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23話 風林火山
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それがしは走ったでござる。
走って、走って森の中へと駆け込んだでござるよ。
大丈夫。
近くにはちゃんと真夜殿と最強のメイドさんフィーネア殿も居るでござる。
本当は事が終わるまでどこかに隠れておきたかったのでござったが。
そうもいかないのでござるよ。
このオーク大討伐が言い渡されたとき、それがし達にはある支給品が二つ渡されたのでござるが、それがカウンターと言われるアイテムと、追尾の輪と言うアイテムでござった。
カウンターと言われるアイテムは主にギルドの方々がオークや魔物を何匹討伐したか記録する為の物。
魔物の種類や討伐数に応じて報酬が支払われるとのこと。
しかし、王国兵にはもちろん。
どれだけ倒しても報酬は支払われないでござる。
ではなぜ、そんなものをそれがし達に装備させたのか。
答えは明白でござる。
それがし達兵士がちゃんと仕事をしているかを確認するためでござろう。
さらに、追尾の輪と言う腕輪も付けることが義務づけられているでござる。
これはそれがし達兵士が敵前逃亡をしないようにするための物。
つまり、それがし達は監視されているということでござる。
逃げ出せば罪に問われるということでござろう。
もはや奴隷と何ら変わらんでござるよ。
それがし達の退路は既に絶たれているのでござる。
生き残る為には戦うしかないのでござる。
こんなことになるくらいなら、それがしもユーリ殿のように兵になんて選ばれない方が良かったでござる。
とんだ貧乏くじを引いてしまったでござるよ。
強いのも考えものでござる。
「明智っ! 剣を抜きなさい! 来ますよ!」
「イヤァアアアアアアアアアッ!! 助けて遊理くんっ!」
それがし達の正面からは雪崩のように次から次へと化物の大群が押し寄せ、それはまるで大地震を思わせるような地響きと激しい揺れを引き連れて迫り来るのでござった。
それがしは生きるため、ユーリ殿との約束を守るために剣を取った。
大丈夫。
それがしはこの三ヶ月間、ケンタウロス師匠やオーガ三人衆の方々に鍛えられたでござる。
戦い方も剣の扱い方も知らなかった今までのそれがしとは違うでござるよ。
正面から突撃を仕掛けてくるオークに、それがしは剣先を放った。
オークの体躯に刃がスっと入り込むと、まるで豆腐を切るように簡単に刀身が化物を通り抜ける。
同時に生暖かい体液がそれがしの顔や体にびちゃびちゃと飛び散ってくる。
「やっ、やったでござるよ!」
これまで敵うはずないと思っていたオークを簡単に切り伏せることができたでござる。
……そうでござるよ。
それがしのステータスは勇者には遠く及ばずとも、この世界ではトップクラスのステータス!
対するオークは雑魚でござる!
それがしが臆することなどないのでござるよ。
「やってやろうではござらんかっ! それがしは明智光秀! 戦国武将の名を持つ最強の侍でござる!」
それがしは斬って斬って斬りまくったでござるよ。
なに、こんな雑魚はケンタウロス師匠に比べれば屁でもござらん!
