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第2話 本気なんですか?
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「本気……なんですか、ミラスタール殿下」
魔王城に赴くため、姿見の前で正装する俺に項垂れるように声を発する大臣。
当然の如く俺は「ああ」と返事を返し、侍女たちにおめかししてもらっている。
亡き母譲りのゴールデンブロンドとクリクリお目目のブルーアイズ。自分でいうのもなんだが眉目秀麗とは俺のための言葉なのではないだろうか。
ただそんな絵に描いたような完璧な俺にもコンプレックスはある。
如何せん身長が小さいということだ。
しかーし、まだ十四の俺は伸び盛り、これからグングン身長だって伸びること間違いなしだ。
なにより、こんなにプリティーかつキュートな俺がお友達になりたいと申し出た日には、魔王も嬉し涙を流すこと間違いなしの梨子ちゃんだ。
きっと魔族一の床上手なサキュバスたんと、魔族一のプルプルおっぱいの持ち主、スライム少女たんを紹介してくれるだろう。
今から楽しみで仕方がない。ムフフ。
「殿下……殺されても知りませんよ。相手は魔王なのですよ」
「俺は王子だぞ! 争いに行くのではなく、お友達になりに行くだけなのだから心配し過ぎだ」
お気に入りの衣装に袖を通し、ドレスアップした俺の心は弾んでいる。
颯爽と城内を闊歩する俺を珍妙な面持ちで見つめる文官や武官たちなど気にもしない。
そのまま三千の兵を引き連れ、魔法官が作り出した魔法門を通っていざ魔界へ。
「おおっ! 広大な土地だな。さすがは魔界といったところか。これなら作物も大量に収穫が可能だな」
「荒れ果てた土地ではございませんか」
「大臣は本当にバカだな~、魔王は魔族の王なのだぞ?」
「……それがなにか?」
「アルラウネにドライアド、魔族には様々な種族がおるのだ。彼女たちの手にかかれば荒れ果てた土地など一瞬で緑に染まってしまうことだろう」
当然俺だって何も考えていない訳じゃない。大臣が懸念するように我が国ペンデュラムが人類の天敵魔族と同盟を結んだとなれば、他国はもちろんのこと、帝国が黙っていないことは容易に想像がつく。
そうなれば戦争が避けられないことなのは当然ながら、もっとも危惧すべきは貿易問題だといっても過言ではない。
商会はおそらく我が国との貿易をストップしてしまい。その結果我が国は深刻な飢餓問題に直面してしまう。
では、借金まみれの我が国はどうすればいい? 残念ながら我が国には隣国のような金脈はない。かといって莫大な利益をもたらす資源を有するわけでもない。
そんなものがあるのなら、そもそも借金などしていない。
ないなら借金するしかないじゃないか。
しかし、借りたものを返すのは当然のことなのだが、返す宛がないのもまた事実。
他国が借金のかたに土地の譲渡を要求してくることも読めている。そうなれば我がペンデュラム国の民は、もはや奴隷同然の扱いを受けてしまうだろう。
最悪国がなくなっても致し方ないと思ってはいるが、王家の失態で民が苦しめられるのはさすがに……な。
そこで閃いたのが、豊かな土地と人員の確保。魔族ってのは争うことばかりに特化しており、魔界の管理体制が杜撰なのは有名な話し。
だからWINWINな関係になりましょうと提案する。
俺が魔界の土地を豊かにする知識を与える代わりに、魔族は我が国を守る兵を貸し与える。
こうすることにより、我が国と魔界との間に一大貿易を築き上げようというわけだ。
なにも人間とだけ仲良く商売をする必要はない。もっとも恐れる真の敵は魔族でも魔王でもなく、人間の業なのだから。
この作戦が吉と出るか凶と出るかは、正直出たとこ勝負なのでさっぱりわからない。
しかし、このままだと我が国が滅びるのは時間の問題。ならば大きな賭けに出る必要があるのもまた然り。
まぁ、どの道死を待つだけの運命。
