合う。火花が飛び散る度にチャリ~ン♪ チャリ~ン♪ と至福の音が聞こえてくる。
その度にバーカウンターに腰をかけた俺の頬がだらしなく崩れていく。
「ムフフ……バカばっかりだな」
すると、ご満悦する俺の元に物々しい足音が響いてくる。足音の主は理性を失った猿のような男二名。彼らは入店するや否や怒声を放った。
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しかも、店内で夫婦喧嘩をおっぱじめる始末。
このままでは店の評判と利益に影響が出てしまう。
そこで、俺は二人の猿を宥めようと声をかけたのだが、怒りの矛先が俺へと向けられる。
「大体にして陛下っ! あなたのせいですぞ」
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「ちゃんと説明して頂けるのでしょうな!」
「うむ、ではついて参れ」
プンスカプンスカと激昂する二人を連れて、俺は別の店先で足を止める。
「なんですかな……ここは」
「一体なんなのです、陛下」
「まぁ、入ってみればわかる」
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「ようこそいらっしゃいましたわ♡」
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肌を露出したキャミソール姿のレネアとリリスが、ケモ耳娘たちを引き連れ一斉に黄色い声を響かせる。
透かさず二人の腕にしがみついたケモ耳娘たちが、ぷにゅぷにゅおっぱいを押し当てると、先ほどまでフンガッフンガッと鼻息の荒かった二匹の猿が鼻の下を伸ばし始める。
「男女問わず、息抜きは大事だと俺は常々考えていた。長きに渡る貧乏で、皆心身ともに疲れ果てておったからな。お前たちは息抜きしなくて平気か?」
にたーっと満面の笑みを張りつけて問いかけてやると、コホンと咳払いした二人のむっつりが白々しく言いやがる。
「た、確かに陛下の仰られることも一理あるな」
「ど、同感だな。夜の町が賑やかなのは栄えている証拠とも云いますしな」
「しかし、あの酒の値段は法外では?」
あと一押しと判断した俺は、二人の耳元で囁いてやった。
「レネアはFカップ。リリスはGカップ。アラクネとサキュバス……それにケモ耳娘とムフフな夜を過ごせるのは、世界広し探せどここだけだ! 気に入られればアフターサービスなんてのもあるかもな~♪ まっ、別に文句があるなら出禁にしてやっても」
「滅相もありませぬっ」
「文句などこれっぽっちもっ」
「うむ。では遠慮せず、沢山お喋りして沢山飲んで行くのだ」
こいつらが今日までに蓄えた財産をすべて吐き出させてやる。
お前たちが税を納めていなかった数年間、プールしてたことなどすべてまるっとさっくりお見通しだ!
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