それがしは何かに取り付かれたように夢中で斬った。
途中、何度かフィーネア殿に助けていもらいながら、手を休めることはなかった。
真夜殿もユーリ殿から授かった摩訶不思議な玉で応戦していたでござるよ。
それがしがユーリ殿から受け取った玉を真夜殿に渡すと、慣れた様子でそれを投げていたでござる。
しかし、どれほどステータスが優れたそれがしにも、体力の限界は訪れる。
徐々に柄を握る手に力が入らなくなってきた。
おまけに返り血で柄を持つ手がヌルヌルと滑るでござるよ。
そんな疲れきったそれがし達の前に、そいつは現れたでござる。
オークより遥かに巨大な身体、手には巨大な棍棒を握り締める化物。
「なっ、なんでござるか!? こいつは?」
「落ち着きなさい。こいつはトロールです」
「トロール!?」
「あっ、明智っ! 早く倒しなさいよ!」
既に玉切れになった真夜殿が一歩二歩と後退している。
フィーネア殿も先程から魔法を使用していないところを見ると、どうやらもう使用できないのでござろう。
素手でもフィーネア殿は確かに強い、強いのだが……それは飽くまで技術で補っているに過ぎない。
フィーネア殿のステータスはそれがしや真夜殿よりも明らかに下でござる。
さらに体力も限界のはず。
しかし、それはそれがしとて同じ。
トロールがどの程度の強さかわからぬ以上、下手に手が出せないでござる。
その時――
摺り足で後退していた真夜殿が蹴躓いて転んだ。
その隙を見逃しまいと、トロールが見た目に反した身のこなしで真夜殿の正面に移動して、棍棒を振り上げたでござる。
「イヤァアアアアアアアアアアアッ!」
それがしは咄嗟に目を伏せた。
だが、その耳をつんざく鈍い音は目を閉じても聞こえてきたでござる。
何度も何度も振り下ろされる棍棒が体に叩きつけられる音。
それがしが恐る恐る目を見開くと。
思いがけない光景が飛び込んで来た。
フィーネア殿が真夜殿に覆い被さる形で盾となり、トロールの棍棒を小さな背で受けているのでござる。
フィーネア殿は苦しそうに吐血し、それでも真夜殿から離れようとはしない。
真夜殿はそれを目の当たりに泣き叫んでいる。
「イヤァアアアアアアッ! フィーネアッ! フィーネアッ!! どうしてっ!!」
錯乱する真夜殿にフィーネア殿は血まみれで微笑んだ。
「おきに……なさらず……あなた方を守るように……ユーリに言われて、います。ぐっ……」
「フィーネアっ! 明智っ! 助けて明智っ!!」
真夜殿がそれがしに助けを求めて、手を伸ばしている。
だけど……それがしももう限界でござる。
握力がないでござるよ……。
「明智っ、明智っ、お願い助けてぇええええ! このままじゃフィーネアが……フィーネ……そんな……」
それがしは走った。
真夜殿たちとは逆方向へ。
だって無理でござろう?
もう戦えないでござる……。
それがしはよくやったでござるよ。
第一……トロールなんて聞いてないでござる。
仕方ない……。
仕方ないのに……なんでこんなにも涙が止まらないでござるかっ!
なんで……あの時のユーリ殿の言葉が頭の中に響いてくるでござるかっ!!
『――俺はもう誰も失いたくないんだよ』
それがしは……嘘つきでござる……。
『ユーリ殿は明日、心置き無く瓜生殿に付いているでござる。真夜殿は責任を持ってそれがしが守るでござるよ』
…………。
ユーリ殿……。
ユーリ殿はなんでいつも立ち向かえるのでござろうな?
それがしより……誰より弱いはずのユーリ殿が……どうして……?
それがしにもできるでござろうか?
ユーリ殿のように強くなれるでござろうか?
それがしに……勇気を分けて欲しいでござるよ。
ユーリ殿っ!!
それがしはギュッと目を瞑り奥歯を噛み締めて、覚悟を決めてゆっくりと立ち止まり振り返った。
もう柄を握ることさえ困難な手に力を込めて、握られた剣に目を向ける。
そうでござった。
それがしにはまだ秘策があるでござる。
ユーリ殿がくれた力があるでござるよ!
「剣術の書。心得編第一章――一騎当千の勇気! 発動でござる!」
《剣術の書 心得編 第一章 一騎当千の勇気を発動致します》
《効果 恐れを打ち消し、火事場の馬鹿力を発揮する》
「は……?」
それだけ……?
火事場の馬鹿力って……。
ユーリ殿……最悪でござる。
が、次の瞬間――
体中から熱い何かが湧き上がってくる感覚を覚えたでござる。
それは例えるなら、そうっ!