やれるだけのことはやってやるつもりだ。上手くいけばムフフなハッピーライフが待っているのもまた然りだしな。
「さぁ、全軍魔王城へ前進せよ!」
魔王城に赴くため、姿見の前で正装する俺に項垂れるように声を発する大臣。
当然の如く俺は「ああ」と返事を返し、侍女たちにおめかししてもらっている。
亡き母譲りのゴールデンブロンドとクリクリお目目のブルーアイズ。自分でいうのもなんだが眉目秀麗とは俺のための言葉なのではないだろうか。
ただそんな絵に描いたような完璧な俺にもコンプレックスはある。
如何せん身長が小さいということだ。
しかーし、まだ十四の俺は伸び盛り、これからグングン身長だって伸びること間違いなしだ。
なにより、こんなにプリティーかつキュートな俺がお友達になりたいと申し出た日には、魔王も嬉し涙を流すこと間違いなしの梨子ちゃんだ。
きっと魔族一の床上手なサキュバスたんと、魔族一のプルプルおっぱいの持ち主、スライム少女たんを紹介してくれるだろう。
今から楽しみで仕方がない。ムフフ。
「殿下……殺されても知りませんよ。相手は魔王なのですよ」
「俺は王子だぞ! 争いに行くのではなく、お友達になりに行くだけなのだから心配し過ぎだ」
お気に入りの衣装に袖を通し、ドレスアップした俺の心は弾んでいる。
颯爽と城内を闊歩する俺を珍妙な面持ちで見つめる文官や武官たちなど気にもしない。
そのまま三千の兵を引き連れ、魔法官が作り出した魔法門を通っていざ魔界へ。
「おおっ! 広大な土地だな。さすがは魔界といったところか。これなら作物も大量に収穫が可能だな」
「荒れ果てた土地ではございませんか」
「大臣は本当にバカだな~、魔王は魔族の王なのだぞ?」
「……それがなにか?」
「アルラウネにドライアド、魔族には様々な種族がおるのだ。彼女たちの手にかかれば荒れ果てた土地など一瞬で緑に染まってしまうことだろう」
当然俺だって何も考えていない訳じゃない。大臣が懸念するように我が国ペンデュラムが人類の天敵魔族と同盟を結んだとなれば、他国はもちろんのこと、帝国が黙っていないことは容易に想像がつく。
そうなれば戦争が避けられないことなのは当然ながら、もっとも危惧すべきは貿易問題だといっても過言ではない。
商会はおそらく我が国との貿易をストップしてしまい。その結果我が国は深刻な飢餓問題に直面してしまう。
では、借金まみれの我が国はどうすればいい? 残念ながら我が国には隣国のような金脈はない。かといって莫大な利益をもたらす資源を有するわけでもない。
そんなものがあるのなら、そもそも借金などしていない。
ないなら借金するしかないじゃないか。
しかし、借りたものを返すのは当然のことなのだが、返す宛がないのもまた事実。
他国が借金のかたに土地の譲渡を要求してくることも読めている。そうなれば我がペンデュラム国の民は、もはや奴隷同然の扱いを受けてしまうだろう。
最悪国がなくなっても致し方ないと思ってはいるが、王家の失態で民が苦しめられるのはさすがに……な。
そこで閃いたのが、豊かな土地と人員の確保。魔族ってのは争うことばかりに特化しており、魔界の管理体制が杜撰なのは有名な話し。
だからWINWINな関係になりましょうと提案する。
俺が魔界の土地を豊かにする知識を与える代わりに、魔族は我が国を守る兵を貸し与える。
こうすることにより、我が国と魔界との間に一大貿易を築き上げようというわけだ。
なにも人間とだけ仲良く商売をする必要はない。もっとも恐れる真の敵は魔族でも魔王でもなく、人間の業なのだから。
この作戦が吉と出るか凶と出るかは、正直出たとこ勝負なのでさっぱりわからない。
しかし、このままだと我が国が滅びるのは時間の問題。ならば大きな賭けに出る必要があるのもまた然り。
まぁ、どの道死を待つだけの運命。
やれるだけのことはやってやるつもりだ。上手くいけばムフフなハッピーライフが待っているのもまた然りだしな。
「さぁ、全軍魔王城へ前進せよ!」
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