ヒーローになったような感覚でござった。
全身に力が漲ると同時に、それがしは湧き上がるアドレナリンを抑えられずに叫んだ。
「メタモルフォーゼ!」
暖かな光が体を包み込み、それがしを真の姿へと変えていく。
イケメンと化したそれがしは剣先を地面に突き刺し、声を張り上げた。
「待たれぇ! 妖怪めがっ! ここから先は拙者が相手でござる」
拙者の声に反応して、トロールはゆっくりとこちらに体を向けた。
拙者はヘアゴムで髪を一纏めに縛り、ちょんまげを作って笑みを浮かべる。
あまりのカッコよさに真夜殿は驚愕に目を見開いていたでござるよ。
拙者は再び剣を握り締め、剣先をトロールへと突きつけた。
「かかって来い! 拙者が斬って進ぜよう!」
トロールは巨体を揺らしながらニヤついた笑みを浮かべて、棍棒を振りかぶり駆けてきた。
だがっ、拙者は動かない。
「動かざるは山の如し」
拙者の間合いまでトロールを引きつける。
風を叩きつけながら拙者の目前で棍棒を振り抜くトロール
「疾きこと風の如く」
拙者は紙一重でそれを躱す。
「徐かなること林の如く」
透かさず剣を構える。
「侵掠すること火の如く」
鋭い眼光で眼前の敵を睨みつけ。
「知りがたきこと陰の如く」
トロールの背後へと影のように足を運ぶ。
「動くこと雷霆の如し」
そのまま一気に斬り伏せる!
「せやぁあああああああああああっ!!」
疲れきっていた体に気合と根性で力を込めて、敏捷ステータスをフル活用し、拙者は目にも止まらぬ速度で剣を振り抜く。
瞬間で8連撃叩き込むと、トロールの巨体は呆気なく地に落ちる。
「つまらぬな。この剣の錆びにすらならんわ」
拙者はゆっくりと意識を失ったフィーネア殿と真夜殿の元へ歩み寄り、声をかけた。
「助けるのが遅れてすまぬ」
「………………あんた……誰よ?」
「真夜殿に拙者の真の姿を見せるのは初めてでござったな。何を隠そう、これが真の明智光秀の姿でござる。惚れたか?」
「拙者って……キモイ」
ふんっ。
真夜殿は初めて目にする真のイケメンに照れておるのでござろう。
ま、無理もないでござるな。
「それよりフィーネアを手当しないと!」
「そうでござったな」
そよ風にちょんまげを靡かせ、拙者は空を見上げた。
ユーリ殿は無事でござろうか?
走って、走って森の中へと駆け込んだでござるよ。
大丈夫。
近くにはちゃんと真夜殿と最強のメイドさんフィーネア殿も居るでござる。
本当は事が終わるまでどこかに隠れておきたかったのでござったが。
そうもいかないのでござるよ。
このオーク大討伐が言い渡されたとき、それがし達にはある支給品が二つ渡されたのでござるが、それがカウンターと言われるアイテムと、追尾の輪と言うアイテムでござった。
カウンターと言われるアイテムは主にギルドの方々がオークや魔物を何匹討伐したか記録する為の物。
魔物の種類や討伐数に応じて報酬が支払われるとのこと。
しかし、王国兵にはもちろん。
どれだけ倒しても報酬は支払われないでござる。
ではなぜ、そんなものをそれがし達に装備させたのか。
答えは明白でござる。
それがし達兵士がちゃんと仕事をしているかを確認するためでござろう。
さらに、追尾の輪と言う腕輪も付けることが義務づけられているでござる。
これはそれがし達兵士が敵前逃亡をしないようにするための物。
つまり、それがし達は監視されているということでござる。
逃げ出せば罪に問われるということでござろう。
もはや奴隷と何ら変わらんでござるよ。
それがし達の退路は既に絶たれているのでござる。
生き残る為には戦うしかないのでござる。
こんなことになるくらいなら、それがしもユーリ殿のように兵になんて選ばれない方が良かったでござる。
とんだ貧乏くじを引いてしまったでござるよ。
強いのも考えものでござる。
「明智っ! 剣を抜きなさい! 来ますよ!」
「イヤァアアアアアアアアアッ!! 助けて遊理くんっ!」
それがし達の正面からは雪崩のように次から次へと化物の大群が押し寄せ、それはまるで大地震を思わせるような地響きと激しい揺れを引き連れて迫り来るのでござった。
それがしは生きるため、ユーリ殿との約束を守るために剣を取った。
大丈夫。
それがしはこの三ヶ月間、ケンタウロス師匠やオーガ三人衆の方々に鍛えられたでござる。
戦い方も剣の扱い方も知らなかった今までのそれがしとは違うでござるよ。
正面から突撃を仕掛けてくるオークに、それがしは剣先を放った。
オークの体躯に刃がスっと入り込むと、まるで豆腐を切るように簡単に刀身が化物を通り抜ける。
同時に生暖かい体液がそれがしの顔や体にびちゃびちゃと飛び散ってくる。
「やっ、やったでござるよ!」
これまで敵うはずないと思っていたオークを簡単に切り伏せることができたでござる。
……そうでござるよ。
それがしのステータスは勇者には遠く及ばずとも、この世界ではトップクラスのステータス!
対するオークは雑魚でござる!
それがしが臆することなどないのでござるよ。
「やってやろうではござらんかっ! それがしは明智光秀! 戦国武将の名を持つ最強の侍でござる!」
それがしは斬って斬って斬りまくったでござるよ。
なに、こんな雑魚はケンタウロス師匠に比べれば屁でもござらん!
それがしは何かに取り付かれたように夢中で斬った。
途中、何度かフィーネア殿に助けていもらいながら、手を休めることはなかった。
真夜殿もユーリ殿から授かった摩訶不思議な玉で応戦していたでござるよ。
それがしがユーリ殿から受け取った玉を真夜殿に渡すと、慣れた様子でそれを投げていたでござる。
しかし、どれほどステータスが優れたそれがしにも、体力の限界は訪れる。
徐々に柄を握る手に力が入らなくなってきた。
おまけに返り血で柄を持つ手がヌルヌルと滑るでござるよ。
そんな疲れきったそれがし達の前に、そいつは現れたでござる。
オークより遥かに巨大な身体、手には巨大な棍棒を握り締める化物。
「なっ、なんでござるか!? こいつは?」
「落ち着きなさい。こいつはトロールです」
「トロール!?」
「あっ、明智っ! 早く倒しなさいよ!」
既に玉切れになった真夜殿が一歩二歩と後退している。
フィーネア殿も先程から魔法を使用していないところを見ると、どうやらもう使用できないのでござろう。
素手でもフィーネア殿は確かに強い、強いのだが……それは飽くまで技術で補っているに過ぎない。
フィーネア殿のステータスはそれがしや真夜殿よりも明らかに下でござる。
さらに体力も限界のはず。
しかし、それはそれがしとて同じ。
トロールがどの程度の強さかわからぬ以上、下手に手が出せないでござる。
その時――
摺り足で後退していた真夜殿が蹴躓いて転んだ。
その隙を見逃しまいと、トロールが見た目に反した身のこなしで真夜殿の正面に移動して、棍棒を振り上げたでござる。
「イヤァアアアアアアアアアアアッ!」
それがしは咄嗟に目を伏せた。
だが、その耳をつんざく鈍い音は目を閉じても聞こえてきたでござる。
何度も何度も振り下ろされる棍棒が体に叩きつけられる音。
それがしが恐る恐る目を見開くと。
思いがけない光景が飛び込んで来た。
フィーネア殿が真夜殿に覆い被さる形で盾となり、トロールの棍棒を小さな背で受けているのでござる。
フィーネア殿は苦しそうに吐血し、それでも真夜殿から離れようとはしない。
真夜殿はそれを目の当たりに泣き叫んでいる。
「イヤァアアアアアアッ! フィーネアッ! フィーネアッ!! どうしてっ!!」
錯乱する真夜殿にフィーネア殿は血まみれで微笑んだ。
「おきに……なさらず……あなた方を守るように……ユーリに言われて、います。ぐっ……」
「フィーネアっ! 明智っ! 助けて明智っ!!」
真夜殿がそれがしに助けを求めて、手を伸ばしている。
だけど……それがしももう限界でござる。
握力がないでござるよ……。
「明智っ、明智っ、お願い助けてぇええええ! このままじゃフィーネアが……フィーネ……そんな……」
それがしは走った。
真夜殿たちとは逆方向へ。
だって無理でござろう?
もう戦えないでござる……。
それがしはよくやったでござるよ。
第一……トロールなんて聞いてないでござる。
仕方ない……。
仕方ないのに……なんでこんなにも涙が止まらないでござるかっ!
なんで……あの時のユーリ殿の言葉が頭の中に響いてくるでござるかっ!!
『――俺はもう誰も失いたくないんだよ』
それがしは……嘘つきでござる……。
『ユーリ殿は明日、心置き無く瓜生殿に付いているでござる。真夜殿は責任を持ってそれがしが守るでござるよ』
…………。
ユーリ殿……。
ユーリ殿はなんでいつも立ち向かえるのでござろうな?
それがしより……誰より弱いはずのユーリ殿が……どうして……?
それがしにもできるでござろうか?
ユーリ殿のように強くなれるでござろうか?
それがしに……勇気を分けて欲しいでござるよ。
ユーリ殿っ!!
それがしはギュッと目を瞑り奥歯を噛み締めて、覚悟を決めてゆっくりと立ち止まり振り返った。
もう柄を握ることさえ困難な手に力を込めて、握られた剣に目を向ける。
そうでござった。
それがしにはまだ秘策があるでござる。
ユーリ殿がくれた力があるでござるよ!
「剣術の書。心得編第一章――一騎当千の勇気! 発動でござる!」
《剣術の書 心得編 第一章 一騎当千の勇気を発動致します》
《効果 恐れを打ち消し、火事場の馬鹿力を発揮する》
「は……?」
それだけ……?
火事場の馬鹿力って……。
ユーリ殿……最悪でござる。
が、次の瞬間――
体中から熱い何かが湧き上がってくる感覚を覚えたでござる。
それは例えるなら、そうっ!
ヒーローになったような感覚でござった。
全身に力が漲ると同時に、それがしは湧き上がるアドレナリンを抑えられずに叫んだ。
「メタモルフォーゼ!」
暖かな光が体を包み込み、それがしを真の姿へと変えていく。
イケメンと化したそれがしは剣先を地面に突き刺し、声を張り上げた。
「待たれぇ! 妖怪めがっ! ここから先は拙者が相手でござる」
拙者の声に反応して、トロールはゆっくりとこちらに体を向けた。
拙者はヘアゴムで髪を一纏めに縛り、ちょんまげを作って笑みを浮かべる。
あまりのカッコよさに真夜殿は驚愕に目を見開いていたでござるよ。
拙者は再び剣を握り締め、剣先をトロールへと突きつけた。
「かかって来い! 拙者が斬って進ぜよう!」
トロールは巨体を揺らしながらニヤついた笑みを浮かべて、棍棒を振りかぶり駆けてきた。
だがっ、拙者は動かない。
「動かざるは山の如し」
拙者の間合いまでトロールを引きつける。
風を叩きつけながら拙者の目前で棍棒を振り抜くトロール
「疾きこと風の如く」
拙者は紙一重でそれを躱す。
「徐かなること林の如く」
透かさず剣を構える。
「侵掠すること火の如く」
鋭い眼光で眼前の敵を睨みつけ。
「知りがたきこと陰の如く」
トロールの背後へと影のように足を運ぶ。
「動くこと雷霆の如し」
そのまま一気に斬り伏せる!
「せやぁあああああああああああっ!!」
疲れきっていた体に気合と根性で力を込めて、敏捷ステータスをフル活用し、拙者は目にも止まらぬ速度で剣を振り抜く。
瞬間で8連撃叩き込むと、トロールの巨体は呆気なく地に落ちる。
「つまらぬな。この剣の錆びにすらならんわ」
拙者はゆっくりと意識を失ったフィーネア殿と真夜殿の元へ歩み寄り、声をかけた。
「助けるのが遅れてすまぬ」
「………………あんた……誰よ?」
「真夜殿に拙者の真の姿を見せるのは初めてでござったな。何を隠そう、これが真の明智光秀の姿でござる。惚れたか?」
「拙者って……キモイ」
ふんっ。
真夜殿は初めて目にする真のイケメンに照れておるのでござろう。
ま、無理もないでござるな。
「それよりフィーネアを手当しないと!」
「そうでござったな」
そよ風にちょんまげを靡かせ、拙者は空を見上げた。
ユーリ殿は無事でござろうか?
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